「文庫結び」 年齢制限があるというのは間違い

「あぷりのお茶会」へようこそ!

 

 

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雪輪菊縦模様小袖 江戸時代 17世紀
(写真/「女子美染色コレクション」

 

 

袋帯の「文庫結び」

「文庫結び」という帯結びをご存知ですか?
たとえ「文庫結び」という名前は知らなくても日本で暮らして
いる人ならば、絶対に見たことがあるはずの帯の結び方。
そのくらい有名で、普通にある帯の結び方のことです。

 

お正月や成人式などでも「袋帯」で文庫結びをしている人を見かけます。
この写真は「袋帯」で文庫結びをしたものです。

 

 

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「袋帯」の文庫結び
(写真/幸着物サロン」

 

 

「文庫結び」で検索しますと、たくさんヒットするものの
ネット上では、美しい文庫結びの写真はあまりないようですね。

 

 

 

「半幅帯」の文庫結び

次の写真は、同じ文庫結びを「半幅帯」で結んだもの。
夏の浴衣では変わり結びもあるますが、文庫結びも多いですね。

 

 

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「半幅帯」の文庫結び
(写真/「ぽちぽち着物歩き」)

 

 

ただし浴衣の場合、長い帯を自分で結ぶのではなく
すでに結ばれた形で売っている帯も多いようです。
そのような帯を「作り帯」といいます。

 

作り帯の場合は、この写真の文庫結びと少々違い、はねの数が多い
「リボン結び」をはじめ様々なヴァリエーションがあるよう。

 

ちなみに「半幅帯」というのは文字通り「袋帯」の半分の幅の帯。
だいたい15センチ幅といったところでしょうか。
両者の違いは幅の広さだけではなく材質、織り方等も異なっています。

 

「半幅帯」がゆかたのような普段着にするのに対して
「袋帯」は格の高い着物に使うものです。

 

 

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楽器に菊文字文様小袖 寛文年間
(写真/「矢代仁」

 

 

 

現在はお太鼓結び全盛

このように袋帯でも半幅帯でも、文庫結びができますが、現在では
文庫結びは比較的若い人が結ぶ帯結びと思っている人も多いのが現状。

 

ある程度の年になって文庫をしているのはおかしい、
と書いてあるものを読んだりもします。

 

それではどのような帯結びをしたらよいのかといえば
現代は「太鼓結び」が全盛(?)です。
太鼓結びは年齢に関係なく結ぶことのできる帯結びとされています。

 

 

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お太鼓結び
(写真/「朝日新聞」山本和生撮影)

 

 

 

お太鼓結びを考えたのは深川の芸者さん

このお太鼓結びは、江戸時代の末期に駒形橋ができた頃、
当時のファッションリーダーでもあった
深川の芸者さんが考案したといわれているものです。

 

それが一般的になったのは、諸説があるようですが
地代としては明治時代の後期になってからのこと。

 

太鼓結びが考案される前は、太鼓結びと似たような結び方は
あったものの、文庫結びをしている人も多かったそうです。

 

 

 

江戸時代にお太鼓結びはなかった 

江戸時代のTVドラマや映画などでご覧になるように、武家の女性は
未婚・既婚、また年齢も問わずに文庫結びをしていますよね。

 

 

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(写真/「女子美染色コレクション」

 

 

藤沢周平の小説が映画化された作品などには(残念ながら、私は見た
ことがありませんが)文庫結びの女性が多く登場するような気がします。

 

 

 

最初は細い紐のようなもの

それでは、それより前はどのような帯結びをしていたのでしょう。
江戸時代初期より前の結び方云々の以前に、その頃は帯自体が
幅も現在よりはるかに細く、紐のような形状のものでした。

 

ですから、細い紐のようなものを結んで形を作るといっても限りが
あるせいか、帯の結び方にはそれほど関心がなかったように思えます。
その例として、次の絵を見ていただきましょう。

 

 

fc2blog_20131124000132172      「松浦屏風」(写真/「日本経済新聞社」

 

 

奈良市大和文華館所蔵の国宝「婦女遊楽図屏風(松浦屏風)」です。
描かれている女性はみな一様に細い紐のような帯をしていますね。

 

この屏風は六曲一双で、全部で18人の姿を描いていますが上は右半分。
江戸時代前期の作とされており、当時の女性の装いを
描いているといわれています。

 

 

 

江戸時代1600年代から帯の幅が広くなる

その細い紐のようだった帯の幅が、だんだん
広くなってくるのが江戸時代の1600年代。

 

寛永年間(1624年〜1644年)頃にまず遊女の帯幅が広くなり、その後
延宝年間(1673年〜1681年)には一般の女性にも広まっていきました。

 

下の絵は切手の図案でもお馴染みの、菱川師宣の
「見返り美人」ですが、これは17世紀に描かれたものです。

 

 

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「見返り美人」菱川師宣
(写真/「東京国立博物館」

 

 

