精神科病院の5つの入院形態

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「精神病院」→「精神科病院」(2006年)

都道府県に、原則として設置義務が課されて
いる精神科病院ですが、一般の病院と異なる
のは、法律に基づいた強制的な入院を
受け入れることです。

 

そのため、本人自らの意思で入院をする
「任意入院」以外に、親族や医師の同意
による入院もあります。

 

精神科病院の入院形態を、下に表にして
みましたが、その前に説明の中に出てくる
「精神保健指定医」と「特定医師」という
言葉の説明をしておきましょう。

 

 

 

 

 

「精神保健指定医」とは?
精神科を3年以上含む、5年以上の臨床経験
を持ち、特定8症例のリポートなどを提出
し、審査後に合格した医師。

 

「特定医師」とは?
精神科2年を含む、4年の臨床経験があり、
精神保健指定医が複数常勤している等の
条件を満たしている特定病院に勤めて
いた経験がある医師。

 

精神保健指定医の補佐のような役目
措置入院や緊急措置入院などの、強制力
の強いケースの診断には関与しません。

 

 

 

 

 

精神科病院の5つの入院形態

__________________________

任意入院

本人の判断でする

退院も基本的には本人の意思

__________________________

医療保護入院

自傷他害のおそれ なし

 

必要な同意者
本人の同意が得られない場合
精神保健指定医の診察及び家族等
のうちいずれかの同意を得て実行

 

入院期間
特定医師の診察の場合、入院期間は12時間

 

本人の意思では退院できない
本人と家族の全員が退院請求を行うことができる

__________________________

措置入院

自傷他害のおそれ あり

 

自傷他害のおそれのある人を警察官が発見
した時、保健所を通じて都道府県知事に通報

       ↓

都道府県知事は、県の職員(多くは
保健所の職員)に調査を行わせた上
で診察の必要があると認めた時に
精神保健指定医による診察を依頼

       ↓
必要な同意者
2名以上の精神保健指定医が入院が
すべきと決定した時に実行される

 

入院期間
入院措置の解除があるまで

 

退院に際しては、
・精神医療審査会の審査
・精神保健指定医の診察で症状
が改善した症状消退届を提出
・実地審査後に精神保健指定医
の診察等を経た後

     ↓

都道府県知事に精神保健指定医が
通知を出して措置入院解除となる

__________________________

緊急措置入院

「措置入院」で緊急を要する場合

 

必要な同意者
精神保健指定医2名の診察でなく1名でも可能

 

入院期間
72時間となっているが、その後必要と認め
られると、他の入院形態に移行させて続行

__________________________

応急入院

自傷他害のおそれ なし

 

上記4つが当てはまらず緊急を要する場合
「医療保護入院」に近く
入院に同意しない身元不明の人、
保護者と連絡が取れない人が対象

 

必要な同意者
精神保健指定医、もしくは
特定医師の診察が必要
知事の決定は不要

 

入院期間
精神保健指定医で72時間
特定医師で12時間

 

入院可能施設は、施設基準を満たしている
応急入院指定を受けている病院に限られる

__________________________

 

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精神病床を削減してきた諸外国、依然として多い日本

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入院患者の5人に1人は精神病床

日本にある病院の総数は、2018年の
厚生労働省の「医療施設動態調査」
によりますと 8,389 です。

 

うち一般病院が 7,334 で、
精神科病院が 1,055。

 

一般病院数   7,334  (87%)
精神科病院数  1,055  (13%)

 

 

 

 

病院数ではなく、病床数でいいますと
全体で1,554,524床で、精神病床が 331,126 、
それ以外が 1,223,398 です。

 

それ以外というのは「一般病床」
「感染症病床」「結核病床」
「療養病床」を指します。

 

精神病床数      331,126 (22%)
それ以外の病床数  1,223,398 (78%)

 

つまり日本にある病床のうち
5病床に1床が精神病床です。

 

 

 

 

 

精神病床を削減してきた諸外国

この全体が5分の1が精神病床という数に
対して、諸外国ではどのようになって
いるかをみたものが次のグラフです。

 

1960年から2000年までしか表示されて
いませんが、現在もほぼ同じだそう。
左の縦軸の「1〜5」の数字は
人口1000人あたりの病床数です。

 

