鍋島焼の種類「染付鍋島」「色鍋島」「鍋島青磁」

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ピンチをチャンスに変えた佐賀鍋島藩

海外で人気のあった中国磁器が、内乱後
の1644年に、海外輸出が禁止されたこと
からそれの代わりに、有田の伊万里焼が
ヨーロッパに輸出されるようになりました。

 

1670〜1680年代がその
最盛期だといわれています。

 

その中で佐賀藩鍋島家が
藩窯で焼いたものが鍋島焼です。

 

これは販売を目的とする商品ではなく
将軍家への献上品や、幕府要人、大名
への贈答のために特別に焼かれたもの。

 

中国磁器の輸出が禁止された1644年後に
佐賀藩鍋島家はすぐにその対策に取り組んだ
と思われ、承応年間(1652〜1654年)
には御用窯を完成しています。

 

1650(慶安3)年頃に将軍家献上用の
鍋島焼の開発が始まり、完成品が将軍・家光
の内覧を受けたのは1651(慶安4)年6月。

 

その年の11月、あるいは翌1652年
から献上が始まったといいます。

 

 

地図の中ほどに「佐賀藩窯公園」とあります

 

 

この地図の中ほどに「佐賀藩窯公園」(こんな
感じの色の)とありますが、ここは佐賀藩の
御用窯があった場所・大川内山で、現在は
焼物の里(?)公園のようになっています。

 

佐賀鍋島の御用窯では、寛文年間(1661〜
1672年)から1871(明治4)年の廃藩置県
により藩がなくなるまでの、およそ200年
間以上の間、鍋島焼が作られ続けました。

 

中国磁器が輸入ができなくなったことから
佐賀鍋島藩が独自の藩窯を構え、財源を惜しみ
なく投入して作った結果、最高級品と呼ばれ
る鍋島焼を生み出すことに成功したのです。

 

 

 染付大川内山藩窯絵図大皿(部分)

 

 

 

鍋島焼の種類

大きく分けますと鍋島焼は
「鍋島染付」と「色鍋島」、「鍋島青磁」
の3つに分けることができます。

 

 

 

1 「染付鍋島」

青い色を発色する呉須(ごす)と呼ば
れる顔料を使って絵柄を描いたもので
藍色以外には色を使っていないことから
「藍鍋島」とも呼ばれています。

 

輪郭をしっかりと描いた後に、
その内側を塗るため、染付の中でも
きりっとしまった印象を持つのが特徴。

 

 

「染付大根」(写真/「徴古館」)

 

 

最盛期の鍋島焼には、輪郭線の筆跡が
わからないよう、線と線の間の面を塗り
つぶす「濃(だみ)」が、むらなく施さ
れているのがわかる作品もあるそう。

 

「濃(だみ)」とは、線と線の間の面を
塗りつぶす技法の一つで、濃を行う人は
「濃手(だみて)」と呼ばれます。

 

また「墨弾き(すみはじき)」(白抜き線
の模様を先に墨で描いて、上から呉須を塗り、
それを焼くと墨は消えて呉須が残る技法)
など、充実した技法が見てとれます。

 

 

宇和島藩伊達家の上屋敷跡で出土された「鍋島焼」
東京都教育委員会蔵
(写真/「愛媛県歴史文化博物館 学芸員ブログ『研究室から』)

 

 

以前、このブログに書いた六本木の
佐賀藩鍋島家の江戸・麻布屋敷のお隣に
あった宇和島藩伊達家跡で発掘された鍋島焼
の中にも「染付鍋島」があったことがわかります。
(「宇和島藩麻布上屋敷で発掘調査で出土した鍋島焼」

 

後ろの方にあるお皿の破片は、呉須で若松
が優しく描かれているのがわかりますが、
一つの大名家の屋敷跡から、これほど多く
の鍋島焼が発掘されたのは稀なことだそう。

 

これは佐賀藩鍋島家の麻布屋敷と宇和島藩
伊達家がお隣同志であった上、鍋島家と
伊達家が3代にわたって婚姻関係を結んで
いたことによると推測されています。

 

 

 

「色絵葵文皿 」東京国立博物館

 

 

 

2 「色鍋島」

藍色の呉須や赤絵で下絵を描いて
本焼(ほんやき)をした後に、色を
使って上絵をつけたものです。
赤色、黄色(きび)、緑色(よもぎ)の3色。

 

次の写真の「色絵宝尽文皿 」などは一見、
多彩な色を使用しているように思えるので
すが、実は3色のみで描かれたものです。

 

 

 

「色絵宝尽文皿 」
ロサンジェルス・カウンティ美術館

 

 

 

鍋島焼ではない古伊万里・有田焼では
五彩、七彩というものもあります。
鍋島焼は、基本的に金色や銀色も使用しません。

 

限られた色数という制約の中で、これほど
多用なデザインが施されているのは驚くばかり。

 

江戸の絵師に、当時流行の江戸小紋や
歌舞伎の衣装、能装束などの図柄を
描かせたものを、大河内山の職人に
学ばせたからだといわれています。

 

 

中国・元の時代(14世紀)の青磁瓶
芸州浅野家旧蔵

 

 

 

3 「鍋島青磁」

大河内山で産出する高い質の青磁原石
を用い、青磁釉を何度もかけて作られ
ているのが鍋島青磁です。

 

青磁釉を全体、あるいは一部にかけ、
染付や色絵を施すこともあります。

 

青磁釉とは、青磁磁器に使われる
うわぐすりのことで、白磁に比べると
鉄成分が多い(1〜2%)のが特徴。

 

還元焰焼成(かんげんえんしょうせい)
と呼ばれる作用により、美しい青磁の
色が生まれます。

 

中国の砧青磁をお手本として緑色がかった
ものと、交壇官窯青磁をお手本として
緑がかった貫入(ひびが入ったように
見える仕上げ)のものがあります。

 

 

「青磁染付桃文皿(せいじそめつけもももんさら)」
口径14.7cm 高3.7cm 高台径7.4cm
18世紀前半 元禄(1688-1704年)
(写真/ 「九州陶磁文化館名品図録」)

 

 

このお皿は全体が青磁ではなく、背景
を青磁にしたもので、左の大きい桃は
染付の線書きだけで表現し、右の
小さい方の桃は墨弾き(すみはじき)
で地紋で表現されています。

 

鍋島焼には吉祥文様として桃を
描いた作品が多いようですが
中でもこのデザインは秀逸ですね。

 

また桃の花の描き方も、花びらの先端を
丸くするなど、個性的な表現方法がとられ
ていますが、桃の実の先端や葉っぱの先の
とがりと重ならないためなのでしょうか?

 




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