アメリカで報じられても日本では報じられない原発事故後の心臓手術数の急増 原発1

乳児に心臓手術数急増

福島の原発事故後に乳児の心臓手術数が急増
している事実を、アメリカの3大ネットワーク
の一つである CBSテレビが報道しました。
2019年4月9日の「YAHOO! JAPAN ニュース」から。

 

「福島第一原発事故と乳児の心臓手術数急増
の関連を新たな研究が示唆。
先天性心疾患の手術を受けた1歳未満の乳児数
が14%以上急増」

 

このニュースは、3月13日、心臓病研究の世界
的権威「アメリカ心臓協会」が発行している
国際科学誌『ジャーナル・オブ・ザ・アメリカ
ン・ハート・アソシエーション』に掲載された、
「福島原発事故後の複雑心奇形の全国的増加」
と題した研究論文についてのものです。

 

論文の中心的な著者は、名古屋市立大学で
生体情報測定学を研究する村瀬香准教授。

 

 

 

 

日本では報じられない理由は?

アメリカで報じられたこの重大なニュース
ですが、当の日本では報じられていない
ようです。

 

これを不思議に思ったライターが、村瀬准教授
に取材をしたところ、このような答えでした。

 

「実は、メディアに大きく取り上げられるだろう
と思い、研究チームはスタンバイしていたんです。
しかし、結局、報じてくれたのはアメリカの
ロイター通信やCBSニュース。
日本の大手通信社や大手新聞社の記者は取材には
来たものの、なぜか報じています。
唯一、大学の地元という縁からか、中日新聞だけ
は取り上げてくれました」

 

 

 

 

報じられないことの方が衝撃的

このような科学研究論文というのは、同じ研究者
から審査を受け、承認されると科学誌に掲載され
ますが、村瀬さんの論文もその過程を経て掲載
されている、研究者お墨付きの論文です。

 

その上「アメリカ心臓協会」は、心臓病の研究
ではアメリカ最大で、世界的にも信頼性の高い
機関です。

 

ライターは、「研究論文の結果は衝撃的だが、
世界的権威が認めた重要な研究論文を、原発事故
が起きた当事国・日本の主要メディアが報じて
いないのは、ある意味、もっと衝撃的だ」
と書いていますが、全く同感です。

 

 

 

事故の前後で比較

研究で村瀬さんは、「複雑心奇形」という先天性
心疾患に注目し、福島原発事故前(2007〜2010年)
と事故後(2011〜2014年)の手術件数の変化を
解析しました。

 

複雑心奇形とは、胎児の心臓が形成される段階で
生じる障害のことで、「先天的奇形の心臓が生じる
障害」というようなもの。

 

複雑心奇形には29種類ありますが、この障害を
もって生まれた乳児は、治療のために高度な手術
を受けなkればなりません。

 

この手術を原発事故の前後で比べたところ、2011年
以降に手術数が有意に増加していることがわかり
まりた。
(「有意」とは、偶然に起きた増加ではなく、
統計的に意義のある増加のこと)

 

 

 

 

因果関係

1歳児未満の複雑心奇形の手術件数は、事故後
14.2%の優位な増加が認められましたが、複雑
心奇形の中でも、心臓が形成される早期の段階
で重篤な複雑心奇形を持つ乳児の手術が急増
したということです。

 

一方、29種類の複雑心奇形のうち、有意に減少
したものは1つもなかったということです。
これは、特別なものだけではなく、たくさんの
複雑心奇形の増加が見られたということ。

 

村瀬さんは、
「原発事故との関連は不明です。
また、原発事故との関連の有無を証明すること
は不可能です。
しかし、原発事故以外、複雑心奇形の手術件数
の急増に結びつく要因が考えられないのです。
例えば、新たな手術法が開発された場合、その
手術による手術数の増加は起きるかもしれません
が、新手術というのは通常徐々に浸透していく
ものなので、このように急増することはありえ
ません」
と語ります。

 

この手術件数は全国でのものですが、それでは
福島県でも増加しているのかについては、県別
のデータがないために不明とのこと。

 

福島県の場合は、心奇形の内訳が出されていな
いので、どれだけ重篤で複雑な種類の心奇形で
あるかも不明で、手術数が増加しているのか
どうかも非公開だそうです。

 

 

 

 

研究費枠自体がなくなる

また複雑心奇形の手術だけではなく「停留精巣」
という睾丸の位置に異常がある精巣を持って
生まれた乳児に対して行われて手術退院件数を
調べると、その数は、原発事故後は事故前に
比べて平均13.4%も増加していました。

 

村瀬さんがこの結果について書いた研究論文は
昨年5月、国際科学誌「Urology(ウロロジー)」
に掲載されています。

 

もともとオオタカという野鳥の生態を研究して
いたという村瀬さんは、原発事故後、オオタカ
の繁殖成功率が7.8割から5割に下がったことに
ついて論文を書きましたが、この時も大手新聞
の記者が取材には来るものの掲載されません
でした。

 

イノシシの研究でも、原発事故後、オスなのに
精巣がないイノシシが数多く見つかり、先天性
奇形という疾患かもしれないと思い調べようと
しましたがサンプル採取が難しいため、入手可能
な人のデータで調べてみようと思ったのが、
きっかけだったといいます。

 

大学や企業の研究者が提案した研究テーマのうち
優れたものに研究費補助金(科研費)を国は出し
ていますが、福島原発事故による被曝の影響を
研究する研究費枠自体がなくなり、現在は一般的
な放射能影響という研究費枠しかなくなったそう
です。

 

 

追記:2019年6月25日

東京電力ホールディングス(HD)は24日、福島第1原子力
発電所事故の賠償資金として、原子力損害賠償・廃炉等
支援機構から、688億円の追加交付を受けたと発表。
資金は除染費用や、風評被害に対する賠償、避難住民の
住居の雑保費用などに充てられます。

今回の資金交付は89回目となり、累計額は8兆8887億円
で、政府から受け取った賠償資金の損害は、原子力損害
賠償法に基づく1889億円と合わせ、9兆776億円となりました。

 

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