薯蕷饅頭 「薯蕷」か「上用」か? 「じょうよ」か「じょうよう」か?  

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「薯蕷饅頭」の名前の由来

「塩瀬」の「一口薯蕷饅頭」です。
原材料名の表記が見つからないのですが
サイトの「製造工程」には国内産のやまといも、
上新粉、砂糖、小豆などと書いてあります。

 

実は驚いたのは「薯蕷饅頭」の読み方です。
私は今まで「じょうまんじゅう」だと思っていた
のですが、今回調べていて「じょうようまんじゅう」
という言い方もあることを知りました。

 

「じょうよまんじゅう」の名前に
ついては、次のような説明があります。

 

A 「『薯蕷饅頭』を当て字である『上用饅頭』と
 書くこともあり、現在では『上用饅頭』と書く
 ことの方が多いかもしれません」という説。

 

B 「この和菓子は、薯蕷饅頭と難しい漢字ですが
 上用饅頭と書き直すことで名前の由来がわかります。
 大昔、和菓子は一般庶民にはとても口にする
 ことが出来ないくらい高価なものでした。
 貴族など位が上の者しか食べることが
 出来なかったのです。
 そのため上に用いる饅頭ということで上用饅頭と
 つけられた歴史がある上品な和菓子の代表です。」
             (「くり屋南陽軒」

 

C 「山芋(ヤマノイモ)を「しょよ」といい、
 これが転じて「じょうよ」となった。
 すりおろした山芋を用いてつくる料理
 に薯蕷の名をつける。」   
「手前板前」

 

 

(B)の、上つ方が用いるという意味の「上用」
だった場合の読み方は、「じょうよ」ではなく
「じょうよう」という方が妥当でしょうか。

 

 

ヤマノイモの花(写真/「きーさんち」)

 

 

 

「薯蕷」とはヤマノイモのこと

「薯蕷(じょうよ)饅頭」の特徴といえば皮に「薯蕷」
が入ってあるお饅頭で、「薯蕷」とは山芋のこと。
ヤマノイモ科ヤマノイモ属のつる性多年草
の根の部分を指しています。

 

古くは「薯蕷」と書いて「ヤマノイモ」と読み、
日本原産で、学名は「Dioscorea japonica」。
すりおろしたものを「トロロ」といい
粘りが高いお芋ですね。

 

トロロが口の周りなどにつくと、痒くてかぶれて
しまうこともありますが、ってこれは私のこと。
「自然生(ジネンジョウ)」、
「自然薯(ジネンジョ)」ともいいます。

 

「ジネンジョ」や「ジネンジョウ」という音だけ聞き
ますと何のことやら、とも思いますが、漢字を見ると
「自然に生えてきた」「自然にある薯蕷(ヤマノイモ)」
という意味ですので、漢字の方が理解しやすいかも。

 

なお「薯蕷」に似ているものに「ナガイモ」があり
こちらもヤマノイモ科ヤマノイモ属ではありますが
日本原産ではないという説もあり
染色体の数も異なるそうです。

 

 

ヤマノイモの花のアップ(写真/「さらさらきらきら」)

 

 

 

皮に「薯蕷」を入れるのが薯蕷饅頭

薯蕷饅頭を作るに際して、京都地方では
「つくね芋」、中部地方では「伊勢芋」、
関東では「大和芋」などとというように
それぞれの土地でとれるものが使われています。

 

これらのお芋をすりおろして上新粉、砂糖を練り
合わせた皮であんこを包み、蒸したものが薯蕷饅頭。

 

薯蕷(じょうよ)は蒸すと膨らむ性質を持っています
ので、蒸しあがったお饅頭の皮は、ふわふわとした
優しさとともにしっとりとしたキメの細かい
上質な食感になるのが特徴です。

 

 

ヤマトイモ

 

 

 

「山芋(しょよ)」→「じょうよ」

「薯蕷(じょうよ)」については
和食用語集では次のように説明しています。

 

「山芋(ヤマノイモ)を「しょよ」といい、
これが転じて*「じょうよ」となった。
すりおろした山芋を用いて作る料理に
『薯蕷』の名をつける。

 

料理で最も一般的なのは白身魚の『薯蕷蒸し』
であり、和菓子の『薯蕷饅頭』も
よく知られるところ。」  (「手前板前」

 

 

 

「白身魚の薯蕷蒸し」

薯蕷(じょうよ)を使った「白身魚の薯蕷蒸し」
とは、昆布を敷いた蒸し鉢に、薄塩を振った
白身魚の切り身を乗せて鉢ごと蒸したお料理。

 

6〜7分火が通った時点でトロロ(卵白を
加えても可)をかけ、完全に蒸しあがった
ところで、銀あんをかけて頂くというものです。

 

 

金目鯛の薯蕷蒸し(写真/箱根「知客茶家」)

 

 

紅葉の型に抜いたニンジンやギンナン、シメジなどが
乗っていてちょっとわかりづらいですが、全体に
白っぽく見えるのがすりおろした山芋(薯蕷)です。

 

