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「氏家法雄 @ujikenorio」2015年6月7日のツイート
2年ほど前の6月7日に、氏家さんという方が
このようなツイートをしていらっしゃいました。
「昭和17年の夏、役場から突然
『猫を供出せよ』とのお達し…
『アッツ島を守っとる兵隊さんの
コートの裏毛になるんじゃ』
『女の気持ち:私の猫』毎日新聞2012年8月3日付。
*タバコ吸いにリビング横切ったらタマが起きた。
*俺は絶対いややで。」
毎日新聞に掲載されていた「私の猫」と題する
戦時中にネコを供出させらるという経験をなさった方
の投稿を、お読みになった氏家さんが呟いた言葉です。
「おれは絶対いややで」。
兵隊さんのコートの裏毛にするためにタマを
供出するなんて絶対に、絶対に「いややで」
と思われたのでしょう。
このツイートに添えられていたのが、このネコの写真。
そう思ってみるせいなのかもしれませんが、タマちゃん、
単に可愛いというだけではなく、いかにも何かを
言いたげなちょっと戸惑ったような表情にも見えます。
「毎日新聞」2012年8月3日の記事
氏家さんのツイートにタマちゃんの写真とともに
添えられていた毎日新聞の記事「私の猫」はこちらです。
* 私の猫
「昭和17(1942)年の夏、岡山に住んでいた。
*役場から突然『猫を供出せよ』とのお達しがあった。
*うちの飼い猫は、私が物心ついた頃から我が家にいた。
*名前はタマという。
*学校から帰り、『タマ』と呼ぶと、『ニヤッ』と
*答えるだけで、いつもかまどのそばで丸くなり
*寝ている老いた猫だった。
*「猫をどねーするん?」。
*役場の人に尋ねると、
*『アッツ島を守っとる兵隊さんのコートの
*裏毛になるんじゃ。
*アッツ島は寒うてのう。零下40度にもなるんじゃ。
*お国の役に立つんじゃ、めでたい』と言った。
*そして次の日の昼までに役場に連れてくるように
*指示して、帰った。
*私は母に言った。
*『山に隠そうや。お墓の裏なら、誰にも
*見つからんで……』。
*しかし、母は首を横に振った。
*『そねーなことをして見つかったら大事じゃ。
*憲兵に連れて行かれる。軍のお達しじゃ、
*聞かないけん』と言い返してきた。
*私は泣きながら、近所の神社へ走った。
*神社には大きな杉が6、7本あり、南側は川だった。
*そこはどこからも見えないので、大声で泣いた。
*『タマは殺されるんじゃ。
*毛皮にされるんじゃ。可哀そうじゃ』。
*升で量りたいほど涙が出た。
*顔が腫れていた。
*夕方、家に帰ると、タマはもういなくなっていた。
*私のいない間に父が連れて行ったようだった。
*アッツ島で日本軍は玉砕している。
*私の猫はどうなったのだろう。
*夏休みの時期になると思い出す。
* 大阪府八尾市 主婦 79歳」
私の主治医の体験
何度見ても悲しすぎる毎日新聞の記事を読んで
私は同じような話を思い出しました。
かなり前に歯医者さんで聞いた話です。
こちらはネコではなくシェパードの
「ミラー」というイヌでした。
この話をしてくれた歯医者さんの父親も
歯科医で、ミラーという名前は診察の際、口の中に
入れて歯をみる鏡「ミラー」からつけたそう。
写真は本文とは関係ありません
草むらで保護されたイヌの
シーズー犬は子猫を守ってました
当時、5歳になったかならないかという年頃の
私の主治医は、毎日新聞に投稿していた女性より
少し年下と思われますが、今でもミラーのことが
心に大きな傷として残っているようです。
私自身はイヌやネコの供出の話は、その時に
初めて知って憤りや悲しみは感じましたが
それ以前に不思議な気もしました。
お寺の鐘などの金属類を供出させた話は
前に聞いたことがあります。
でもコートの裏毛のために、ペットのネコやイヌの
毛が必要なんて一瞬、信じられなかったのです。
まさか、そんなこと……、と。
「 NHK 北海道 NEWS WEB」2017年8月11日
ですが残念ながらこの信じがたい酷いことは事実です。
昨日の「NHK NEWS WEB」にこのような
記事がありました。
「戦地に姿を変え送られた犬やネコ」(北海道 NEWS WEB)
この記事によりますと、イヌやネコの毛をコートの裏毛に
使用する取り組みは、北海道が全国に先駆けておこなった
ものでその後、全国に広がっていったということです。
北海道内では、1944(昭和19)年から人々に
供出を呼びかけ、終戦までにおよそ7万匹の
イヌやネコが処分されました。
この数は、あくまでも北海道内のみでの数字です。
そうして供出されたイヌやネコが、次にどのように
なるかを目撃した人の動画もつけられていました。
加藤光則さん、83歳の体験です。
当時10歳だった加藤さんは、後志の共和町に住んで
いましたが、学校からの帰り道で、皮を剥ぎ取られた
イヌやネコが積み上げられているのを目撃します。
「イヌやネコが雪の中に毛皮になって、丸裸になった
*やつは片側にずっと分けて積み上げてある」という
加藤さんの次の言葉が最初、私には理解できませんでした。
「生きたまま血だらけで逃げたのは今でも目に
焼き付いている」という言葉なのですが、何度か
その部分を再生し、また文章を読み返すことでやっと
私は理解することができたのです。
このむごすぎる文章の意味が。
「毎日の生活の家庭の中に直接戦争が入り込んでくるんだと。
*鉄砲の弾が飛んでくるとか爆弾が落ちるという形で入って
*くるんじゃないんです」と語る加藤さん。
この動画には、供出の経緯について調べている
地域史研究者の西田秀子さんも出ています。
「撲殺されて毛皮にされて兵隊さんの防寒着になったり、
*帽子になったりして戦場に姿を変えていくわけなん
*ですけど、それが実際のリアルな戦争の姿ですよね。
*その状況っていうのは想像してみなきゃならない。
*そのために、体験者の話を実際に聞き取ってみなさんに
*伝えていくことが私の仕事じゃないかと思っています」
と西田さんは話していました。
日常生活に戦争が入り込んでくることの恐ろしさ、
実際のリアルな戦争のむごたらしさ……。
それを私たちが実際に体験しないようにするには
何をしたらよいかを考える段階も過ぎて、今は
もう実際に行動する時期が来ているのかもしれません。