においと濃度の不思議な関係「順応」

「あぷりのお茶会 赤坂・麻布・六本木」へようこそ!

 

 

 

においに慣れてしまう「順応」

部屋に入った瞬間は何かにおうと思って
も、しばらくすると慣れてしまう経験は
どなたにもおありでしょう。

 

いわゆる「鼻がバカになった」といわ
れる現象ですが、これをにおいへの
「順応」といいます。

 

たとえそのように慣れてしまっても
しばらくそのにおいから遠ざかると
再び、においを感じるようになる
のも経験ずみのことですね。

 

どの位で、においに慣れるのかを表した次
のグラフを見ますと、におい(硫化水素)
に5分ほどで慣れているのがわかります。

 

 

 

 

慣れてはいてもゼロになるわけではなく
最初よりは気にならなくなった程度の
感覚が持続しています。

 

そして、そのにおいから遠ざかった
時には、順応したのと同じように
においがまた回復していくのです。

 

回復の速さは、一般的には慣れる時
よりも早い時間で回復します。

回復の速さ > 順応する時間

 

そして濃度が高まるほど、順応と回復
がともに速くなるということです。

濃度が高い > 順応・回復が早い

 

 

 

 

 

「慣れ(自己順応)」

海辺など特有のにおいがある場所に住み
他の場所へ通勤しているような人はその
においに慣れていることが多いものです。

 

海辺のにおいを1日中嗅ぎ続けているわけ
ではありませんが、同じにおいを繰り返し
嗅いでいることにより「慣れ」るのです。

 

それは、住んでいる土地のにおい
だけではなく、それぞれの家にある
固有のにおいの場合でも同様です。

 

住んでいる人は、自宅に帰っても
他の人ならば感じるはずのにおい
を意識しないことは多いもの。

 

ただし、長期間家を留守にした場合
などには、においがわかることも
あるといいます。

 

 

 

 

 

呼吸ができないほどのガス臭に気づかず

悪臭に慣れてあまり不快感を感じないで
過ごせるようになるのはよいのですが
慣れてしまっては困ることもあります。

 

都市ガスは、洩れた時に気づきやすいよう
にあえて嫌なにおいを混入しています。

 

ところが、漏れた量があまりの少量だった
場合にはにおいに気づかずに、ガス中毒に
なり命を落とすことさえあります。

 

他の人が入室したら呼吸もできないほどの
強いにおいであっても、長くいる人は全く
感じないといいますから恐ろしいです。

 

 

 

 

 

慣れは学習による嗅覚中枢の指示

におい刺激が繰り返されることにより
嗅覚感覚が低下する「慣れ」がおこるのは
受容器が作動しないからではありません。

 

受容器レベルでは、においに応答している
のですが、意識として知覚されにくかったり
においの知覚が「少ない  / ない」状態です。

 

それは、高次の嗅覚中枢からの
ネガティブフィードバックを
第一次中枢である嗅球が受けて、


     ↓

後からくるインパルスを抑制するという
嗅細胞の情報伝達の段階で起きるメカニ
ズムによるものと考えられています。

 

 

 

 

海馬や島前部の慣れの現象は、一時嗅覚野
の慣れのパターンに従っていますが、海馬、
島前部の賦活が減衰しても、眼窩前頭葉の
活動は持続します。

 

一時嗅覚野の慣れ減少によって、賦活が
弱まるのに対して、視床背内側核はより
長い活動(30秒)が認められることから
眼窩前頭葉の長期にわたる賦活は、視床
背内側核を介した投射によるものと思わ
れます。

 

視床は、視覚・聴覚・味覚・体性感覚の
中継地点ですが、私たちが普段生活して
いるときはこの感覚が統合されて、眼窩
前頭葉でそのニオイへの感情を含めた意
味づけを行なっているのではと考えられ
ています。

 

 

 

 

 

「順応」「慣れ」「嗅覚疲労」

同じにおいを嗅ぎ続けているとにおいを
感じなくなる「自己順応」は、他のにおい
に関しては普通にわかります。

 

それに対して、一時的に強いにおいを嗅ぎ
鼻がバカになってしまう「嗅覚疲労」は
全てのニオイの感度が下がってしまうもの。

 

また、あるにおいを嗅いだ後に
別のにおいに対して感覚が鈍るもの
を「交差順応」といいます。

 

と一応書きましたが、鼻が利かなくなる
現象を表現する言葉の使い方は、厳密
には定まっていないのが現状のようです。

 

 

心理学の分野では、

持続的ににおいを提示した時の慣れを
         ーーーー「順応

 

先ほど慣れとして説明したにおいの
反復に対する感覚の低下現象を
         ーー「嗅覚疲労

 

と解釈しているということです。

 

*   (参照/堀内哲嗣郎
* 『香りを創りデザインする』)

 

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