これ以上巧みな装いを見たことはありません 桜餅 赤坂「青野」

「あぷりのお茶会 赤坂・麻布・六本木」へようこそ!

 

130215sakura桜餅 赤坂「青野」

 

 

赤坂「青野」の「桜餅」

先日、同じ赤坂「青野」の上生菓子
「梅」と「うぐいす」を御紹介しました。

 

その時にちっぷママさんがコメントをくださり
着物の装いのコメントの、お返事を書いている
うちに思い出したことがありました。

 

それは、とても素晴らしいお着物を
お召しになった方のことです。
素晴らしいお召物、といっても
単に高価という意味ではありません。

 

品質のよさはもちろんのこと
ですが、それだけではないのです。

 

単に、高価なだけのものをひけらかす
のはかえって、さもしく感じる
ものなのかもしれませんし。

 

本当にその場に相応しい、
非の打ち所のない見事な装い。
その方の知性と、お気持ちまでも
が表現されていたお召物でした。

 

 

130215ugusiroうぐいす 赤坂「青野」

 

 

 

茶色の色無地に、黒の帯

それは、ちょうど2年前のひな祭りの日。
その日はお祝いの式があったのですが
お話したいのは、式の主役の方の
お母様のお召物についてです。

 

その方は、一ヵ月ほど前に
お連れ合いを亡くされたばかり。
それもあってでしょう、渋い茶色の
色無地をお召しになっていました。

 

そして物言う帯なのですが、これは黒地
でしたが喪服の黒い帯ではありません。

 

渋い茶色の色無地に、真っ黒の喪服用
の帯ですと、準喪服ということに
なってしまいますからね。

 

 

150622tatougami

 

 

 

黒い帯には源氏香の模様に、花びらが

ですから黒は黒でも
その帯には模様が入っています。

 

お太鼓と、前の方に
あまり大きくはなく控えめに。
お太鼓には源氏香が二つ、前にはそれが一つ。

 

その源氏香に、薄紅色の小さな
花びらが2,3枚散りかかっているのが
何とも言えずに愛らしく感じます。

 

お連れ合いを亡くされたばかりのお立場
ではありながら、御子息の晴れの舞台
を控えめに寿いでいらっしゃる、その
取り合わせの妙に私はうなりました。

 

 

さくら 赤坂「青野」

 

 

 

言葉を失うほどの巧みな装い

翡翠の澄んだ緑色のかんざし
が、唯一の色を感じさせます。

 

もちろん全身黒の喪服ではなく、茶色の着物
に、帯の薄紅色等の色は入っているのですが、
なぜか翡翠の緑色が息づいているような
鮮やかさで色彩を感じさせます。

 

私は今まで、これほど巧みな装いを
見たことはありませんでした。

 

 

kocho源氏香の模様

 

 

 

浅葱色の総絞りの着物に、洗朱の帯

それから10日ほどして、御子息が
その場の長となられて最初の会がありました。

 

すばらしいお着物と帯のコーディネイト
をなさったお母様は、その場にはいらっ
しゃいませんでした。

 

が、私はそのお母様に敬意を表すべく
浅葱色の総絞りの着物に、鼓の模様が
描かれた洗朱(あらいしゅ)の帯を
取り合わせました。

 

 

130225hisimoti桃重ね 「清閑院」

 

 

 

嗚呼……

私の着物を御覧になった御子息は、
「いいご趣味で……」と私を気遣う
言葉をかけて下さったのです。

 

「今までより、なお一層よくなりますように
(鳴りますように)との思いを込めまして……」
と、本当は申し上げたかったのですが。

 

私ときたら、そのお優しい言葉に対して
一言のお礼すら言えなかったのです。

 

「ぐっ」、とも「うっ」ともつかない
どこぞで蛙をつぶしたような声が
悲しげに出ただけでした。
あぁぁ……。

 

今、考えても尻尾を噛んで死んで
しまいたい気持ちが蘇ってきます。
また、黒歴史を一つ重ねてしまいました。

 

ダメですね。
ホラ、私って超気が小さくて
内気なものですから……(ホントか!)。

 

スポンサードリンク