名前も知らない鳥

「あぷりのお茶会 赤坂・麻布・六本木」へようこそ!

 

 

 

鳥のグルグル舞

昨日、用事があって高速バスに乗り
東京から少し離れた場所に行きました。

 

バスを降りてすぐ、スズメより少し
大きな鳥が、小さな茶色い虫を
追いかけているのが目に入りました。

 

最初はわからなかったものの地上1メートル
程の低さで、鳥がバタバタと飛び回るという
初めてのことに驚き、目を向けたのです。

 

しかも飛び方が、普通に空を飛んでいる
ようなスマートな飛翔ではなく、この家紋の
スズメのように羽をいっぱいに広げ、円形に
近い形になったまま虫を追いかけていたのです。

 

 

 

 

私は初めて見る鳥の姿に、かなり驚きました。
鳥って、あんな風にも飛べるのだなぁと。

 

その鳥は虫を捕まえられたのか、否かは
わかりませんが、私から2メートル位しか離れて
いない場所で起きたことにびっくりするばかり。

 

と長々書きましたが、鳥が虫を追いかけて
数字の「6」の字を書くように飛んでいた
のは、実際にはほんの数秒間のことです。

 

 

 

 

 

同じこの場所で

約2年前、退院して2か月少し過ぎた頃
だったでしょうか、この場所で私は
一人の女性に会いました。

 

彼女の住まいがうちの近くだったこと
にも驚きましたが、二人の境遇が
また驚くほど似ていたことにもびっくり。

 

二人の人間が出会って、きょうだいが2人
などというよくあることではなく、国民の
1%位と思われることが複数重なる確率
って、どのくらいあるのかなぁ?

 

 

 

 

大きく異なるのは、私は25歳で死別するまで、
生んでくれた母親と暮らしましたが、彼女は
生母とは会ったこともなく名前も知らないこと。
それと、彼女は大金持ちで、私は貧しいことも。

 

ある日の電話で、以前から彼女に頼まれて
いたカウンセリングをしてほしいという願い
を、また更に強く頼まれたことがありました。

 

私は退院したばかりということもあって
体調にも自信がなく、今考えますと心遣い
に欠ける言い方で断ってしまったのです。

 

 

 

 

 

それ以降、途絶えた電話

彼女はかなり頻繁に電話をくれていたので
すがそれ以降、全く電話がなくなりました。

 

数ヶ月後、心配になった私が電話をかけると
「現在使われていません」とのアナウンス。
電話番号を変えたのかな?、と思いました。

 

あるいは、あんなに頼まれたのに私が
カウンセリングを受けなかったことを
怒っているのかもしれません。

 

でも、彼女が連絡をしたいと思えば
彼女は私の番号は知っていますので
彼女の意思に任せることにしました。

 

 

 

 

しかし、数ヶ月経っても半年
経っても、電話はありません。

 

こんなにも長い間、彼女が連絡を
とらないことは考えられないことです。
私は、少々不安な気持ちが
横切るようにもなっていました。

 

そして年も越して、今年の半ばのことです。
彼女が1年半位前に、既に
亡くなったことを知らされました。

 

ということは、私に電話をくれた直後
に、亡くなっていたことになります。

 

 

 

 

 

お店の人が知っているかも

教えてくれた方は、彼女とはあまり親しくは
なく、彼女と私が出会った場所にあるお店の人
ならば、もう少し知っているかもしれない
ということでした。

 

私は教えられたお店を訪ね、買うことができる
ものを選んでからレジに行き、お客さんが他に
いなかったので彼女のことを切り出しました。

 

そのお店の女性は、少々複雑な表情を見せ
ながらも、いくつかのことを話してくれました。

 

その言葉の端々には、彼女と父親に対して
決して好意とはいえないニュアンスが含まれて
いたことには気づかないふりをして反応をしな
かったのが、私が彼女にできた唯一のこと。

 

社会的に好ましくないことへの批判と、一方で
お金持ちであることへの嫉妬、トゲが含まれている
ような雰囲気の中で彼女は生きていたのでしょう。

 

 

 

 

 

「〇〇ちゃんなの?」

私はお店を後にして目的地に向かいました。
その途中、彼女が大好きだった、そして一月
に何度も訪れていた建物の前に来ました。

 

すると、高い声で鳥が鳴いています。
通り過ぎた彼女の好きだった場所の庭木に
いたようで、私は後ろを振り返りました。

 

先ほどのグルグル舞をしていた鳥でした。
といっても同一の鳥、という意味では
なくて、何の種類かわかりませんが
同じ種の鳥という意味ですが。

 

晴れやかに、楽しげにさえずっています。
私は思わず、「〇〇ちゃんなの?」と
ふざけて聞いてみました。

 

彼女は、この場所が大好きでしたから
彼女の魂というか思いが、この場所にいる
ことはごく当たり前のことに思われたのです。

 

 

 

 

 

道先案内

しばらくして私は、また
正面を向いて歩き出しました。

 

するとその鳥は止まっていた木から飛び立ち
私が歩いている右側から私を追いこすよう
に道を横切って飛び、今度は少し先にある
左側の建物の庭木に止まったのです。

 

私は、道先案内のように私の前を
飛んでいく鳥の行動に、少々驚きました。

 

私が歩みを進めるにつれて鳥は、今度は道の
左側の庭木から、先ほどとは反対に、少し先に
ある右側の建物の庭木に飛んで行ったのです。

 

ですが、鳥の道先案内はそこまででした。
私は、その鳥が本当に彼女自身か、あるいは
彼女の思いのような気がしてきました。

 

 

 

 

 

メッセージを鳥に託して

彼女の死にショックを受けている私に
「心配しないでね、今、私は幸せだから!」
と伝えてくれいるような気がしてなりません。

 

幸せであってほしい、という願望からの
ものではなく、あのように生きた彼女は
今、幸せに違いありませんでした。

 

この世の外に飛び出した彼女には
先ほどのようなトゲを含んだ空気の中を
飛び続ける必要はないのです。

 

私には、一人で暮らしの友人が何人かいます。
一人で暮らしていても家族がいれば、また違い
ますが、家族がいない場合は、友達にもしもの
ことがあっても、私に連絡はきませんし、
私が死んでも友達に連絡はいきません。

 

〇〇ちゃんは、大好きだった場所に飛んできて
これ以上ないほど、幸せで安らいだ気持ちで
いることを伝えてくれたような気がしました。

 

 

 

 

〇〇ちゃん、カウンセリング受けて
あげなくて、本当にごめんね。
でも今は、もうそんな必要がない
ほど幸せだってわかって嬉しい。

 

これからは一生懸命、カウンセリングするよ、
〇〇ちゃんにしてあげたかったように……。

 

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