「月」 溜池山王駅(南北線)アート17 狂言師・山本則直

「あぷりのお茶会 赤坂・麻布・六本木」へようこそ!

 

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溜池山王駅アートは今日が最後 

溜池山王駅アートの御紹介も
今日が最後となってしまいました。

 

2012年の2月3日の節分「柊鰯(ひいらぎいわし)」
から始まって、今日の「月」まで約3年間で
全部で17のアートを御紹介しました。

 

1 「柊鰯(ひいらぎいわし)」
2 「桜」
3 「ひょうたん」
4 「波に千鳥」
5  「茄子(なす)」
6 「菜の花」
7 「稲穂」
8 「蟹(かに)」
9 「木賊(とくさ)」
10 「萩(はぎ)」
11 「海老」
12 「うさぎ」
13 「竹」
14 「鴛鴦(おしどり)」
15 「蜻蛉(とんぼ)」
16 「菊」
17 「月」

 

一番最初の「柊鰯(ひいらぎいわし)」も
狂言の肩衣の模様でしたね。
そもそも溜池山王駅アートは
狂言の肩衣が多かったのですが。

 

 

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これでもか、というほどの大きな月

今日の「月」は、溜池山王駅アート
の中で、私が一番好きなものです。

 

溜池山王駅で電車を待つ間、たいていは
この「月」の前でうっとりとしています。

 

私は溜池山王駅では、この「月」のあるホーム
とは反対側の電車に乗る場合が多いのですが。

 

 

 

 

くっきりと力強いインパクトのある月の輪郭。
そしてそれとは対照的に、秋の草と月との
境目のやさしさ、美しさ。

 

秋の野といえばすぐにススキが思い浮かびます
が、これは桔梗の花がたくさん見えますね。

 

『秋野に月文様肩衣』、京都の大蔵流、
茂山千作家の所蔵です。

 

 

141007tuki左の建物(赤坂Bizタワー)と
隣りのビルの間にうっすら月が見えます

 

 

 

狂言師は素敵な人が多い?

今日は溜池山王駅アートの最後という
こともあり、この素敵な装束を纏った舞台
を拝見したかったと思う、私が一番好きな
狂言師のお話をさせてくださいね。

 

そういえば、溜池山王駅アート9回目の
「木賊(とくさ」」の時には
お能の「木賊」にちょっとふれました。

 

何となくお能に花を譲って、狂言はちょっと
隠れ気味とお思いになる方もいらっしゃいます
が、狂言はとってもおもしろく魅力的なもの。

 

そしてなんといっても
狂言師って素敵な方が多いのです。

 

今日の肩衣を所蔵していらっしゃる
大蔵流の茂山家の方々も大好きです。

 

 

20141008kaikigesshoku0写真の右上の方にほんの少しだけ月が見えるのですが……。
左端に写っているビルが、先ほどの赤坂Bizタワー。
月食が終わり左上の部分から少し月が見えだした頃の月。

 

 

 

 山本家の三兄弟

そんな魅力的な方が多い狂言師ですが
私は中でも山本則直(のりただ)さん
の狂言に惹かれました。

 

山本則直さんは、大蔵流の狂言の
御一家、山本東次郎家の方です。

 

山本東次郎(とうじろう)さんが長男で
則直(のりただ)さんは二男で
本名は倫士(つねお)。
三男の方が則俊(のりとし)さんです。

 

 

02左が山本東次郎師、右の後ろ向きが山本則直師
(写真/「府中市民会館」)

 

 

 

この月の肩衣で山本則直さんの舞台を……

ここ十年近く、お能や狂言から少々遠ざかって
いて舞台もあまり見ることがありませんでした。

 

数年前、少々落ち着いたこともあり
出かけてみようと調べてみて驚きました。

 

「大蔵流本家の別会が
『山本則直一周忌追善』として……」

 

 

141008gesshoku1

 

 

という記事を見て一瞬、目を疑いました。
書いてあることの意味が理解できなかったのです。

 

山本則直さんは1年ほど前の
2010年に亡くなっていました。

 

 

 

山本則直さんの魅力

信じられない思いで検索をしている時に
山本則直さんの芸に触れた文章を見つけました。

 

