「つばき」と「さざんか」 「椿」赤坂「青野」

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赤坂「青野」の「椿」、2月バージョン

今日のお菓子は赤坂「青野」の「椿」。
赤坂「青野」は、1月と2月に「つばき」のお菓子がでますが
今日の写真は2月バージョンの「つばき」です。

 

1月と2月の「つばき」を作り分けるとは
なんとも繊細な美意識ですね。

 

そういえば桜も「つぼみ」「満開」「八重桜」と
作り分けていましたし、紅葉もそうでした。

 

こんなふうに美しいものに優しい眼差しを注ぎ
心を込めて細やかに作り出される和菓子は素敵ですね。

 

 

130101tubakiuka            白い「椿(つばき)」

 

 

 

椿の季語は冬

赤坂「青野」の「椿」が1月、2月のお菓子として紹介されて
いることからもおわかりのように「つばき」は春の季語。

 

本来は日本では季節は次のようになっています。

 

1月2月3月 4月5月6月 7月8月9月 10月11月12月
                

 

「椿」という字からして、木偏に旁(つくり)が春。
「椿」は日本で作られた国字です。

 

このような字の作り方は遊び心さえ感じられて、なぞなぞみたい。
この方法で国字ならぬ「私字」も創作できるかも。

 

 

 

中国で「椿」というと「山茶」のこと

「椿」という字は国字とされていますが
中国でも「椿」という文字はあるそう。

 

ですが中国で「椿」という字が示す植物は、今日御紹介の
「つばき」ではなく「山茶」を指すのだとか。

 

「山茶」といったら日本では「山茶花(さざんか)」のこと
ですので、なにやらこんがらがってしまいますね。

 

 

sazanka     「山茶花(さざんか)」(写真/「私の花図鑑」

 

 

 

「つばき」と「さざんか」

ここで「山茶花(さざんか)」が出てきましたが
「つばき」と「さざんか」の花はよく似ているといわれます。
両方とも、ツバキ科ツバキ属ですので似ていて当然ですが。

 

先ほど、木偏に春と書く「つばき」が春の季語
と申しましたが、一方「さざんか」の季語は冬。

 

種類によって時期が異なるものもあるそうですが大まかにいって
「さざんか」は10月〜12月が花の時期で
「つばき」は、12月〜4月に咲くということです。

 

 

140316higasinaha450         「椿(つばき)」と水仙の干菓子

 

 

 

落ちる「つばき」に散る「さざんか」

「つばき」と「さざんか」の違いはいくつもあるようですが
なんといってもわかりやすいのは「つばき」が落ちる時は
花びらが別々に散るのではなく、一つの花ごとポトッと落ちること。

 

江戸時代には「つばき」の花が落ちる様を、首が落ちる
斬首を連想して縁起が悪いなどともいいました。

 

そういえば前に松月」の餡に使うあずきの話もそうでしたね。
大粒のあずきの大納言は、煮た時に皮が破れるという「腹切れ」が
ないので、切腹のない公卿の官位である「大納言」と名づけられたと。

 

 

150717siratamazenzaishougetu     大納言が使われている「松月」の白玉ぜんざい

 

 

また、うなぎの蒲焼きも同様で、お腹を切らずに背開きに
するのも(関西では腹開きだそうですが)腹開きが切腹を
連想されるからに他なりません。

 

武士にとっては斬首、切腹ということは常に背中合わせ。
覚悟を秘めながら日々を生きていたのかもしれません。

 

花全体がぽとっと落ちる「つばき」とは違い
「さざんか」は、一ひらずつ花びらが散って行きます。

 

このように「つばき」は落ちて、「さざんか」や桜は散って行き
牡丹はくずれて梅はこぼれる、との言い換えも美しいですね。

 

 

blog_import_51536863b4556      白い椿「(つばき)」の花と虫食いの葉っぱ

 

 

 

花のかたちや開く様

その他の違いとしては花が咲いた時の横からのかたちは
「つばき」は次の写真のように「V」に近いですが
「さざんか」は「—」と、横に手を広げたように花が開きます。

 

 

130312tubaki 花のかたちが「V」字型の椿(つばき)」
(赤坂の本氷川坂に咲いていた薄紅色の「つばき」)

 

 

おしべの形状も異なり、「つばき」のおしべは筒状ですが
「さざんか」のそれは筒状ではなく、放射状(?)です。

 

次の写真はちょっと小さいのですが、「つばき」の
おしべが筒状になっているのが御覧になれるでしょうか?

