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肥前陶磁の様式変遷
日本で初めて磁器が作られるようになった
1610年代からの変遷を簡単な表にしてみました。
* 唐津焼
1600年 ____________________
* 初期伊万里
* 初期色絵(古九谷)
1650年 ____________________
*大河内山 南川原山 内山・外山 武雄市など
* 鍋島 柿右衛門 | |
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* | 古 伊 万 里 金 蘭 手
1700年 ____________________
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* ▽ ▽ ▽
(「有田焼400年の歴史展 様式から見る有田焼の変遷」
東武百貨店池袋店 2016年 「とんとん・にっき2」)
唐津焼については……
初期伊万里から初期色絵については……
*「伊万里焼(有田焼) 色絵の誕生」
*「なぜ『色絵」を『赤絵』というのか?」
鍋島焼についてはこちら
*「関ヶ原の戦いを挟んで揺れる佐賀藩鍋島家」
*「佐賀鍋島藩の御用窯完成」
*「鍋島焼の種類『染付鍋島・色鍋島・鍋島青磁』」
色絵鍋島「色絵宝尽文皿 」
ロサンジェルス・カウンティ美術館
柿右衛門以前の色絵
1596(慶長元)年に生まれた初代・酒井田柿右衛門は
1643(寛永20)年頃から「赤絵」の制作をはじめて
1946(正保3)年に完成させました。
染付の青以外の色を使って描く色絵磁器は
柿右衛門が「赤絵」を完成する以前に、既に3カ所の
窯で焼かれていたことが発掘調査からわかっています。
それが上の表の「初期色絵(古九谷)」です。
初期の色絵は、緑や紫、黄色などの寒色系の絵の具を
多用して、模様を器全体にびっしり描くのが特徴。
「色絵菊文輪花大皿(青手)」16650年代
(写真/「4travel.jp 」)
この「色絵菊文輪花大皿」は「青手」と
呼ばれるもので、赤は使用せずに、模様の輪郭
を黒い線で描き、黄色、緑、紫などの色絵の具
を使って隙間を作らずに描き込んだお皿です。
柿右衛門の「赤絵」
それに対して酒井田柿右衛門の「赤絵」は
余白を充分にいかして明るく繊細な構図を
特徴とする色絵磁器でした。
初期の赤絵は、お手本としていたものが中国明朝
の磁器だったことから、中国的な「花鳥図」や
「鳳凰図」などの絵柄が多かったということです。
しかし三代、四代と柿右衛門も代を重ねてゆく
につれ「秋草」や「波千鳥」といった日本画
に多い文様が描かれるようになります。
ヨーロッパ向けの柿右衛門
1659(万治2)年、オランダ東インド会社( VOC)に
よる磁器輸出が本格化してから、伊万里焼はヨーロッパ
向けの製品を作り出すようになりました。
この「色絵花鳥文八角共蓋壺 」は、高さが
61.5cmもある大きな沈香壺(じんこうつぼ)で
世界最大級の柿右衛門壺といわれるものです。
「色絵花鳥文八角共蓋壺 」酒井田柿右衛門
江戸時代前期
出光コレクション – 出光美術館 総高61.5cm
蓋が紛失していないのは珍しいそうで、イギリス
から里帰りして現在は出光コレクションの収蔵品。
写真が小さくて見にくいのですが、蓋と肩の部分に
藍色と赤で牡丹唐草文を配してあり、胴には
梅や牡丹、竹に菊と戯れる小鳥が描かれています。
写真ですと胴の部分は六面体のように見えますが
実際は八面に面取りしてあるようです。
繊細な模様を纏った堂々とした立派な作品に
ヨーロッパの王侯貴族は心を奪われたことでしょう。
* (参照「出光美術館」)
「沈香壺」の使い方
ちなみに「沈香壺」とは沈香を入れて
おく壺という名前の通りの物なのですが
私はこれには驚きました。
まさかこの巨大な壺の中に沈香を
入れておいたということはなかろう、
と勝手に思っていたからです。
同じ重さの金よりも高いといわれる
沈香をこの壺いっぱいに入れたら
一体どれほどの価格になるのかと……。
でも王様だったら全然、普通なのかもしれませんが。
沈香壺は沈香の容れ物というだけではなく
お客様がみえると、普段は被せている蓋を
開けて、芳しい香りを室内に漂わせる
という、容れ物兼香炉でもあったようです。
「沈香壺」があっても
実は私は、昔からこの壺は何を入れる
ものなのか皆目、見当もつきませんでした。
単なる飾り、オブジェとも思っていたのです。
「沈香壺」という名前を知った後でさえ
なぜそう呼ばれるのかの意味がわからなくて。
ところがこれは飾りではなく
本当に沈香入れでした!
万が一、億が一、私が沈香壺をプレゼント
されたとしても入れる沈香がないですね……。
ヨーロッパ向けに作られて海を渡っていった
これらの作品は、欧州貴族達に愛され「柿右衛門」
あるいは「柿右衛門手」と呼ばれてきました。
ところで沈香壺は「酒井田柿右衛門」作ですが
その前に紹介したお皿には「柿右衛門様式」と
記載されていますね。
両者の違いは何なのでしょう?
「柿右衛門」と「柿右衛門様式」の違い
ヨーロッパ向けの磁器製品は、当然のことながら
国内にはあまり数がなかったようですが、先ほどの
沈香壺のように里帰りする作品が増えてきました。
一方、ヨーロッパの東洋陶磁コレクションの
実態も明らかになりつつあるなか、国内の
窯跡の発掘調査も行われるようになって
様々なことが明らかになってきたようです。
「戸栗美術館」のサイトによりますと、従来
「柿右衛門」と呼ばれてきたものの全てが柿右
衛門個人の作品ではないと説明されています。
「現在では柿右衛門個人の作品ではなく、
柿右衛門窯が*牽引した伊万里焼の一様式で
あると考えられるようになり、『柿右衛門様式』
と呼ばれるようになりました」とのこと。
ちょうど今、東京渋谷の戸栗美術館では
「17世紀の古伊万里 逸品再発見! 展」
が開催中です。
会期は、2017年5月27日(土)〜9月2日(土)。
午前10時から午後5時までで、月曜日が休館。
「戸栗美術館(TOGURI MUSEUM ART)」
〒150-0046東京都渋谷区松濤1丁目-11-3
*tel.03(3465)0070