「女王バチ」 女王のお仕事も結構たいへん 

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「女王」とはいうけれど

「女王バチ(queen bee)」と聞くと、たくさんの
働きバチを従えて君臨している凜とした
女王様というイメージを受けます。
確かにある面ではそうなのかもしれません。

 

ですが、実際に女王バチが4〜5年の寿命の間にして
いることといいますと、これがなかなか大変そうです。

 

「女王」という華麗な名称とは、少々異なる
女王蜂の日々のお仕事をちょっと見てみましょう。

 

 

 

 

 

毎年、同じ場所、同じ時間に集合のナゾ

卵から孵った女王バチは羽化した1週間から
十日ほど後の、4月から6月の繁殖期に
オスバチ(drone bee)たちと交尾ために出かけます。
           (「ミツバチの不思議」)

 

女王バチとオスバチが出かけた場所は
他の巣のミツバチたちが集まっている場所。
毎年、同じ集合場所、同じ時間に集まるそうです。

 

なぜ、彼らにそれがわかるのでしょう?
この情報が次の世代のミツバチたちに
どのように伝えられているのかは、現在はまだ
解明されていませんが、本当に不思議ですね。

 

 

 

 

 

交尾後、オスバチは地面に落ちて死ぬ

女王バチは、いつものロイヤルゼリーから、ハチミツ
に食事を変えて体を軽くし、またオスバチもハチミツ
をたくさんもらって集合場所に出かけて行きます。

 

多くのミツバチが集まったこの場所で、女王バチは
貯精嚢(ちょせいのう)がいっぱいになるまで
複数のオスバチと空中で交尾を繰り返します。

 

これは近親交配の可能性を低くするためと
遺伝的多様性を高めるためといわれています。

 

交尾時にオスバチは、交尾器の一部分を
女王バチの体内に残しますが、交尾後
オスバチは地面に落ちて死んでしまいます。

 

 

蜂蜜ふらい「松崎製菓」

 

 

 

突然、女王バチがいなくなってしまった時は

交尾はいつも成功するとは限らず、交尾飛行中
に女王バチが捕食されたりことも発生します。
また交尾時に限らず、女王バチが
病気で死ぬという事態も起こること。

 

そのように女王バチがいなくなった巣では、働きバチ
が卵を生むようになりますが、未交尾の働きバチから
生まれた卵は無性卵で生まれるのは、全てオスバチ
ばかりですので、その群れは消滅してしまいます。

 

そこで女王バチが急死、失踪した時などは、働きバチ用
の飼育部屋で孵化した幼虫を、急遽、女王バチに
育てるべく専用の飼育部屋・王台を作って移し
ロイヤルゼリーを与えて女王バチを誕生させるのです。

 

 

 

 

 

次の世代のハチの卵を産む

捕食をされることもなく無事、交尾を終えた
女王バチは、巣に戻ると働きバチたちが用意を
した巣房に卵を産み続ける仕事に入ります。

 

交尾時に貯精嚢(ちょせいのう)に蓄えられた
精子の数は700万個にも達し、女王バチの
生存中は貯精嚢の中で生き続けます。
そして排卵時に、精子が輸卵管から出て来るのです。

 

排卵数は、毎日1000個から3000個。
その大量の卵を、東京近郊あたりですと2月中旬から
12月中旬までの期間、産み続けるといいます。

 

貯精嚢に蓄えられた精子を使い、働きバチが用意した
ロイヤルゼリーを食べて、女王バチの寿命である
4〜5年の間、ひたすら卵を産み続けるのです。

 

女王というイメージとは程遠い
「産卵器械(egg laying machine)」
にすぎない(酒井哲夫)、という言葉には頷くばかり。

 

 

ここ(王台)に女王蜂の卵が産みつけられる

 

 

 

卵は、働きバチ→オスバチ→女王バチの順に

女王バチが最初に産むのは
働きバチの卵で、次がオスバチの卵。
オスバチの飼育部屋は、働きバチより
少し大きくできています。

 

女王バチは、オスバチの卵を産む時は精子を
かけずに産みますので、オスバチには
父親がいないことになります。
(「メスの受精卵・2n」と「オスの無精卵・n」)

 

そして最後は、次の女王バチ候補の産卵です。
女王バチは1つの巣に必要なのは1匹ですが
女王バチ用の飼育部屋である王台は
複数用意してあるのが普通です。

 

 

 

 

 

新女王蜂の誕生

王台の中で、一番最初に生まれた
女王バチが、次の女王バチになります。
新女王バチが、王台の中から外に出てくる時には
「チューーー、チュ、チュ、チュ」と鳴くそうです。

 

これは「クイーン パイピング」と呼ばれ
他の女王バチに自分の存在を知らせるためと
働きバチたちを制御するために鳴くといわれています。

 

最初の新女王バチが生まれると
その他の王台は、新女王バチや働きバチたち
によって処分されてしまいます。

 

また時には、今までの女王バチが老齢だったりすると
新女王バチが誕生する際に、働きバチたちが
今までの女王バチを殺してしまうこともあるとか。

 

 

 

 

 

大量の蜂が巣から出る「分峰」

こうして新女王バチが誕生する頃に、今までの
女王バチは、半数ほどの働きバチたちを連れて
巣を出て、新しい巣を作ることになります。
これを「分峰(ぶんぽう)」といいます。