 

 

140228tubaki   赤坂サカスの隣りのビルに咲いていた赤い「椿(つばき)」

 

 

赤坂「青野」の上生菓子の「つばき」も
おしべの形を正確に表現していますね。

 

 

121230tuba         「椿(つばき)」 赤坂「青野」

 

 

これら以外には、葉のふちがギザギザ(鋸葉)しているのが
「さざんか」で、ギザギザがなくつるっと直線になっている
のは「つばき」とよくいわれますが、そうでもないようです。

 

また、葉脈を太陽に透かしてみて白いと「つばき」、
黒ければ「さざんか」ともいわれますが、これも違うよう。

 

例えば、寒椿という名前からもわかるように、春ではなく
冬に咲く「つばき」は、先ほど挙げた「つばき」の特徴である
筒状のおしべもなく、花はV字に開かずに平に開きます。

 

こちらは今日の夕方、麻布で撮った「つばき」ですが
「V」ではなく、平たい「—」の形に咲いています。

 

 

160219akaitubaki      平たい形に咲いている「椿(つばき)」(麻布)

 

 

というようにいくつもの例外があるようですが
「つばき」と「さざんか」の違いはこのようにいわれています。

 

1 花の落ち方(「花ごと」と「花びら」)
2 花の形(「V」と「—」)
3 葉のふち(「ギザギザ」と「直線」)
4 葉を太陽に透かした時の葉脈の色の違い(「白」と「黒」)

 

私自身は「さざんか」の葉よりも「つばぎ」のほうが
大きくてツヤツヤしっかりとしている気もします。

 

 

 

「椿餅」

そんなツヤツヤのしっかりした「つばき」の葉っぱ
だからこそできるのが、和菓子の「椿餅」。

 

 

               「椿餅」

 

 

今考えてみましたら何年も、いえ十年以上も
頂いていませんが「椿餅」はおいしいですね。

 

白あずきの餡を道明寺粉のお餅で包み、それを二つの
「つばき」の葉っぱで挟んで白椿の花に見立てたお菓子。

 

道明寺粉がつぶつぶしていておいしくて。
私は道明寺粉が大好きなのですが、それはまた別の機会にでも。

 

 

140316higasihana          「つばき」と水仙の干菓子

 

 

 

ベルディの『椿姫』

このように「椿」という字からして国字である「つばき」は
本当に日本的な花、という印象を私はかつて持っていました。

 

ですが、ふっと海の向こうの国々を見回しますと
それがそうでもないのですよね。

 

ヴェルディのオベラに『椿姫』というものがありますし
ファッションで有名なココ・シャネルのブランド『シャネル』は

 

「つばき」の花・カメリカをモチーフにした
ブローチなどがたくさんありますものね。

 

 

350x211_ZM9V9102_02         赤坂プリンスクラシックハウス

 

 

 

ベルディ『椿姫』

ジョゼッペ・ヴェルディの有名なオペラ『椿姫』は
1848年にアレクサンドル・デュマ・フィス(小デュマ)が
書いた小説の『椿姫』を、1853年にオペラ化したものです。

 

ディマの小説の題名は『椿姫(La Dame aux camelias)』、
「椿の花の貴婦人」というもの。

 

一方、日本ではオペラの方もディマの小説と同じように
『椿姫』と呼びますが、ヴェルディが作った
オペラとしての題名は『ラ・トラヴィアータ』です。

 

「ラ・トラヴィアータ(La traviata)」とは
「道を踏み外した女」という意味。

 

 

akasaka3          赤坂プリンスクラシックハウス

 

 

数十年間前、私が海外で初めて見たオペラが
この「ラ・トラヴィアータ」でした。

 

オペラに招待していただいた夜は、旅に連れて行って
下さった先生と私達3人は旅の疲れが出ていた日。
これは寝てしまうね、と残念に思っていたものです。

 

そこで寝てしまうのはしょうがないけど
「いびきをかいたら起きている人が起こそう」

 

そんな約束をしながら見始めた『椿姫(ラ・トラヴィアータ)』
でしたが、幕が開いた瞬間、みんな舞台に目が釘付けになりました。

 

さほどオペラが好きというわけでもなく、また詳しくもない私が
眠たいどころか息をするのも忘れるほど。
初めて見たウイーンのオペラに心を奪われてしまったのです。

 

 

160219sirotubaki          白い「椿(つばき)」(麻布)

 

 

 

「つばき」をつけているけどビオレッタ(すみれ)

その時に『ラ・トラヴィアータ』が「道を踏み外した女」という
意味を持つということを知り、深く心に残りました。

 

今、これを書くためにネットで検索してみましたら
「ラ・トラヴィアータ」は「堕落した女」と訳されていました。

 

「道を踏み外した女」は直訳だと説明されていて、それはその通り
なのでしょうが、私には「堕落した女」より「道を踏み外した女」
の方が、美しい題名のようにも思えますが、いかがでしょう?

 

一月のうち25日を白い「つばき」の花、後の5日を赤い「つばき」
をつけていたということから「椿姫」と呼ばれていた主人公。
とはいえ主人公の名は、オペラでは「ビオレッタ(すみれ)」。

 

 

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『道を踏み外した女』

オペラの「道を踏み外した女」あるいは「堕落した女」
といわれる主人公は、19世紀中頃にパリで暮らしていた
実在の高級娼婦がモデルといわれています。

 

ウィーンで初めて『椿姫』を見た時に
『ラ・トラヴィアータ(道を踏み外した女)』というタイトルに
なぜか他人事とは思えない不思議な思いを私は抱きました。

 

私はその時は(!)、何一つ道を踏み外してはいなかったのに。
そしてその日以来、『ラ・トラヴィアータ』という言葉は
私の心の中に住みつくことになったのです。

 




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