「嗅盲(きゅうもう)」 

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「嗅盲(olfactory blindness)

「特異的無嗅覚症」

においが全てなくなってしまう症状
を「嗅覚脱失」といいますが、これは
「においのない世界」ともいえるものです。

 

これに対して、ほとんどの匂いに対しては
普通の人と変わらないものの、ある特定
の匂いだけを感じない、あるいは感じて
も感受性が鈍い、という人もいます。

 

それを「嗅盲」「嗅弱」あるいは
「特異的無嗅覚症」といいます。

 

人間には約400種類のニオイ
分子受容体が存在しています。

 

このうちの一部の受容体が遺伝子
変異によって発現しないと、嗅盲
が生じると推測されています。

 

イギリスの生化学者
ジョン・アムーア博士が
「特異的無嗅覚症」を発見しました。

 

 

 

 

 

本人も気づいていない「嗅盲」

においが全てなくなってしまう嗅覚脱失
とは異なり、嗅盲は実生活上はあまり
不便を感じないということも事実です。

 

そのため色盲の人がそうであるように
本人も嗅盲であることに気づいて
いないことも多いようです。

 

現在はわかりませんが、私の学校時代
や、その他の健康診断でも嗅覚テスト
をした記憶がありません。

 

匂いの質も濃度も、他の人に伝える
のはかなり難しいものですしね。

 

ということは私も含め、自分では自覚を
していなくても、何らかのにおいに対し
て嗅盲の可能性もあるということです。

 

 

 

 

 

ドリアンは「よい香り」か「悪臭」か?

トロピカルフルーツの王様といわれる
ドリアンは、その強烈なにおいでも
有名な果物です。

 

このドリアンを「よい香り」と感じる
人は、嗅盲が疑われるといいます。

 

ドリアンのにおいは、硫化水素、ジメチル
チオエーテルで、含硫化合物(硫黄を含ん
だ化合物)を含み、悪臭を強く感じるのが
普通の反応です。

 

ところが、イオウを含んだ化合物である
含硫化合物に対して嗅盲だった場合は
エステル類だけを嗅いで、フルーツ系
の芳香と感じてしまうのです。

 

 

 

 

 

「青酸」が嗅盲発見のきっかけに

嗅盲という現象が発見されたのは
青酸(シアン化水素)のにおいが
きっかけでした。

 

嗅盲は最初、性差や人種差がある伴性
劣性遺伝だと考えられていたようです。

 

しかし、青酸に対して、
「男女共7%の嗅盲がいて性差はない」
「遺伝はしない」

 

というデータを、1969年にジョン・
アムーア博士が報告したことにより性差
や伴性劣性遺伝という説が覆りました。

 

 

 

 

私は青酸のにおい自体がどのような
ものか、そもそも知らないのですが
アーモンド臭を放つということです。

 

ジョン・アムーア博士が発見した嗅盲
の物質は青酸を含め全部で9つでした。

 

ビールや食パン、チョコレートに
含まれる甘酸っぱい焦げ臭の
「イソブチルアルデヒド」、

 

 

 

 

変質したチーズ臭や蒸れた靴下臭いの
「イソ吉草酸(イソバレリン酸)」、

 

脇の下の不快臭である
「3-メチル-2-ヘキセン酸」、

 

ラズベリーやスミレに含まれている
香りの「β-イオノン」など。

 

 

 

 

 

日本人の物質別嗅盲率

日本人の場合は、青酸臭を感じない
男性は18.2%、女性は5.5% といいます
ので結構性差はあるような気もします。

 

変質したチーズ臭や蒸れた靴下の臭い
といわれる「イソ吉草酸」は2%(6%と
するものも)の人が嗅盲 といわれます。

 

また、スカンクのガスにも含まれている
という「メルカプタン」に対しては 0.1%
の割合で嗅盲の人が存在します。

 

 

 

 

一番多い嗅盲は、チョコレートの甘酸っぱ
い焦げ臭「イソブチルアルデヒド」で36%、
3人に1人ということでかなり多いですね。

 

脇の下の不快臭である「3-メチル-2-
へキセン酸」は約15%、

 

魚の腐敗臭である
「トリメチルアミン」は約6%。。

 

バナナの香り「酢酸イソアミル」は1.4%で、
加齢臭の「2-ノネナール」3.5%です。

 

 

 

 

 

半数の人がわからない「β-イオノン」

またアムーア博士の発見した嗅盲物質の
1つであるラズベリーやスミレに含まれて
いる香りの「β-イオノン」ですが、

 

人参に豊富に含まれているβ-カロテンが
加熱などにより分解すると「β-イオノン」
を生じます。

 

これは、いも焼酎の中にもこれを含むもの
があり、β-カロテン含量の多いだいだい色
のサツマイモを原料として焼酎には含まれ
ということです。

 

「β-イオノン」は、人間がにおいを感じら
れる最低限の濃度が非常に低い化合物です。

 

 

 

 

この物質に対する嗅盲の割合はかなり高い
もので、はっきりした数字はわかりません
が、50%という報告もあるようです。

 

なんと半数の人が「β-イオノン」に
対して嗅盲ということで、これは遺伝子
によって決まっているといいます。

 

となりますと、2人の人がいた場合、
2人共、あるいは1人が「β-イオノン」
の嗅盲ということは普通にあり得ます。

 

他の人と自分は、必ずしも同じにおいを
感じているわけではないのですね。

 




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