 

 

 

「則直師の芸風は毅然として大きく、
その声は天下一と言われた。」
(「りんぷう会公式ブログ」)

 

「山本家の狂言の好みは寂寥感漂う
東次郎のものと、いつも怒っている
ような則直のと分かれられる。

 

僕は強いて答えれば東次郎のそれが
好きだが、則直のロボットのような
鋼の狂言が好きな人も多い。」

(「ぶの雑感」)

 

 

 

 

それらの文を読み、私が山本則直さん
の狂言に惹かれる理由が、少しだけ
わかったような気がしました。

 

決して大きい声という意味ではないのですが
突き抜けるような、そして強い意志を含んだ
ような響きのある声。

 

「ロボット」という言葉は誤解を招きそうな
言葉ではありますが、楷書体の芸とでも
いったらよいでしょうか。

 

 

imgres杉並能楽堂(写真/「神出鬼没日記」)

 

 

崩れない、軟弱でない……、などと
私が言うのは百年早いのですが。

 

「その声は天下一と言われた」はまさに実感。
言葉で表すことができないほどの
魅力を秘めた声でした。

 

 

 

杉並能楽堂でかいま見た山本則直さんのお姿

随分前のことなのですが、私は能楽
カメラマンの森田拾史郎(としろう)さんに
山本家の杉並能舞台に連れて行って
いただいたことがありました。

 

山本東次郎さんからお話を伺ったあと
ふと受付の脇に、柱を背に立っている
山本則直さんのお姿が目に入りました。

 

(実は私の記憶では、則直さんは
柱に寄りかかっていました。
ですがそれは、私が作り上げた記憶かもしれ
ないと思い、あえて「立っている」としました)

 

 

 

 

思わず則直さんのそばに駆け寄り、
「私、めちゃめちゃファンなんです!」

 

などということを言ってみたいのですが
生来、内気で無口なものですので(!)
もちろん何も言えずにそばにも行けず……。

 

その時の山本則直さんから受けた印象を
正直に申しますと、ちょっと拗ねて柱に
寄りかかっている小学生の男の子でした。

 

当時でも山本則直さんは50歳前後の立派な
狂言師であり、別に怒っていらしたわけ
でもないのはわかっているのですが。

 

 

141008gesshoku2

 

 

 

「怒り」

則直さんのお兄様の東次郎さんの
お書きになった本を読んだことがあります。

 

狂言の魅力を、理性的でありながらも
決して冷たすぎずに、東次郎さんの誠実な
お人柄が感じられる文章で綴ったものでした。

 

私はその本に感動して、思わず
友人に勧めてしまったほどです。

 

狂言のさまざまな魅力の一つに
反権力や世の中の不正、理不尽な
ことへの抗議や風刺があります。

 

そのようなものを私は、山本則直さんの
芸のなかに見いだしていたのでしょうか。

 

 

141008gesshoku3

 

 

 

皆既月食……再び現れる月

今日のブログにつけた月の写真は
10月8日の皆既月食の写真です。

 

日本全国で、ほぼ始まりから終わりまでを
見ることの出来る皆既月食は3年ぶりとか。

 

まだあたりが暗くなっていない、うっすら
としか月が見えない下の写真から(↓)、
皆既食が終わるまでは、残念ながら
見ることができませんでした。

 

 

 

 

写真をとることができたのは、夜8時過ぎに
月が、左の上の方から見え始めたところ
から部分食が終わるまでのもの。

 

部分食の終わりが9時35分頃でした。
最後のこの写真はそのあたりで撮ったものです。

 

 

141008geshhoku4部分食の終わり(9時35分頃)

 

 

山本則直さんには、泰太郎(やすたろう)さん
と則孝(のりたか)さんという御子息が
いらして現在、共に狂言師として
活躍していらっしゃいます。

 

そして泰太郎さんのお子さんの
凛太郎(りんたろう)さんをも
舞台で拝見できるのは嬉しい限りです。
ひさしぶりに狂言を見たくなりました。

 

この溜池山王駅アートの御紹介も最後に
なったこの「月」を、山本則直師に捧げます。

 




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