香水の誕生

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煙の向こうでは

「香水(perfume)」という言葉
は、「煙の向こうに(per fumus)」
からきている言葉だそうです。

 

「香り」にあたる外国語は、

  英語    perfume
 フランス語  parfum
 ドイツ語   das Parfum
 イタリア語  profumo

 

などがありますが、いずれもラテン語
の「Per Fume(through smoke)に
由来します。

 

 

 

 

古代ローマ時代、寺院の祭壇
では、炊かれていたお香の煙が
薫(くゆ)っていました。

 

お香を作る工房は、紀元前1850年
にはすでに存在していたようです。

 

この工房が地震によって破壊された
という不幸は、結果的に香水を
まもる働きもしました。

 

香水の瓶や材料の入った壺、使用
する蒸留機に至るまで、地震のために
地中に埋まってしまったからです。

 

それらが発掘されたのは、なんと最近の
ことで、それらを分析することにより
当時の香りの再現が可能になりました。

 

 

 

 

 

最古の調香師  タップティ

名前が判明している最古の調香師で
あり科学者は、メソポタミアの
タップティという女性です。

 

紀元前1200年ごろの楔形文字で
書かれた粘土板には、彼女が香水作り
をしている様子描かれています。

 

素材の精製や濾過技術などは記録
されているようですが、彼女自身に
ついて記されていないのは残念な限り。

 

 

 

 

 

古代エジプトで最も人気のあった「キフィ」

香水の歴史は、おそらく古代エジプトまで
遡るというのが多くの歴史家の見方ですが
香りの利用は宗教儀式に限ったものでは
なかったようです。

 

気温の高いエジプトにおいて、体を清潔
な香りで満たすことが望まれ、良い香りは
健康と生命力の証とも考えられていました。

 

当時、エジプトで最も人気の
あった香水は「キフィ」。

 

 

 

 

キフィのレシピは古文書および
寺院の壁にも掘られていたことに
より、明らかになっています。

 

ハチミツ、ワイン、レーズン、ミルラ、
ジュニバーベーリー、松ヤニ、イグサ、
シナモン、ミント、ヘナ……。

 

これらの材料を混ぜ合わせて
丸くし、それを熱した炭の上に
乗せて香りを出しました。

 

 

 

 

 

香料をアルコールに溶かした香水の誕生

アルコールに複数の香料を溶かした
香水が作られるようになったのは
10世紀頃のことでした。

 

高度な科学技術が生まれたイスラム
黄金時代に、十字軍の侵略とともに
ヨーロッパに伝えられ、蒸留技術は
ヨーロッパでさらに進化します。

 

ハーブを酒精と一緒に蒸留し、薬効の
あるラベンダー水や、ハンガリー
ウォーターの名前でお馴染みのローズ
マリー水が作られるようになります。

 

 

イタリア・フィレンツェのメディチ家から
フランス・アンリ2世に嫁いだ
カトリーヌ・ド・メディシス

 

 

 

イタリアからフランスへ

ルネサンス期のイタリアに
おいて、蒸留技術および香水文化
は、一層の深まりを見せます。

 

16世紀末、カトリーヌ・ド・メディシスが
イタリア・フィレンツェのメディチ家から
フランス・アンリ2世にお輿入れの際、
これらを持って行ったといわれています。

 

そういえば、お菓子のマカロン
フロランタンも、カトリーヌ・ド・メディシス
がフランスに持って行ったのでしたね。

 

当初は王侯貴族のものであった香水
は市民革命を経て、次第に人々にも
手に入れることができるように
なって行ったのです。

 

 

 

 

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進む香り効果の科学的解明 ニオイ分子は脳内因子の発現を 変化させる

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香りによって副交感神経系が優位に

コーヒーやワインなどの香りを嗅ぐ
ことは、安らぎ効果をもつ  α波 を
増加させることがわかっています。

 

アルファー波(α波 8〜13Hz)は
目をつぶって安静な状態で、リラッ
クスしている時にあらわれる脳波。

 

コーヒーやワインのニオイが
作用して、副交感神経系が優位
になったということです。

 

 

 

 

 

「交感神経系」

ニオイを嗅ぐことにより
自律神経系の「交感神経系」と
「副交感神経系」がどちらかに
傾くことがあります。

 

交感神経系が強まっている時と
いうのは、ストレスや危機に直面
したりして緊張している状態です。

 

瞳孔が大きくなり、血圧は上がり
心拍数や血糖値が増加。

 

血流は、活動に必要な筋肉に増え
消費エネルギーも増えている一方
消化運動の抑制を引き起こします。

 