 

精神病床数の推移(諸外国との比較)

 

 

現在、病床数は日本がダントツの1位ですが
1986年位までは日本より多い国もありました。

 

1960〜1970年代に病床削減をした国は
オーストラリア、イタリア、ノルウェー、
アメリカ合衆国、

 

1980年代で病床削減率が高い国は
フィンランド、スウェーデン、イギリス、
ルクセンブルグがあげられます。

 

 

 

 

OECDの調査では、1000人あたり1床を超えて
いるのはオランダ、ベルギー、日本で、その
うち2床を超えているのは日本のみです。

 

 

 

平均在院日数は先進諸国の3〜20倍

日本がダントツに多いのは
精神病床の数だけではありません。
在院日数もずば抜けて長いのが特徴。

 

先ほどのグラフでも同様ですが、各国の
定義が異なるために、示された数が必ず
しも正確とはいえないにしろ、それらを
無視できるほど、数値の差は一目瞭然です。

 

 

 

 

先進諸国の入院日数の平均は、
18日前後ですが、日本では
296.1日(2014年)という異常な長さ。

 

日本人でも精神病床でない入院の
場合の平均在院日数は、32.8日です。
ガンー19.5日、呼吸器疾患ー26.5日、
循環器系ー45.3日等。

 

それが精神疾患となりますと
いきおい長期になり、統合失調症
などでは、561.1日にも及びます。

 

 

 

 

しかし精神疾患だから長くても仕方
ないということでないことは、先ほど
のグラフでおわかりの通りです。

 

平均入院日数が50日を超えているのは
ポーランドと日本だけで、300日近い
などという長さは日本のみです。

 

 

 

 

精神病床にいる30万人程の入院者のうち

 

  期間     入数
_______________________________________

 1年以上    20万人以上
*  5年以上   11万人以上
*   10年以上      7万人以上
*   20年以上     3.5万人以上

 

精神病床の入院者のうち1年以上の
長期入院は 64.5%を占めています。

 

 

 

 

 

入院患者の疾病別内訳

精神病床の入院者の疾病で一番多いものは
「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想
性障害」が圧倒的に多く、次いで「認知症
(アルツハイマー症)」が続きます。

 

 


上のグラフは入院患者の疾病別内訳
下は入院患者を含めた総患者数の疾病別内訳

 

 

総患者数では「気分(感情)障害
(躁鬱病を含む)」がトップです。

 

 

 

WHOの調査では諸外国より精神疾患は多くはない

病床数も入院期間も長い日本ですが、WHO
(世界保健機関)のメンタルヘルス調査では
イタリアの8.2%について低い、8.8%です。

 

それに対してアメリカは26.4%、フランスが
184%ですので、日本人が諸外国に比べて
精神疾患が著しく多いとはいえません。

 

にも関わらず世界中の精神病床の5つに1つ
が日本にある理由はいくつかあげられます。

 

 

 

 

 

「社会的入院」

精神疾患があっても早期で退院し、社会生活を
しつつ回復を目指す外国とは異なり、日本では
病院に閉じ込めておくという考えが根強いよう。

 

家族が引き取りたくない、外国のように地域で
ケアするシステムが整っていない等の理由から
長期の「社会的入院」につながっています。

 

厚生省の調査結果では7万人ほどが社会的入院
とされていますが、その数に疑問を呈し15〜
20万人ほどと推測する専門家もいます。

 

 

 

 

 

精神科病院は民間病院が多い

2015年6月の「病院報告」をみますと、
精神科病院と精神病床の多くが国などの
公的医療機関ではなく、ほぼ民間である
ことがわかります。

 

これに対して、先進諸国では
公立病院が中心とのこと。

 

開設者   精神科病院数(単科) 精神病床
_______________________
 国        3(0.3.%)  7,314(2.2%)
公的医療機関  42(3.9%)  21,194(6.3%)
 民間   1,020(95.8%) 308,120(91.5%)

 

 

 

 

 

国が民間精神病院の建設を推進

日本では第二次世界大戦後、戦争に
よる焼失や経営難による閉鎖から
精神病床は4千床まで減りました。

 

一方、1954年の全国精神障害者実態調査では
入院を必要とする患者は全国で35万人と推定。

 