この絵の帯の部分をアップしたものが、次の写真。
「松浦図屏風」に描かれていた細い紐のような帯から
だんだんと幅広になって、このような「吉弥結び」をしています。

 

 

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上の「見返り美人」の帯の部分をアップしたもの
(写真/同上)

 

 

 

紐 → 帯へ 

ということで、帯についてを大雑把にいってしまいますと
細いひものような帯から、だんだん帯の幅が広くなってゆき
それに従って、様々な結び方が考案される

 

身分や趣味によって文庫結びや角だし、吉弥結びなどをしていたが
江戸の終わり近くなって、お太鼓結びが考案され
明治の末から爆発的に広まり、現在にいたる

 

ということになるのでしょうか。

 

 

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間違った情報

そのようなお太鼓結び全盛時代の現代にあって
「文庫結びは、いつのまにか若い人の帯結び」
という風潮があるのを、私はとても残念に思っていました。

 

そんなことをいつ、誰が、あるいは
どこの団体が決めたのでしょうか?

 

またネット上でも
「半幅帯の文庫結びは何歳まで許されるか?」
「既婚者のお洒落結びはお太鼓結びだけ?」
などという質問も飛び交っています。

 

 

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惑わされないように

しかし、それらの回答には
「文庫結びは別に若い人だけの結び方ではありません」
「既婚者が文庫結びをしたらおかしいというのは、
ものを知らない人ですよ。着付け教室が言っているだけです」

 

等の、何とも心強い言葉が並んでいたので嬉しくなりました。

 

それでは明日は、文庫結びについて、現在の一般的とされている
風潮とは異なった考えをお持ちの素敵な方を御紹介しましょうね。
お楽しみに!

 

 

文庫結びをしている節子さん
節子・クロソフスカ・ド・ローラ著
「ド・ローラ節子の和ごころのもてなし」新潮社

 

 

 

2016年7月3日追記

この記事に「文庫結び 何歳まで?」というような
キーワードで来て下さる方、ありがとうございます。
文庫結びと年齢の関して、少々つけ加えさせていただきます。

 

確かにここに書きましたように、文庫結びという帯の結び方
に年齢制限はありませんが「帯の色、材質」や「結び方」には
年齢に相応しいものと、そうでないものがあると思います。

 

もっともそれは文庫結びに限ったことではありませんが。
結び方以前の問題として、使う帯の色や材質が年齢に
あったものか否かを考えてみることも必要でしょう。

 

また、年齢に相応しい帯を使って文庫結びをする時にも
結び方のニュアンスとでもいいましょうか、はねを大きく
派手に作りすぎないなどの結び方の工夫は必要な気がします。

 

 

 

 

10代用のかわいい作り帯を、そのまま40代、50代の人が
身につけたとしたら、ちょっと違和感を感じるはず。
違和感とは、美しくは見えないということです。

 

着る方の個性や雰囲気もあるので一概に何歳以上はこれこれ
とはいえませんが、美しさの基準が自らの中にあることが
一番重要かもしれません。

 

私は袋帯では文庫結びをよく結びますが、
浴衣の場合は「貝の口」を結ぶことが多いです。
みなさんも素敵なお洒落を楽しんで下さいね!

 




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2 thoughts on “「文庫結び」 年齢制限があるというのは間違い

  1. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    毎回楽しみに拝読しています。
    文庫結びから、節子・クロソウスキー・ド・ローラ
    の記事に至るまでの
    洗練された画像の使い方に見惚れてしまいました。
    ますます磨きの掛かった文章は圧巻ですね。
    師走にかけてご多忙と存じますが、
    体調にご留意くださいね。

  2. SECRET: 0
    PASS: 8105a25cab4a68f2f52395ac60e712b9
    うたかた様
    こちらこそ、御無沙汰をしております。
    お優しいお言葉をいつもありがとうございます!
    うたかた様のように素敵なお着物はもちあわせず
    ブログで皆様に見て頂くことはできませんので
    せめてもと。
    私はこの時代の着物が大、大好きなのです。
    そういえば、藤の花の着物の時にもコメントを頂きました。
    その時にブログにのせた私の着物(着物着物した現代の)
    のようなものは,私自身はあまり好きではないと書きました。
    私は今日のブログの時代の着物が、本当に懐かしくて……。
    (勿論、現在残っている高級なものだからというわけではなく
     多分、その時代に庶民が着ていたであろう着物も)
    そういえば、東京ミッドタウンの「石垣」を書いた時も
    うたかた様にコメントをいただきました、ありがとうございます。
    現代的な東京ミッドタウンではありますが
    実は私にとって東京ミッドタウンは江戸の入口なのです。
    しかも、江戸の初期から中程までの。
    長くなって申しわけありません。
    こうしてみますと、うたかた様に私の拙いブログが
    支えられているということがよくわかります。
    お心遣い、ありがとうございます。
    どうか、うたかた様、うたかた様の最愛の方様も!

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