「あぷりのお茶会 赤坂・麻布・六本木」へようこそ!
20年前の大雪の日に出会ったポッポちゃん
今年の2月、関東および甲信越は2度の
大雪に見舞われましたが、前の家にいる時にも
かなりの大雪が降ったことがありました。
いつだったかははっきり覚えていないのですが
「あぷり」の前のうさぎの「ももち」が
いる時のことです。
その当時、ももちが主にいた部屋は和室でした
のでベランダへは、ガラス戸の他に障子があって
その部屋からは直接外は見えませんでした。
昼間から雪が降り出した日のことです。
昼間の雪というのに、すぐはとけず
しんしんとした寒さ共に、積もっていきました。
そろそろ雪が積もり始めた頃、私は
ももちのいる部屋からベランダに出て
用を済ませるとすぐ家に入りました。
「あそこにハトがいるよ!」
するとその時に、ももちが外の一点を
じっと見つめているのに気づきました。
何かと思ってももちの見ている方を見ますと……。
うちの向かい側のマンションの
ベランダには網が張ってあったのですが
そこにハトが引っかかっていました。
最初はハトだとは、わかりませんでした。
ベランダの上部から下まで下げている網に
何かがついているのはわかったのですが。
そのぶら下がっているものが、時々
羽をバタバタ、バタバタと動かしている
ことで、やっとハトだとわかりました。
何時間も逆さ刷り状態のハト
そのうち、住人が気づくのでは?、
と私は注意をして見ていましたが
一向にその様子はありません。
その間も、やむ様子も見せずに雪は
降り続き数時間がたっていましたので
私はその家に行ってみました。
あいにく留守でしたので、扉に張り紙をしました。
しかしその後も、ハトは逆さ吊りの状態
のまま、あたりは薄暗くなって行きます。
私はもう一度、その家を訪ねると男の人が
出てきたので事情を説明すると、彼は
返事もせずにベランダに向かいました。
私はバスタオルを持って、急いで
ベランダの下に行きました。
するとその男性は、終始無言で網を切り
ハトを網から外したかと思うと、そのまま
バサッと下へ投げ落としたのです。
私は驚きました。
幸いに降り積もった雪がかなりありましたので
雪がクッションになってくれましたが。
初めて会ったのに信頼してくれているの?
私はハトを急いで家に連れて行き
ストーブの側に置きました。
段ボール箱に、今は使っていない
オーブンの網のようなものを正面に
つけた、即席の鳥かごの中に入れて。
数時間も雪の中を逆さ吊りになっていた
ハトは、疲れきっていたに違いありません。
しばらくすると、すわってウトウトし始めました。
私は、ハトが落ち着いたのを見届けてから
それでは今度は私がお風呂に入って体を
温めようと思って立ち上がりますと……。
ウトウトと半分眠っていた
ハトがキッと立ち上がります。
何?、と思って私がそばに行くと
ハトはまた、ウトウトとしだしました。
なんとそのハトは、私がそばに
いないと不安だったようです。
結局、かなりの時間を私はハトの
そばで過ごすことになりました。
飛べないハト
そして数日がたったある日、私が即席鳥かごの
前の部分を開けると、リビングにいたハトは
飛び立ってベランダの手すりまで飛んで行きました。
かろうじて部屋からベランダの手すりまでは
飛ぶことはできましたが、それ以上は無理でした。
片方の羽が折れていたようです。
それは本人もわかっていて、それ
以上は飛ぼうとはしませんでした。
私はそばに行ってハトを捕まえよう
と思ったのですがそうすると、ハトは
こわがって飛び立とうとして、結局
飛べずに地面に落ちてしまうかもしれません。
その頃にはもう、クッションになって
くれる雪は残っていませんでした。
私はベランダに行って、ハトを捕まえる
前に、一生懸命ハトに言い聞かせました。
「羽が折れてまだ、飛べないのだから
そこから飛んじゃダメだよ」と。
どのくらいそのまま説得していたのかは
覚えていないのですが、私がハトを捕まえた
時には、逃げようとはしませんでした。
音楽の流れるきれいな動物病院
ポッポちゃんの羽に傷があることがわかった
ので、うちから歩いて4..5分の場所にあるペット
の病院に私はハトを連れて行くことにしました。
その頃は、ハトはポッポちゃんと
呼ばれるようになっていました。
ももちはその時はまだ、病院に行ったことが
なかったのですが、もし具合が悪くなったら
その病院に行くつもりでいた病院です。
十年以上前から見ていたペットの病院に
ももちを連れて行く一足先に、ポッポちゃん
を連れて、初めて入ることになりました。
その病院は、外から見ているよりも
はるかにきれいな病院でした。
建物の中に一歩入ると、バロック音楽だったか
モーツァルトだったか忘れてしまいましたが
音楽が静かに流れていました。
ボリュームも含めて、それはまるで
ホテルの朝食時のレストランにでも
いうような錯覚を覚えました。
私が見た動物病院、というだけではなく
人間の病院を含めても、これほど
きれいな病院は見たことがありません。