 

 

 

 

「副交感神経系」

それに対して副交感神経系が強まって
いるのはリラックスしている安静時。

 

心拍数、呼吸数、血流、血圧の低下
を引き起こしたり、血流は胃や腸
などの消化器官に増加しています。

 

健康的な生活のためには
交感神経系と副交感神経系
両者のバランスが大切です。

 

 

「イランイラン」

 

 

 

交感神経を優位にするニオイが多い

レモン、フェンネル、シオネール、
エストラゴン、イランイラン、
ペパーミント、ゼラニウムエジプト、
レモングラス、コリアンダー、
ローズマリーと、
多くの香りは交感神経を優位にします。

 

それに対し、ラベンダー、
カモマイルは、副交感神経系を
優位にするということです。

 

香り、と聞くと何となく「安らぎ
効果で、副交感神経系を優位にする」
と考えがちです。

 

しかし実際は、交感神経系を優位
にするものが多い、という実験結果
が出ているのも興味深いところです。

 

 

 

 

 

ニオイ情報が免疫能に影響

ストレスや緊張が続いて、交感神経系
が亢進し続けると、免疫系が衰え
病気になりがちだと考えられています。

 

ニオイを嗅ぐことは、中枢神経系
を刺激、あるいはリラックスさせ
る効果をもちます。

 

ニオイ情報が、内分泌系を介して
ストレス状態に対応したり、免疫能
に影響を与えたりするのです。

 

 

 

 

 

ストレスが負荷されると

視床下部から
コルチコトロピン放出因子の分泌が促進され

       ↓

下垂体前葉から副腎皮質ホルモン、
副腎皮質からはグルココルチコイドが分泌

       ↓

最終的に免疫能の低下が引き起こされます

 

 

 

 

 

海馬が萎縮し  うつ病に

一方、リラックスした状態では、
グルココルチコイドの産生・分泌
は低下し、免疫能が増加されます

 

ストレスにより分泌が促進される
グルココルチコイドは、脳に作用
して海馬における神経細胞の
退行性変性を引き起こします。

 

これが高じて海馬が萎縮した
状態に至るのがうつ病です。

 

 

 

 

 

ニオイのもつ様々な効果

最近、ラベンダーのニオイが、抗うつ・
抗不安作用のあることがわかりました。

 

ストレスからうつ病発症に至る過程の
脳内変化を調べている際、ストレスに
よって生じる脳内遺伝子・蛋白質の
発現変化が、コーヒー豆のニオイにより
抑制されることもわかってきました。

 

またラベンダーやヒノキの香りが、脳内
神経栄養因子受容体(NGFR)遺伝子
の発現を増加させることがわかりました。

 

ヒノキを始め、いろいろなアロマオイル
に含まれている  α-ピネン のニオイを
嗅いだマウスの海馬では、

 

脳由来神経栄養因子(BDNF)の
遺伝子発現レベルが上昇していました。

 

 

 

 

 

ここでちょっと語句の説明

神経栄養因子」とは……

神経細胞に細胞の外から働く、
水に溶ける蛋白質物質の総称。
栄養といっても栄養素  nutrients では
なく、神経細胞に有益に働く分子、
神経に対する作用を持つものの総称。

 

 

神経細胞」とは……

人の脳に1000億個から2000億個ある。
神経細胞には、体の他の細胞とは
異なった特徴がある。

1 分裂/増殖しない
2 特徴的な形をしている
3 多様性に富んでいる
4 細胞間で情報伝達を行う

   参照/「新潟大学研究所」

 

 

 

 

脳由来神経栄養因子・BDNF」とは……

NGFに次いで見出された神経栄養因子
NGFと同様に、神経細胞の生存維持、
神経突起の伸長促進、神経伝達物質の
合成促進などの作用をする。
遺伝子組換えにより BDNFの作用しない
マウスでは、海馬長期増強の発現の減弱、
空間学習の低下が認められた。
その他、神経障害性疼痛の発症、摂食
抑制、糖代謝調節、心拍数や血圧調節
などに関わる。

アルツハイマー病、うつ病などの精神神経
疾患との関連が報告され、アルツハイマー病
患者の脳では、特に大脳皮質や海馬において
BDFNレベルが健常者よりも低く、加齢及び
アルツハイマー病における記憶低下に関与が
示唆されている。
最初は脳では見出されたが
多くの末梢組織でも産生される

       参照/「老化ゲノム300」

 

 

 

 

 