政府は精神病床を増やすため医師、看護師等が
少なくてよい「精神科特例」を定め、国家補助
規定を設けるなどして民間病院の建設を推進。

 

そのような民間の精神科病院は、経営のために
入院ベッドの利用率を高めることが主眼となり
長期入院患者が増えていったともいわれます。

 

 

 

 

 

進まぬ「入院中心から地域生活中心へ」

兵庫県豊岡保健所の柳尚夫さんは
このように語っています。

 

「精神科長期入院患者は、この20年以内に
半分(10万人)が死亡退院する予測である。
長期入院に頼った精神科病院が、現状のまま
存続することは、患者動向からありえない。
患者の死亡を待つのか、地域移行で地域生活
に戻す支援をするのかが問われている」

 

2004年9月には厚労省が「入院中心から
地域生活中心へ」との「精神保健医療
福祉の改革ビジョン」を公表しました。

 

しかし10年経過後も精神保健医療福祉の
改革は予定通りに進んでいないようです。

 

 

 

 

 

「この病を受けたる不幸のほかに
この国に生まれたる不幸」

日本における精神病学の
創立者である呉秀三医師は、

 

「わが国何十万の精神病者は、実にこの病を
受けたるの不幸のほかに、この国に生まれ
たる不幸を重ぬるものというべし」

 

との言葉を『精神病者私宅監置ノ実況及び
其統計的観察』(1918年)のなかで記して
いますが、この言葉が一日も早く過去のもの
となることを願わずにいられません。

 

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精神病院をなくしたイタリアと、世界の精神病床の1/5を有する日本

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精神病院がないイタリア

数年前のことですが、イタリア語を習って
いる人から、「イタリアには精神病棟がない
んだよ」と教えてもらったことがありました。

 

イタリアでは1970年代に、脱精神科病院を
掲げて政策転換し、1978年のバザーリア法
(精神科医、フランコ・バザーリアの改革に
より)成立、精神病院の開設は禁止されます。

 

最小限存在している強制入院は、あくまでも
例外的対応にとどめられ、1998年には
イタリア全土で精神病院が閉鎖されました。

 

 

イタリアの菜花「チーマディラーバ」

 

 

 

総合病院の中の精神病床も16床まで

精神病院はなくなりましたが、精神病床が
ゼロというわけではなく、総合病院の中に
「SPDC」と呼ばれる精神病床があります。

 

身体疾患の原因により精神症状が出ている人、
例えば脳炎などの原因から、統合失調症のよう
に見える精神症状を呈する人のための病床。

 

ただし、この総合病院の精神病床が増えて
実質が精神病院のようになるのを避けるため
に、SPCDは最大16床と決められています。

 

 

イタリアントマト「ゼブラ」

 

 

 

日本は世界一精神科病床が多い国

一方、日本はといいますと世界一精神科
病床の多い国として知られています。

 

世界の精神科病床の約2割に当たる約35万床
もの精神病床があり、入院期間が20年以上
という人も3万人以上いるということ。

 

国は、72,000人は、退院先さえあれば退院
できる「社会的入院」であるとしています。

 

 

 

 

 

「隔離」から「地域ケアシステム」へ

人間を一つのところに閉じ込めるシステムは
人権が保障されない状況が必ず生じてしまい
屈辱的で人間の尊厳を奪う現実がありました。

 

幻覚や妄想を主症状とする「統合失調症」は
100人に1人が発症し、生活環境により悪化も
すれば、改善もする病気だといいます。

 

単に脳機能への生物学的な治療だけでは解決
が困難であり、疾患の根本にある「人間的な
苦悩」に対する人間的な関わりや、社会で
存在を承認されることが改善を促します。

 

ほとんどの先進国では、精神疾患のある人々
を隔離・収容し、時には人生の大半を閉鎖
病棟で過ごすという状況もありましたが、

 

1960年代頃からは、地域ケアに力を入れる
ようになり、様々な地域でケアシステムの
試みがなされるようになっています。

 

 

 

 

 

始まりはほぼ一緒だったイタリアと日本

現在では対極にあるようなイタリアと
日本ですが、精神医療関連の法律が
のは、ほぼ同時期だったようです。

 

