ガンの治療薬の副作用で11人に脳の機能障害、うち1人は死亡

ガンの治療薬の副作用

ガンの治療薬である「オプジーボ(ニボルマブ)」
の副作用で、ガン患者の11人に脳の機能障害が起こり、
そのうちの1人は亡くなっていたことがわかりました。
2019年5月23日の「AERA dot.」からです。

 

この脳の機能障害とは、具体的には下垂体機能障害
のことだそうです。
下垂体はさまざまなホルモン分泌を調整する臓器で、
機能異常がありますと低血圧や低血糖、免疫力の低下
を招いて命に関わることもあります。

 

オプジーボは、免疫の仕組みを利用してガンの治療
をする「免疫チェックポイント阻害薬」の一つで、
ノーベル医学生理学受賞で注目されている薬でも
あります。

 

体の中にある免疫細胞は、ガン細胞などの異物を
発見すると、それを攻撃します。
ところがガン細胞には、免疫細胞の攻撃を弱める
仕組みがあるため、免疫細胞はガン細胞への攻撃
を弱めてしまいます。

 

「免疫チェックポイント阻害剤」は、免疫細胞の
一つであるT細胞が、ガンへの攻撃を弱めることを
阻止する作用をもつため、T細胞は強力にガンを
たたくことができるというわけです。

 

 

 

ガン細胞のみならず自己の組織も攻撃

国際医療福祉大学三田病院(東京都港区)悪性リン
パ腫・血液腫瘍センター長の畠清彦医師は、
「この免疫のしくみが、副作用にも関係している。
「薬で攻撃性がたかまったT細胞は、ガン細胞
だけでなく、自己の組織も攻撃するのです」
と説明します。

 

オプジーボはこれまで、下垂体の機能低下の他、
間質性肺炎や心筋炎、糖尿病などの「自己免疫
関連副作用」が報告されていました。
それぞれ、肺の缶室という部分や心筋、膵臓
(すいぞう)などがダメージを受けることに
よって起こる副作用です。

 

オプジーボと同じタイプの「キイトルーダ
(ぺムブロリズマブブ)」でも、同じような
副作用の報告が海外であります。

 

畠医師は、
「T細胞は全身に存在しているので、どこの
臓器がダメージを受けるかわからず、『抗がん
剤=脱毛』というように、副作用を特定しに
くい。
だからこそ、治療前に心臓などの検査をして
問題がないかを確認することが大事。
治療中も定期的な血液検査が必要です」
と語ります。

 

しかしこのように副作用が起こったと
しても、早期発見だった場合は減薬や
副作用を軽減する薬などで対応も可能で
あり、治療を続行することもできると
いいます。

 

2014年に発売されたオプジーボは、現在は
悪性黒色腫や切除不能な、進行・再発の
非小細胞肺ガンなどに用いられています。
小野薬品工業(大阪市)によりますと、
年間1万7千人以上の患者に使われていて、
免疫関連副作用で、今回の件以外にも
2人が亡くなっているということです。
厚生労働省の支持を受けた小野薬品は、
薬の添付文書に重大な副作用として追記
しました。

 

 

 

専門外の医師が不適切に使うケースも

しかし問題は、それにとどまりません。
日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科の
勝俣範之教授は、
「適応外のガンに対し、専門外の医師が
オプジーボを不適切に使っているケース
があり、死者が出ている」
と指摘します。

 

都内にあるクリニックで、オプジーボと
別の抗ガン剤を併用した大腸ガン患者が、
重症筋無力症で死亡していたのです。
オプジーボは大腸ガンの適応外で、こうした
事例は氷山の一角だといいます。

 

「オブジーボに限らず、ガン治療薬は非常に
強い薬。
専門家が診ても死亡率は1〜2%ほどある。
だからこそ慎重に使うべきだ。
少なくとも患者さんはガン治療の専門医の
もとで治療を受けてほしい」
と勝俣教授は語っています。

 

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