ほとんど報道されない細菌
世界中に広がっていながら報道されることの
ほとんどない細菌(感染した人の約半数が
90日以内に死亡する)について、2019年
4月6日の「The New York Times」から一部を
御紹介します。
「カンジダ・アウリス(Candida auris)」と
呼ばれる真菌は、免疫システムが弱まっている
人々を餌として世界中に広がっています。
過去5年間で、ベネズエラで新生児施設を襲い、
スペインの病院、イギリスの医療センターの集中
治療室を閉鎖させ、インドパキスタン、南アフリカ
に定着しました。
ニューヨーク、ニュージャージー、およびイリノイ
にも到達し、連邦疾病管理予防センター(CDC)に
それを「緊急の脅威」と考えられる細菌のリスト
に加えられました。
抗生物質、農薬
何十年もの間、公衆衛生の専門家は、抗生物質
過剰使用は薬の有効性を低下させていると警告
しています。
抗生物質と抗真菌剤は、どちらも人々の感染に
対抗するのに不可欠ですが、農場の動物の病気
を防ぐためにも抗生物質は広く使われています。
何人かの科学者は、作物への殺菌剤の使用が
人間に感染する薬剤耐性菌の急増に寄与して
いるという証拠を示しています。
発生した病院名は非開示
カンジダ・アウリスの問題は、大きくなりつつ
ありますが、それが人々にはほとんど理解され
ていないのが現状です。
耐性感染の存在そのものが、しばしば秘密裏に
隠されているからです。
細菌や真菌の場合も同様に、病院や地方自治体
は、感染の中心とみなされることを恐れて、
発生を開示することに消極的です。
州との合意のもとでCDCでさえ、発生に関与し
ている病院の場所、または名前を公表すること
は許可されていません。
感染した人の約半数は90日以内に死亡
その間ずっと、細菌は容易に拡散しています。
カンジダ・アウリスは、耐性を発達させた何十
もの危険なバクテリアと菌類のうちの1つです。
コネチカット州の免疫学者である Lynn Sosa
博士は現在、カンジダ・アウリスを抵抗性
感染症のなかで「最も大きな」脅威とみなし
ているといいます。
「それは、ほとんど無敵であり、識別する
のは難しいです」と。
CDCによりますとカンジダ・アウリスに
感染している患者の半数近くが、90日以内
に死亡しています。
ロンドンの病院で閉鎖
2015年の後半にロンドンのインペリアル
カレッジロンドンの、感染症専門家である
Johanna Rhodes博士は、イギリスのロンドン
の医療センター、ロイヤルブロンプトン
病院から電話を受けました。
病院では、数か月前からカンジダ・アウリス
の問題を抱えて対処できないでいました。
病院側は何も公表しませんでした。
同病院のスポークスマン、オリバー・ウィル
キンソンさんは、
「このパニックは、世界中の病院で起きて
います。
個々の機関、国、地上自治体は、抵抗性
感染症の発生を公表することに消極的です。
患者を怖がらせる、あるいは意味がない等
の理由からです」
と語りました。
2016年6月に、『進行中のカンジダ・アウリス』
の科学論文を報告し、病院は問題を抱えて
いる事実を初めて新聞に認めました。
デイリーテレグラフ紙は、集中治療室で新しい
スーパーバグ(耐性菌)が出現した後、病院が
閉鎖されたことを報じました。
後の研究では、72件の症例があったことが
わかっています。
スペインの病院でも
にかかわらず、この問題は国際的には、
ほとんど知られることがなかったのです。
スペインのバレンシアの992床ある大学病院
LaFe(ラ・フェ)では、さらに大きな被害
が始まっていました。
セルビアのベオグラードで医学真菌学会議
(TIMM)での2017年10月6〜8日、報告に
よりますと、感染した患者の41%が、30日
以内に死亡したということです。
病院側からは、死の原因は必ずしもカンジダ
・アウリスによるものではなく、彼らは多く
の病気をもっており、非常に深刻な状態
だったので、カンジダ・アウリスが真の
原因かを見分けることは非常に難しい、
との声明を出しています。
そしてイギリスのロイヤルブロンプトンと
同様に、スペインの病院も、何も発表しま
せんでした。
CDCが勧告
ロンドンの当局者は、ロイヤルプロンプトン
での発生についてCDCに警告し、CDCは
アメリカの病院に知らせる必要を認識し、
2016年6月24日に病院と医療団体に
全面的な警告を発しました。
CDCによりますと、アメリカではニューヨーク
州で309人、ニュージャージー州で104人、
イリノイ州で144人の合計587人がカンジダ
・アウリスに感染したと報告されています。
アメリカで最も早く知られた症例は、
2013年3月6日のニューヨークの病院。
アラブ首長国連邦出身の61歳の女性が
呼吸不全の治療を受けていましたが、
真菌陽性で1週間後に死亡しています。
当時、病院は考えていなかったものの
3年後のCDC勧告を知り報告。
細菌は長期介護施設にも広がっています。
真菌は換気装置でも成長します。
最初発見されたのは日本女性
医師が初めてカンジダ・アウリスを発見した
のは、2009年の日本女性の耳の中でした
(アウリスとは耳のラテン語)。
当時は無害で一般的であり、治療が簡単な
真菌感染症の一つに過ぎませんでした。
その3年後、オランダのナイメーヘンにある
微生物学者の研究室で、インドの4つの病院
から18人の患者の血流感染症を分析して
いて時に、異常な検査結果が現れたのです。
そしてその後すぐ、カンジダ・アウリスの新しい
種が毎月世界各地で出現するようになりました。
CDCの研究者たちは、カンジダ・アウリスが
アジアで始まって世界中に広がっている、
しかしインド、パキスタン、ベネズエラ、
南アフリカ、日本からのサンプルの全ゲノム
を比較したところ、それらの起源が単一の
場所ではなく、単一のアウリス株では
なかったことを発見しました。
ゲノム配列は4つのバージョンがあり、それら
が何千年も前に分岐し、同時に4つの異なる
場所で、無害な環境株から耐性病原体と
して出現したことを示しています。
なぜこのようになったかについては様々な
説が考えられています。
オランダの研究はMeis博士は、作物に
殺菌剤を多用することで、薬剤耐性菌が
発生していると考えています。
イトラコナゾールと呼ばれる最前線の抗真
菌治療に耐性をもつ、アゾール系農薬で、
それはすべての殺菌剤の売上高の3分の1
を占めるものです。