「あぷりのお茶会 赤坂・麻布・六本木」へようこそ!
エリザベス女王御用達
世界三大ブルーチーズの最後は、イギリスで
「チーズの王様」といわれるスティルトン。
「スティルトン、ポートワインと葉巻が
イギリス紳士のたしなみ」ともいわれるほどで
エリザベス女王も毎朝、召し上がっているチーズです。
かつてエリザベス女王が来日した折
「スティルトンがなければ一日が始まらない」と、
急遽、空輸便で取り寄せたという逸話が残るほど。
わざわざ空輸をしなくても、スティルトンは
日本にもあるでしょ?、と思いますよね?
ではでは、麻布十番近辺で探してみましょうか。
麻布十番のスティルトン事情
まずは輸入食品では豊富な品揃えで有名な日進
ワールドデリカテッセン インターナショナル
スーパーマーケットへ。
(〒106-0044 港区東麻布2丁目34-2
*03-3583-4586 営業時間 8:30〜21:00)
ここのチーズ売り場は、外国のチーズ売り場
っぽいにおいもするほどで、面積もそこそこ
ありますが、スティルトンはこれ1つだけでした。
「murakawa」との表記のみで、会社名も住所の
記載もありませんが(サイトもない)ムラカワ株式
会社(JUCOVIA GROUP)の製品のようです。
次に行った 「ピーコック麻布十番」
(〒106-0045 港区麻布十番2丁目9-2
03-3456-2791 営業時間 9:00 ~ 23:00)でも
下の写真左のスティルトン(B)が1種類のみ。
かろうじて上のスティルトン(A)と、
下の左側(B)があったのが「成城石井麻布十番店」。
(〒106-0045 港区麻布十番2丁目2−10
03-5439-6401 24時間営業)
左(B)東京デーリー 成城石井麻布十番店
右(C)クラウソン ボンルパ麻布十番店
そして、ワイン約2300種類、チーズ150〜200種類の
品揃えを誇る「ボンルパ麻布十番」
(〒106-0045 東京都 港区麻布十番1丁目11-1
03-3582-1590 営業時間 12:00〜23:00)は、
上の写真の右のスティルトン(C)が
1つという結果だったのです。
東京ミッドタウンのプレッセプレミアムでは
もう少しあったような記憶もあるのですが
麻布十番近辺ではこんな感じでした。
日進ワールドデリカテッセンなどは、ロックフォール
とゴルゴンゾーラでしたら、数十種類ずつあるの
ですが、意外にもスティルトンは1つだけで驚き。
上の写真のスティルトン(B)と(C)の中身
といってもあまり代わり映えはしませんが
クセがあるか? マイルドか?
あまりの驚きに、最後に行ったボンルパの店員さんに
「スティルトンは人気がないのですか?」
と尋ねたところ、
「そうですね……、少しクセがありますからね」
との答えでした。
私自身は、そうなのかなぁと思わないでもないですが。
スティルトンの中でも最高のものは
メルトン・モウブレイ産、ベルヴォアー渓谷産、
ハート・ウイングトン産のものといわれます。
エリザベス女王が、お好きなスティルトンはわかり
ませんが、現在の東京でこのような状態でので、
エリザベス女王が来日した頃は、お気に入りの
スティルトンが手に入らなかったのもしれませんね。
「3つの州」の「6つの酪農場」
スティルトン生産者たちの、法的な保護を
求める活動は1936年から始まっています。
1966年にはスティルトンは登録商標として認められ、
1996年には原産名称保護制度に指定。
(PDO=Protected designation of origin)
スティルトンの生産地は、ロンドンから
北に150kmのダービーシャー、
ノッティンガムシャーとレスターシャーの3つの州。
スティルトンを作っている酪農会社もわずかに6つです。
スティルトンというチーズの名前自体は
ロックフォールやゴルゴンゾーラと同様、村の名前
ではありますが、スティルトン村はケンブリッジシャー
に属し生産地として指定された地ではないため
スティルトンチーズを作ることはできません。
スティルトンの生産地
(地図/「Stilton Cheese Makers’ Association」)
ダービーシャー(Derby)黄土色の部分左上
ノッティンガムシャー(Nottingham)右上
レスターシャー(Leiceter)下
その右下Sのあたりがスティルトン(Stilton)
スティルトンの名前がついているわけ
スティルトン村は、ロンドンとイングランド北部の
ヨークを結ぶ、グレート・ノース・ロード
(Great North Road、現在のモータウェイA1号線)
と呼ばれる道路に沿って発展していた宿場町でした。
その村で「ベル・イン(Bell Inn)」という旅館を
営むクーパー・ソーンヒル(Cooper Thornhill)は
レスターシャーの農場を訪れた時に
あるプルーチーズと出会います。
その味の虜になった彼は独占販売権を手に
入れ、スティルトン村で売りだしたために
スティルトンの名がついたのです。
ウィモンダム (Wymondham) のチーズ職人だった
フランシス・ポーレット(Frances Pawlett)は
スティルトンの製法を確立。
夫と共に生産協同組合を組織しました。
ジョージ・オーウェル「世界最高のチーズ」
このようなスティルトンをソネット(詩)に
歌い上げたのは、イギリスの作家
ギルバート・ケイス・チェスタートン。
また1945年には、全体主義的なコワイ社会を
書いた小説『1984年』の作者でもあるジョージ・
オーウェルもエッセイの中で、スティルトンは
「世界最高のチーズ」であると記しています。
スティルトンがいつから作られていたのかは
正確にはわからないそうですが、古代フランス民族
といわれるケルト人が、イギリスにもたらした
のではないかといわれています。
スティルトンチーズと地図
(写真/「Colston Bassett」)
中心から広がっている青カビ
スティルトンはロックフォールと同じ青カビ
(Penicillium roquefortiペニシリウム・ロック
フォルティ)を使って作りますが、
外側からステンレスの針を突き刺し
中心に空気を入れることで、青カビの筋が
中央から網目状に広がっていきます。
熟成期間は、8週間から9週間。
以前は、牛乳に生クリームを加えたものを
原料にしていたため、脂肪分は65〜75パーセント
とかなり多めでしたが、現在は45〜55パーセント
と他のチーズと同等となっています。
水分が少ないスティルトンは、ロックフォールや
ゴルゴンゾーラに比べて、組織が緻密に繋がり
固くしまった食感が特徴です。
これはチェダーチーズと同じ方式で作っているためで
型入れがしっかりとしていることによります。
青カビの入っていないこと以外はスティルトンと同じ
作り方をする「ホワイトスティルトン」もあります。
ウィスキーにも最適
スティルトンにあうお酒としては、ポートワイン、
シェリー酒、コクのある赤などといいますが
ウィスキーにもとてもあうとか。
保存はワックスペーパーに包んで冷蔵庫に入れて
食べる少し前に出して室温に戻してから
召し上がるとよいでしょう。
長期間保存する時は冷凍庫でも可。
実はスティルトンは「奇妙な夢を見る」
というおもしろいお話もあるのですが
長くなってしまいましたので、また今度ね。