進む香りの秘密の科学的解明

NGFRやBDNFは、神経の成長・維持
に重要な役割を果たしていて、その
発現はストレスによって低下するため
神経細胞死が起きるといわれています。

 

このように、ニオイのストレス抑制
効果は、実際に脳内因子の発現を
変化させることによって発揮される
ものであることがわかってきました。

 

「何となく」のように思っていた
香りの効果、ニオイのもつ力が
科学的に解明されつつあるようです。

(参照/
東邦大学神経科学研究室・増尾好則教授)

 

 

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ニオイの変調(変調法)

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濃度の違いで別のニオイに感じられる

ニオイには、一つ一つはごくわずかな量
であっても、いくつか混ぜ合わせること
により強いにおいと感じる「相乗作用」、

 

それとは反対に、混ぜ合わせる
ことによりニオイが弱く感じられる
「相殺作用」もあります。

 

これは「感覚中和」ともいいますが
弱く感じられはしても、ニオイが
なくなったわけではなく、測定器で
計測するとニオイ物質は存在します。

 

また、同じニオイ物質であっても
濃度が異なると、全く違うニオイに
感じられることもあります。

 

 

 

 

 

少量では花の香り

排泄臭、大便臭として知られている
インドールやスカトールが有名です。

 

どこから見ても悪臭と思われるこれらが
ごく低濃度の場合は、オレンジやジャス
ミンなどの花の香りとなるのです。

 

インドール、スカトールは当然の
ことながら、人間の体内でも作られ
主に腸内で生成されています。

 

腸には様々な常在菌、大腸菌や
乳酸菌、腸球菌、ビフィズス菌、
ウェルシュ菌などが生息しています。

 

 

 

 

乳酸菌などは、ヨーグルトなどの
乳酸発酵と同じで、分解・生成物に
悪臭がするものは多くはありません。

 

しかし、ウェルシュ菌などのタンパク質
を分解する菌は、インドール、スカトール、
硫化水素などの悪臭物質を作りやすい
性質があります。

 

この臭いニオイの代表ともいうべき
インドールですが、香水に使われる天然
ジャスミン油には約2.5%含まれています。

 

濃いと「ケモノ臭」や「加齢臭」のよう
な不快なスカトールも、やはり薄いと
「爽やかな香り」に感じられます。

 

 

 

 

 

「スカンク臭」→「炒ったナッツの香り」

このように、濃度の差によってニオイの
感じ方が変化する物質は色々あります。

 

硫化水素は、高濃度では「温泉場のニオイ」
ですが、低濃度ですと「ゆで卵」のニオイ。
これは皆さんも何となく経験的
におわかりではないでしょうか?

 

また高濃度では「脂肪臭」がする
ウンデシレニックアルデヒドは
低濃度だと「バラの花の香り」が、

 

 

 

 

高濃度では「木の香り」のヨノン
(英語 ionone  イオノン)は
低濃度では「スミレの花の香り」、

 

高濃度では「スカンク臭」というフル
フリルメルカプタンは、低濃度ですと
「炒ったナッツの香り」という具合です。

 

 

 

 

 

変調(変調法)

このようにニオイ物質の混合により別の
ニオイに変わったり、ニオイのニュアンス
が変わることを「変調」といいます。

 

日常生活の中で感じる悪臭も、その大部分
は混合臭であり、変調されたニオイです。

 

最近は悪臭をニオイ物質の一つとして捉え
ここに複数の香料を混ぜ合わせることで
新しい香りとして感じるようにする
変調法が使われているようです。

 

 

 

 

 

「変調」を利用した香水作り

この変調を利用したものが、各種の
調合香料であり、その代表例が香水です。

 

フローラル調に分類されるシャネル
のNo.5は、合成香料のアルデヒド
がわずかに含まれています。

 

とても良い香りとはいえない
脂っこさを感じさせるアルデヒドが
強い拡散力と他のニオイを引き上げる
役目を果たしているといいます。

 

トップノートにこのアルデヒドが
あるために、最初に発する香りは
甘いものの、その中に大人の雰囲気を
漂わせた香りに感じられるのです。

 

アルデヒドは、シャネルのNo.5の
魅力を作り上げる重要な一翼を
担っているといえるでしょう。

 

 

 

 

秘められた真理

美しい花の芳しい香りには
わずかの「悪臭」が含まれて
いるというのも興味深いですね。

 

また、シャネルのNo.5の魅力の
立役者が、あの悪臭ともいうべき
アルデヒドだとは……。

 

単にニオイの不思議という
よりは、それ以上の美の仕組み、
深い哲理さえ感じさせます。

 

 

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