軍隊が必要とする覚せい剤
前回は、トランプ大統領の資金調達パーティで
安倍首相が、父親(安倍晋太郎)も特攻隊の予備軍
にいたということに対して、トランプ大統領が
「神風特攻隊は酔っていたのか、ドラッグやって
いたのか?」という質問を発したことを
御紹介しました。
このトランプ大統領の質問が侮辱だという人も
いる一方、アメリカ軍も任務に際し、ドラッグを
使用しているので、それ以上に過酷な神風特攻隊
は当然、薬を使っていたのではないかという、
素朴な疑問を発したに過ぎないという意見も
ありました。
特攻隊や米軍で覚せい剤が使われていることを
私は今回、初めて知りました。
米軍は、第二次世界大戦から現在に至るまで
兵士たちの注意力を高めるために使い続けて
いるということです。
配布される覚せい剤は、デキストロ・アンフェ
タミン、通称スピードといわれるものです。
2002年にアフガニスタンで発生した誤爆事件で
は、兵士の弁護士が、空軍の処方した覚せい剤
が誤爆の原因だと主張していますが、デキストロ
・アンフェタミンには深刻な副作用が指摘され
ています。
泣き言は言わずに、薬を
米宮軍183戦闘航空団のパイロットたちは、誤爆を
する前に指揮官に対して疲労を訴え、
「次の任務まで12時間開けるという常識がないが
しろにされている」
と不満を表明していました。
しかし、指揮官が彼らに与えたアドバイスは、
「泣き言はやめろ」
「軍医んところに行って『行くか行かないか決める』
薬をもらってこい」
の2つだったといいます。
その1週間後、第183航空団のハリー・シュミット少佐
と、ウィリアム・アンバッチ少佐の二人が、カナダの
訓練部隊にレーザー誘導爆弾を御投下して、カナダ軍
兵士4人を死亡、8人を負傷させるという事件が発生。
軍事裁判法第32条に従って、2人のパイロットを殺人
・暴行・職務怠慢の罪で軍法会議にかけるべきかの
審理において、弁護側は「カナダ軍兵士を殺したのは
パイロット達ではなく、空軍の処方した錠剤デキストロ
・アンフェタミン(製品名「デキセドリン」、通称
「スピード」)であると主張しました。
過去はスポーツやダイエットに
アンフェタミンは19世紀後半に発見され、喘息など
の呼吸障害に用いられてきましたが、中枢神経系を
刺激する働きがあることから、1930年代までには
覚せい剤やダイエット薬として広く使われるように
なったということです。
現在は、主に睡眠障害や子供の注意欠陥障害に
処方され、またまれにうつ病にも投与されています。
麻薬取締局によりますと、この薬は深刻な副作用と
して、精神病生の異常行動、抑うつ、不安、疲労、
偏執症、攻撃性、暴力的行動、意識障害、不眠、
幻聴、気分障害、妄想を招く恐れがあることが
指摘されています。
以前は、フッドボールの試合前に選手たちは、デキセ
ドリンのたっぷり含まれたパンチボウルを食卓に並べ
ていましたが、これは現在は追放されました。
また、体重の問題を抱える学生が試験中に大学の
行為に訴えると、覚せい剤を簡単に処方していたも
のですが、これも過去のものとなりました。
米国防省は「無害」「事故は一切ない」
しかし、第二次世界大戦、ベトナム戦争、湾岸戦争
を通じて、兵士たちに大量のアンフェタミンを配布
し続けてきた米国防省は、この薬が
「無害なだけではなく、役に立つ」
と主張して、今なおやめようとはしていません。
空軍医師でパイロットでもあるピート・デミトリー
博士は、第32条に基づいた審理に関連して記者会見
を行い、
「米空軍は(デキセドリンを)60年間、安全に使用
してきた」経験があり、
「覚せい剤に関わる事故は一切確認されていない」
「(覚せい剤を使い続けることは)わが軍にとって
生死を分ける問題だ」
と主張します。
空軍によれば、アンフェタミンの使用は、完全に任意
で行われていると説明されています。
デキセドリンを受け取ったパイロットが署名する
「インフォームド・コンセント」の書類には、服用が
自由意志に基づくものであるということが、最低7回は
書かれていると。
しかし、同じ書類に、パイロットが服用を拒否する
権利を行使した場合は、地上勤務を命じられること
がある、とも記されているのです。
警鐘を鳴らす退役軍人たち
「地上勤務、すなわち飛行任務を外されるということ
は、どんなパイロットでもキャリアに大きな傷がつく
ことを意味する」と退役空軍少佐で、現在『ミリタリー
コラプション・コム』の編集長を務めるグレン・マク
ドナルドさんは説明します。
「空軍は、パイロットに薬物依存症になるリスクを
負わせ、その健康を危険に晒してきた」と。
海軍大将として退役後、麻薬取締局の副局長を
務めたユージン・キャロルさんも、アンフェタミン
はそれほど危険ではないと主張するデミトリー博士
の見方に異論を唱えました。
第二次大戦中に空母着艦に際し注意力を高める
ため、アンフェタミンを処方してもらったキャロル
さんは、今でもその常習性を懸念しているといい
ます。
国防省はこれをなんとか隠そうとしてきましたが、
動かしようがない事実であり、パイロットに過度な
勤務を強いれば、こうした薬剤を常時服用せざるを
得なくなり、ストレスが飽和状態を超えて、危険な
事態を招くことになると警鐘を鳴らしています。