イタリア
1904年 法律第36号「ジョリエッティ法」

日本
1900年 精神病者監護法

 

この2つの法律は、自発的入院の規定
はなく強制入院のみが定められたもの。

 

 

 

 

 

閉鎖病棟内では虐待事件も発生

精神科病床を増やし続けた日本は、敗戦後の
高度成長期には、労働力の確保が優先され、
労働力とならない人々に対して施設収容を
推進する施策がとられました。

 

本人の同意によらない強制入院が合法的
に推進された歴史があったのです。

 

1970年代以降、閉鎖病棟内で発生する虐待事件
が社会問題となり、WHO(世界保健機構)を
はじめとする国連機関から度重なる指摘を受け
ますが、抜本的な法改正はなされませんでした。

 

 

 

 

 

トリエステ

始まりはほぼ同じようだったイタリアは
現在、精神病院のない社会を、どのよう
に維持しているのでしょう。

 

地域ごとにかなりの違いがあるという
ことですが、例えばトリエステでは
精神障害のある人を地域で支えています。

 

精神保健センターが4か所に設置され、医師
・看護師・心理士等、30人余のスタッフの
連日24時間対応の体制が整えられています。

 

職員は白衣などのユニフォームは着用せず、
同じ目線で接することのできるよう、受付も
カウンターなどはなくテーブルがあるだけ。

 

 

 

 

 

「当事者の人間性を回復」を重視

精神保健が他の地域とは異なるトリエステ
では、バザーリア改革当時、現場にいた人
たちが「長老」として存在しています。

 

そして現場で常に議論を重ねているため
基本的な考え方がブレないとのこと。

 

日本の精神科医療では「精神症状の改善」
のために力を尽くしていますが、
トリエステでは「当事者の人間性を回復」する
ことが、もっとも重要な課題とされています。

 

 

 

 

 

トレント

20年前は苦情の多かったトレントの精神保健
サービスは現在、評価されるまでになりました。

 

10年前に始まった「UFE(当事者・Utenti、
家族・Familiari、専門家・Esperti)」
という取り組みがあります。

 

これは、専門職はもちろん、精神疾患の
当事者にも経験と知恵があり、家族にも
身近で支えてきた経験と知恵があるとの考え
から、精神保健局の正規職員として当事者、
家族を雇用するようになりました。

 

当事者、家族が専門職と同じレベルで仕事
をするに際しては、当初、専門職からの
強い反発もあったそうですが、UFEの
取り組みのなかで変わってゆきます。

 

 

 

 

 

「当事者が問題」と捉えずに「問題を持った人」と捉える

「当事者自身を問題として捉える」のではなく
「当事者を問題を持った人」と捉えることにより
抱えた問題を解決できるとの確信が生まれる。

 

現在は病棟内で働く当事者のお一人
は、こんな風に表現しています。

 

「朝出勤して、仕事をする。
人に対して愛情深く接しているので、
仕事を終えて自宅に帰る時の方がエネ
ルギーが再生しているような体験を
している」と。

 

 

 

 

 

思考を変える→現実を変えることができる

イタリアの精神保健サービスを訪ねた
精神科医の上野秀樹さんは、

 

「『思考を変えることによって現実を
変えることができる』ということでした。
一番大切な価値をどう考えるか、それに
よって現実を大きく変えることができる
のです。
バザーリアの言葉『病気を括弧でくくって、
人をみる』、日本でも当事者の人間性の
回復をもっとも重要な価値として精神科
医療を行う時が来ています」

と記しています。

 

 

 

 

 

アレッツォ

アレッツォの精神保健センター長
であるダルコ医師の言葉です。

 

「人の痛みに応えることが、私たちの仕事。
そのためには、信頼関係が大切です。
そして家庭に出向き、予防を重視します」

 

幻聴や妄想がある時、それは単なる「疾患」
ではなく、人間関係の亀裂、失職、貧困と
いう「人生の苦悩」であることから、

 

「我々は、言葉をなくした人たちの沈黙の
翻訳者になることから始めなければならない」

 

 

 

 

(参照/「国際人権ひろば」2013.5 吉池毅志
  「大阪精神医療人権センター」
           2019.10.19 上野秀樹)

 

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