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「ヴィジタンティーヌ」=「フリアン」
前回は、フランス人の女性の名前がついている
マドレーヌ(「プルーストさんもお気に入り
マドレーヌさんが作った『マドレーヌ』」)の
御紹介でしたが今日は「フィナンシェ」です。
「フィナンシェ(financier)」は「フリアン
(friand)」とも呼ばれるフランスの焼き菓子。
「フリアン」とは「至上の味」の
意味を持つフランス語ですので
それほどおいしいということですね。
「フィナンシェ」は、古くは「ヴィジタンティーヌ」
という名前だった、とWikipediaには書いてある
のですが、両者は違うところもあるようです。
「フィナンシェ」→「ヴィジタンティーヌ」?
フィナンシェは100年ほど前のパリ生まれ。
一方、ヴィジタンティーヌはナンシー生まれですが
その起源は中世にまでさかぼのるそうです。
フィナンシェとヴィジタンティーヌの材料は同じです。
しかし、フィナンシェは卵白を生地に入れるのに対して
ヴィジタンティーヌは、泡立てた卵白を混ぜます。
焼き型も違うので、厳密にいえば
両者は別のお菓子といえます。
日本のオンラインショップでもヴィジタン
ティーヌを購入することもできますし。
現在フランスでは、フィナンシェの方が
圧倒的に多く、ヴィジタンティーヌを
見かけることは少なくなったとか。
まあ、フィナンシェの御先祖様がヴィジタンティーヌ
ではありますが、完全にフィナンシェに移行したという
わけではなく、ヴィジタンティーヌはヴィジタン
ティーヌとして今でも健在ということなのでしょう。
フィナンシェと、ヴィジタンティーヌも
かなりそっくりさんですが、実は私は
マドレーヌとフィナンシェがごちゃごちゃ
になってしまうことが多いのです。
前回のマドレーヌの下書きにも
フィナンシェと書いてしまったほど……。
そこで似ているけど、やっぱり違うマドレーヌ
とフィナンシェの違いをみてみましょう。
「フィナンシェ」と「マドレーヌ」の違い
1 かたち
2 材料(マドレーヌは小麦粉、
* フィナンシェは小麦粉とアーモンドプードル)
3 材料(マドレーヌは全卵、
* フィナンシェは卵白のみ)
4 材料(マドレーヌは溶かしたバター、
* フィナンシェは焦がしたバター)
5 味(マドレーヌはしっとり、
* フィナンフェはサクサク、でしょうか?)
1 かたち
形が違うのはすぐわかりますね。
フィナンシェは、長方形。
(今日、御紹介のフィナンシェは正方形ですが)
マドレーヌは、貝殻(ホタテガイ)のかたち。
(丸く平たいものもあります)
「フィナンシェ」の意味はフランス語で
「金満家」や「お金持ち」を意味する言葉だそうです。
だからフィナンシェの形は金塊を模してあるのですね。
と思いきや、別の説もあるようです。
最初、この「フィナンシェ」は金塊に
似ていないと思っていましたが、似ていますね
120年ほど前の、パリ証券取引所の付近に
あったお菓子屋さんが、証券取引所で働く人たちが
着ているスーツを汚さずに、素早く食べられるもの
をと考えたのがフィナンシェだということです。
トランプゲームをしている時に食べやすいように
サンドイッチが考えられた、という話と似ていますね。
金塊説よりこちらの方が有力だということですが。
2 材料(小麦)
前回、マドレーヌを御紹介した時に
材料はおおまかにいいますと
*「小麦粉:卵:バター:砂糖」が
*「 1 :1: 1 : 1 」
と同量ということでした。
フィナンシェも、材料はマドレーヌとほぼ同じ
なのですが、それぞれがちょっと異なります。
マドレーヌが小麦粉、卵、バター、砂糖
が同量ということですが、
フィナンシェは、小麦粉にアーモンドプードルが
入り、小麦粉とアーモンドプードルの割合は
大体同じ、半々位で、下のような配合になります。
マドレーヌ
小麦粉:卵:バター:砂糖
*1 ;1 : 1 : 1
フィナンシェ
(小麦粉、アーモンドプードル):卵:バター:砂糖
* 1 :1: 1 : 1
3 材料(卵)
マドレーヌは卵黄、卵白と全卵を使うのに対して
フィナンシェは卵白のみを使用します。
そして先ほど書いたように、卵白は
泡立ててから生地に加えます。
4 材料(バター)
マドレーヌは、溶かしたバターを使い
フィナンシェは、焦がしたバターを使います。
日本でのフィナンシェの作り方のサイトには
バターを焦がすことは記載されているのですが
調理法以前の問題として、フランスでは
「発酵バター」を使うのだそうです。
フィナンシェには発酵バターを使用する、
ということではなくヨーロッパでは
バターといえば発酵バターなのだとか。
自然が作り出した(?)発酵バター
遠心分離機がなかった時代にバターを作る
には、牛乳から生クリームを分離するのに
2、3日ほどかかりました。
その間に生クリームが自然に発酵して発酵バターに
なったのではないか、ともいわれているようです。
しかし現在では、生クリームの自然発酵
を待たずに、乳酸菌を加えて作ります。
ヨーグルトにも似た、わずかな酸味と
香りの高さが特徴ということですので
これは是非、一度は味わってみたいですね。
そうそう、フィナンシェとマドレーヌの違いの
5番目、味の違いですが、これは皆さんが
実際に味わって比べてみて下さいね。
愛国製茶の「フィナンシェ」
最後になりましたが、今日の冒頭の写真の
フィナンシェは、愛国製茶のものです。
左が「ほうじ茶フィナンシェ」で
右が「抹茶フィナンシェ」。
ほうじ茶フィナンシェ(Carreu Marron)の原材料名は、
「卵白、グラニュー糖、バター、アーモンドプードル、
薄力小麦粉、焙じ茶、ベーキングパウダー、香料、塩
特定原材料:乳・卵・小麦」で149キロカロリー。
抹茶フィナンシェの方は、
「卵白、グラニュー糖、バター、アーモンドプードル、
薄力小麦粉、抹茶、香料、塩
特定原材料:乳・卵・小麦 」で139キロカロリー。