 

分峰の合図である「ワーカーパイピング」を出すのは
女王バチではなく働きバチ。(「浦添養蜂園」)

 

晴れた日の午前中に起こることが多いという分峰ですが
巣から大量のハチが飛び出してきて、巣から半径
10メートルほどは、ハチだらけになるそうです。

 

 

「蜂球」(写真/「東京葛飾
堀木菖蒲園またはお花茶屋発」

 

 

 

新しい巣を作る準備

大量のミツバチたちが巣の上空を旋回した後に
近くの木の枝に、一時的に大きなボールのような
形で集まるのが「蜂球」(上の写真)。
このままの状態で数時間から数日、待機しています。

 

偵察隊のハチたちが、新たな巣に
ふさわしい場所を物色に行きます。

 

戻ってきた偵察隊が紹介する候補地を協議した後、
移転先を決めますが、この決定には何時間も
あるいは何日もかかることがあるそうです。

 

 

 

 

(「協議」だの「決定」だのって、どういう意味?、
と思うでしょう?
実はこれ、ミツバチのダンスという
彼らの「言葉」があるのです。
ちょっと長くなりますので、次回にお話しましょうね)

 

そうして決めた場所にミツバチたちは移り
新たな巣作りに入ります。

 

ミツバチは群れごとに独自の臭いがあり
体臭で仲間を認識しているようで、体臭が異なると
敵とみなされ攻撃されてしまうようですよ。

 

 

 

 

 

本当に「女王」待遇なの?

最後に、女王バチの「女王」について思うことをを少々。
あくまでも私の勝手な考えに過ぎませんけれど。

 

1 ロイヤルゼリーを与えられている

確かに女王バチは、王台という広い飼育部屋で
育てられますし、ロイヤルゼリーも与えられるという
特別待遇を受けています。

 

ですが女王バチは卵を産み、貯精嚢に一生分の
産卵用の精子を保存するため大きな体が必要なので
その為に与えられているともいえます。

 

先ほど出てきたように、交尾に出かける時は、ロイヤル
ゼリーではなく、ハチミツを食べて体を軽くする、
ということからもわかるように、ロイヤルゼリーが
栄養、質量ともにヘビーだということが伺えます。

 

 

 

 

ということは、ロイヤルゼリーを与えられるのは特権
ではありますが、贅沢が許されるというよりは、
体を大きするためや、卵を産み続けるために必要な
栄養ということに過ぎないのではないかという気も。

 

また、ロイヤルゼリーを与えられて体が大きく
なるということは、1回の交尾旅行で一生分の
産卵用の精子を保存することに役立ちます。

 

4〜5年の寿命の間、必要量を蓄えられる体の
大きさがあれば、何度も交尾に行かなくてすみ、
したがって危険の可能性も低くなるわけです。

 

 

 

 

2 働きバチに世話をしてもらう

女王バチの世話は働きバチがしますが、これも
先ほどと同様で、国王や王妃の世話をする従者
というよりは、産卵を続ける女王バチには
必要な措置に過ぎないのではという気もします。

 

人間の妊娠時とは異なるものの、女王バチが一生分の
精子を蓄え、大量に産卵を続けている状態というのは
やはりそれなりの介助が必要なのかもしれません。

 

女王バチは毎日、大量の卵を産む「産卵器械にすぎない」
ともいわれることを、先ほどお話ししました。

 

 

 

 

一見、女王待遇に見える、ロイヤルゼリー与えられ、
働きバチに世話をしてもらうことも、もしかしたら
「産卵器械」であり続けるために必要な単なる合理的な
措置に過ぎないのではないかという気もするのです。

 

とはいえ、女王バチ自身が「自分は女王だ」と
言ったのではなく、あくまでも人間が
勝手に名付けただけではありますが、

 

 

 

 

 

母と子どもたち

考えてみますと、ミツバチの1つのコロニーと
いうのは、血統的には家族でもあるわけで
大抵の場合は女王バチが母親で、働きバチは娘たち、
オスバチが息子ということですからね。

 

唯一、新女王バチが生まれて、母バチが分峰を
して巣を出た直後は、新女王と働きバチたちの
関係は姉妹ですが、時間の経過に従って、
母と娘たちに移行すると思われます。

 

ただ彼らはやはり、家族というよりはコロニーであって
群れのため、強いてはミツバチという種の保存のために
行動するよう、遺伝子にプログラムされているのでしょう。

 

 

 

 

 

最後はみんな一緒

前回、冬が近くなって食べ物が乏しくなる季節になると
オスバチたちは、働きバチたちに羽根をかじられたり
巣の外に追い出されたりすると書きました。

 

食料採取、幼虫の世話、掃除、家づくりと補修、門番等、
あらゆることを一手に引き受けている働きバチは、
オスバチのような扱いはされないものの、体が弱って
きたものに関しては、外に出されてしまいます。

 

そしてこれは、女王バチとて同様。
先ほど、新女王バチが生まれる際に、今までの
女王バチが老齢の時など、働きバチに殺されて
しまうこともあると書いた通りです。

 

 

 

 

女王バチだからといって、老齢や病気の時に
大切にされるわけではなく、他のハチと
同じく外に出されて地面に落ちて死ぬのです。

 

そこには 不満も悲しみもありません。
淡々と死を受け入れる生き物の姿があるのみです。

 




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