そしてきれいな待合室で名前を呼ばれた後、
きれいな診察室で、院長先生ではないと思われる
若い二人の先生がポッポちゃんを診てくれました。
グルグル巻きにされたポッポちゃん
飲ませる薬やつける薬はなかったように
記憶しているのですが、ポッポちゃんは
羽を含めて、グルグル巻きにされました。
グルグル巻きをするのは、折れた羽を固定するために
当然なのでしょうが、そのグルグル巻きのために
ポッポちゃんは足で立つことができなくなりました。
包帯のグルグル巻きにされたポッポちゃんは
ころがる形になってしまったのです。
「次は一週間後にきてください」
と告げられて病院を出ました。
このグルグル巻き状態では、ポッポちゃんは御飯
を食べるのも難しいのではないかと思われました。
そこで私は、ポッポちゃんが寄りかかる
ことのできる何かを探しに、小さい頃のももち
のいたペットショップに行ってみることに。
するといつものお兄さんが、ポッポちゃんの
ために適当なものを見繕ってくれました。
私は彼に、鳥の専門の病院という
のはあるのでしょうかと聞いてみると
彼は「小鳥の病院ならば知ってます」と。
ハトは県の所有物
私は家に帰って、その小鳥の病院に電話をして
みると、そこで驚くべきことを聞かされました。
善意とはいえ、県の所有物であるハトを捕まえて
家に置いているのは法律に反することで、結果的に
私は県のものを盗んでいることになるというのです。
そして、そのような傷ついた県の所有物で
ある鳥などは、県の指定の獣医師のところに
連れて行かなければいけないということと、
その獣医師の連絡先を教えてくれたのです。
ポッポちゃんはその後もうちで、不自由な
格好ながらも元気に過ごしていました。
そして一週間ほどした時のことです。
あのきれいなペットの病院から電話がありました。
私が、小鳥の病院で教えてもらったことを告げ
ますと、若い医師は声を荒げて言ったのです。
「誰がそんなことを言ったのですか!」と。
彼はそのような決まりを、当然のことながら
知っていて、通院をさせようとしていたのです。
もし万が一、彼が本当にそれを知らない
のであったなら、プロとして失格です。
お別れだね……
私は指定の獣医師に連絡を取り、
ポッポちゃんを連れて行くことになりました。
その時は、手のついたカゴにポッポちゃんが
倒れないようにバスタオルを敷いて置き、その
カゴ全体を大きな紙袋に入れて抱いていきました。
その獣医さんは、うちから電車で10分ほど
乗った後に、バスで少し行った場所にあります。
その電車でもバスの中でも、ポッポちゃんは
袋の中から私の顔をずっと見ていました。
少しでも私が見えなくなると、初めて
うちに連れてきた時のように、慌ただしく
動き始めて私を捜すのです。
私は出来るだけポッポちゃんに見えるように
紙袋を抱えながら声をかけ続けていました。
公共の乗物の中ですから当然、他の人も
いたのですが私は泣いていました。
私の手の届かない所へ
病院のそばはまだかなり雪が残っています。
初めての場所で、戸惑いながら歩いていると先生
が寒い中、外に出て私たちを待っていてくれました。
先生は、すぐポッポちゃんを私の手から
受け取ると、隣の部屋に置いてきたようです。
そして次のように告げたのです。
「あのハトが元気になったか否かの質問
には答えないきまりになっています」と。
あっけなく、私の手から
ポッポちゃんは離れてしまいました。
そしてその先生はその後、ももちを最後
まで診てくだることになったのです。
私はうちのそばの、駅にハトがたくさんいる場所を
通る時など「この中に、ポッポちゃんがいるかな?」
と思ったりもしましたが、それ以降、ポッポちゃん
に二度と会うことはありませんでした。
「ハトの恩返し」の意味はね……
ここまでお話しして、どうしてこれが
「ハトの恩返しなの?」と思われるかもしれませんね。
「恩返し」といえば、「鶴の恩返し」
「カメの恩返し」、「カッパの恩返し」
などという話もありました。
うさぎは、もともと目はあまり良くないそうです。
そのももちが雪の中、かすかに羽を
動かしているハトを見つけました。
ポッポちゃんを連れて行った病院は、
ポッポちゃんが行かなければ
ももちが通うはずの病院でした。
ポッポちゃんはももちに助けてもらった
ので、ももちのためにすばらしい
獣医さんを教えてくれたのです。
それがポッポちゃんの「ハトの恩返し」。
今でも私はそう思っています。
そしてあのあと、病院で元気になれたとしても
ハトの寿命ですので当然のことながら
もう終わっていることでしょう。
雪が降るたびに、ポッポちゃんを思い出します。
ポッポちゃんの恩返しを書いたこのブログを今日
アップしたのは、大雪が降ったことに関連する
事柄なので、あまり暖かかくならないうちに
と思って今日にしました。
ポッポちゃんのおかげで出会えた先生に
ももちは最後まで診ていただきました
他の記事との都合で、たまたま今日になった
のですが今日は、母の祥月命日です。
お寺に行ったら、ポッポちゃんの
お塔婆もお願いしましょうね。