こちらは卵白はなしのようですが
下に敷いてるある昆布が見えますね。
昆布と薯蕷の間に金目鯛があります。

 

 

 

職人の技の見せどころ

このふわふわを皮に使用しているのが薯蕷饅頭です。
これを作るのは高度な技を必要とするため、薯蕷饅頭
を見るとそのお店の職人の技術がわかるといわれるほど。

 

粘りの強いすりおろした薯蕷と、粉を混ぜ合わ
せる生地作りは、空気を抱かせるように混ぜて
蒸した時に破れる寸前まで、ふっくらと
膨らむように調整するのが難しいそうです

 

その日の薯蕷の状態と、気温や湿度といった
毎回異なる条件の中で、最善の生地を作り出す
見極めは長年の勘と腕がなくては叶わないこと。

 

 

一口薯蕷饅頭「塩瀬総本家」

 

 

 

「薯蕷饅頭」? 「上用饅頭」?

ところで私は「薯蕷饅頭」の読み方が気に
なるのですが、今まで見てきた限りでは
「薯蕷」は「じょうよう」ではなく、
「じょう」と読む方が自然なように思われます。

 

「薯蕷饅頭」を「上用饅頭」とも書くように
なったことから、「じょうよう」とも
読むようになったのでしょうか?

 

いくつかの和菓子屋さんで、このお饅頭を
どちらの字で表記し、何と呼んでいるか調べてみました。

 

 

 

 

 

和菓子屋さんでは?

   所在地・店名      表記   読み方
  _______________________

(1) 東京都港区赤坂「青野」  上用 (振り仮名なし)

(2)   〃  赤坂「虎屋」  薯蕷   じょうよ

(3) 東京都新宿区「
  五十鈴(いすゞ)        薯蕷   じょうよ

(4) 埼玉県戸田市
  「季乃杜 」(ときのもり)  薯蕷   じょうよ

(5) 福島県会津若松市
 「やまでら茶屋」        薯蕷   じょうよ

(6) 静岡県浜松市「梅月」     上用   じょうよう

(7) 岐阜県岐阜市
 「おきなや総本店」      上用  (振り仮名なし)

(8) 岐阜県中津川市
 「くり屋南陽軒」        薯蕷   じょうよ

(9) 石川県金沢市「森八」     薯蕷   じょうよ

(10) 京都府京都市
 「鶴屋吉信」          薯蕷   じょうよ

(11) 京都府京都市
 「京華堂利保」         薯蕷  (振り仮名なし)

(12) 京都府京都市「末富」     薯蕷  じょうよ

(13) 京都府京都市
 「塩治軒」(しおじけん)    薯蕷  じょうよう

(14) 滋賀県近江八幡市
 「たねや」           薯蕷  じょうよ

(15) 山口県山口市
「茶蔵庵」(さくらあん)     薯蕷  じょうよ

(16) 福岡県太宰府市「梅園」    薯蕷  じょうよ

(17) 北九州市小倉北区
 「湖月堂」           薯蕷  じょうよう

 

 

 

 

 

「薯蕷」と「じょうよ」が優勢?

というような感じでした。
わずか20足らずという少ないものですので
これだけでは何ともいえませんが「薯蕷饅頭
(じょうよまんじゅう)」が一番多いですね。

 

(6)の「梅月」と、(7)の「おきなや総本店」
は、「上用」と表記して、読み方は(6)が
「じょうよう」で、(7)は振り仮名の
記載がなかったのでわかりません。

 

ただここには載せませんでしたが、「上用」と書いた
場合は「じょうよう」と読ませることが多いようです。

 

 

こちらも「薯蕷饅頭」だそうです。京都「京華堂利保」
「松茸」(左)と「京鏑」(右)(写真/「婦人画報.com」)

 

 

ですが(13)の「塩自軒」ように、「薯蕷」と
書いても「じょうよう」と読ませるお店も
ありますので、これは色々のよう。

 

こうして見てみますと地域性もあまり関係
がないようですしあくまでも、それぞれの
お店の好みなのかもしれません。

 

ただ興味深く思ったのは、「コトバンク」
「英語例文Weblio」「日本の食べ物用語辞典」
という辞典系(?)のサイトが共に「上用饅頭
(じょうようまんじゅう)」を使っていたこと。

 

 

 

 

また「漢字書き方・筆順調べ無料辞典」では
筆順を示す漢字として表示しているのは「薯蕷饅頭」
ですが、読み方はひらがな、かたかな、ローマ字
の全てで、「じょうよう」と読んでいます。

 

これからの時代は書くのも読むこともできない
「薯蕷」という小難しい字は使わず、こちらで統一
していこうではないかということなのでしょうか?

 

私は「薯蕷饅頭」の字は残って欲しいなぁ、
「薯蕷」は書けないけど。

 

本当は塩瀬総本店のことで、もっと書きたい
ことがあったのですが、長くなってしまい
ましたので、次回にします、また見てね。

 

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