手術で「感情的部位」を失った人は「決断を下せない人」になる(1/2)

2014年3月17日の「WIRED」から
『意思決定の脳科学』を御紹介します。

『30-Second Brain: The 50 most mind-blowing ideas
in neuroscience, each explained in half a minute』
Professor Anil Seth 編集
2014年3月10日アメリカで出版

 

「外科手術で『感情的部位』を失った人は、
一分の隙もない論理的な人間になるわけでは
なく、「決断を下せない人」になる」

 

古代ギリシャの哲学者プラトンは、人間の感情と
理性の関係を「馬と御者」に喩えた。
近代の心理学者フロイトは、「本能的なk欲求(イド)
が自我(エゴ)によって抑制される」という概念を
打ち立てた。
つまり、ずっと以前から、理性と感情は対立する
ものと考えられてきた。

 

こうした見方を神経科学的に解釈すると、的確な
判断とは、合理的な前頭葉が、生物進化の早い
段階に出現した、感情をつかさどる脳の部位
(脳の奥深くにある大脳辺縁系など)における
「動物的本能」をコントロールするものだと
思われるかもしれない。

 

しかし、実際はかなり違う。
感情的な情報インプットが生み出す「動機づけ」
や「目的」がなければ、効果的な意思決定は
不可能なのだ。

 

脳神経科学者アントニオ・ダマシオの患者
「エリオット」を例に取ろう。
有能なビジネスマンだったエリオットは、
脳腫瘍を切除するための外科手術を受け、
脳の「眼窩前頭皮質」を切除された。
これは、前頭葉と感情を結びつける部位だった。
その結果エリオットは、映画『スター・トレック』
に登場するミスター・スポックのような
感情が欠落した人間になってしまった。
しかし、感情を持たないからといって、
一分の隙もない論理的な人間になったわけでは
なく、むしろ決断を下せなくなってしまったのだ。

 

こうした症例からダマシオ氏は、「直感的な感情」
が人間の決断を支援するプロセスを説明する
「ソマティック・マーカー仮説」を唱えるよう
になった。
日賢者にカードゲー鵜をさせるギャンブル課題
という実験では、プレーヤーが、自分にとって
不利なカードを手に取る前に、手に汗をかく
ことがわかっている。
つまり、誤った決断を下したと頭が意識する
前に身体が反応しているのだ。

 

 

 

われわれは、決断の際に感情が必要だ。
感情的なインプットが必要ということは、
人間が、従来の経済学が河底するような
「冷たい合理的な行為者」ではないと
いうことを意味する。

 

例えば、ダニエル・カーネマンはエイモス
・ドベルスキーとともに、損失が感情に与える
負の影響は、利益による正の効果の2倍の
強よさがあることを証明した。

 

このことは、予見可能なかたちでわれわれの
決断に影響している。
とたえば、われわれは「失敗した投資」を
回収不能とみなすことに頑なに抵抗しやすいが、
そうした行動もこれによって説明することが
できる。

 

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