「あぷりのお茶会 赤坂・麻布・六本木」へようこそ!
上は果物、下は杏仁
「アラボンヌー」の「ゼリー杏仁」。
実はこの写真、かなり前に買ったもので
「アラボンヌー」は季節毎に違うケーキが出て
きますので、現在これはないかもしれません。
今日のケーキを買ったのは、季節的にはちょうど
今と反対の夏付近に買ったように記憶しています。
次の写真のように、雨で正面に見えるプルデンシャル
タワーが霞む日が続き、何ともぼやけた写真しか
撮ることができなかった頃でした。
「ゼリー杏仁」の上部は、果物の涼しげなゼリー、
下は杏仁ゼリー。
一番上にのっている赤いものは
何だったか忘れてしまったのですが
クコ(枸杞)の実でしょうね、杏仁ですので。
アラボンヌー「ゼリー杏仁」
靄でぼやけた日に、ぼやけた写真でごめんなさい
漢方薬で使用する時は「きょうにん」
ところでこのケーキの名前は「ゼリー杏仁」ですが
「杏仁豆腐(あんにんどうふ)」の「杏仁」ですね。
お菓子として「杏仁」を使う場合は「あんにん」と
呼びますが、漢方薬で薬として使用する時は
「きょうにん」といい、苦味が強い「苦杏仁
(くきょうにん、Prunus maximowiczii)」が使われます。
それに対して杏仁豆腐等に使われるものを
「甜杏仁(てんきょうにん)」ともいいます。
今ではデザートの定番の杏仁豆腐も
本来は薬膳料理の一種でした。
苦味が強い「苦杏仁(くきょうにん)」に
甘みを加えなめらかにして、食べやすくと
考えられたのが、現在の杏仁豆腐だったのです。
すでに3世紀からお薬だった「杏仁」
漢方薬としての杏仁は、すでに3世紀
三国時代に編集された最も古い漢方薬書
である『傷寒論』にも登場しているお薬。
肺と腸を潤す働きがあるといわれ、喘息や咳止めに、
またタネに含まれる油分が整腸作用をもつことから
便秘を解消する働きもあるといわれています。
「毒のある薬味」ともいわれる杏仁は、使う分量を
慎重に決めるようにともいわれる薬ですが
その理由は、アーモンドやビワの葉にも含まれる
アミダグリンという成分を含むから。
アミダグリンを含みますが……
アミダグリンそのものには毒性はありませんが
エルムシンという酵素により加水分解される、
ベンズアルデヒドとシアン化水素を発生します。
(青酸、猛毒ですが、長期に保存すると
*分解されて無害になります)
エルムシンは、アミダグリンを含む未熟な果物に
含まれていることがありますが、果物が熟するに
したがいエルムシンの作用によりアミダグリンが分解
されるために濃度が下がり、青酸もなくなっていきます。
ですからアミダグリンを含む、アンズやウメなどを
食べも、青酸中毒になる心配はほとんどないとのこと。
確かにエルムシンは動物の体内のある酵素ですので
高濃度のアミダグリンを含む果物を食べると加水分解
され青酸を発生し、中毒を起こすことも考えられます。
ですが致死量は未熟な梅を、100〜300個ほど食べた場合
ということですので、あまり心配する必要はないようです。
「杏仁(あんにん)」
「杏仁」とは「杏(アンズ・アプリコット)」
という字がついている通り、アンズの種の中
にある仁(さね)を取り出したもの。
写真の右側の半分に割ったアンズの実の中に
タネが見えますね?
このタネの殻を取り除いたものが「杏仁」。
下の写真でいいますと、右下の小さい四角の写真に
写っている、カボチャのタネのように平たいものが
「杏仁」で、硬い皮の中に白い実が入っています。
「杏仁霜(杏仁粉)」
その杏仁をすり潰したものが
左の写真のお皿の上に乗っているもの。
「杏仁霜」あるいは「杏仁粉」というそうです。
「杏仁霜」と書いて「あんにんそう」と読みます。
つまり「杏仁霜」とは、アンズのタネ(仁)を
粉末にしたもののことで、これに甘みと牛乳を加え、
ゼラチンや寒天などで固めたものが杏仁豆腐。
意外に高価な「杏仁霜」
この「杏仁霜」というのは高価なものだそうで
香りが似ている安価なアーモンドパウダー
(エッセンス)で代用されることもあるようです。
また、ブドウ糖やコーンスターチなどの粉と
混ぜて販売されていることも多い製品なのだとか。
つまり「杏仁霜」といっていても
本物の「杏・アプリコット」のタネの中から
取り出したものは少ないということです。
ちょっと信じられない「?」なお話
とここまでは比較的、わかりやすい話だったと
思うのですが(だよね?)、ここからは
私にはちょっと理解がしがたい話なのですが……。
「杏仁霜」といっても多くのものがアーモンド
パウダーの代用品で、本物はなかなかないのだよ、
といわれると、それならば本物を手に入れてみたい
と思った私は、ネットで検索をしてみました。
すると私がみたものは全てかなり安価なもので
これが本当にアンズの仁からとったものなのだろうか?
と不安が頭をもたげます。
原材料を見るとコーンスターチなどは加えて
あるものの、「甜杏仁」とも書いてあるのですが
表記は「杏仁霜 アーモンドパウダー」です。
やっぱり本物ではなくアーモンドパウダーなのだ、
と思ったその後のことでした、
めくるめく混乱が私を襲ったのは!
「アラボンヌー」
〒107-0052 港区赤坂4-3-13
Tel.03-3583-7665
「杏仁霜」は英語で
「アーモンドパウダー」?!
「杏仁霜」は英語で「ALMOND POWDER
(アーモンドパウダー)」というと書いてあるのです。
だから「杏仁豆腐」を英語でいうと
「almond jelly」となるのだそう。
本物の「杏仁霜」の代わり、つまりニセモノとして
アーモンドパウダーが使われているというのに
本物の「杏仁霜」の英訳が「アーモンドパウダー」
では、わけがわからないではありませんか!
と思ったら、やはりその辺りを疑問に思った方
がいて、ブログで書いていらっしゃいました。
その方の説明はこのようなものです。
(「ようこのニュージーランド日記
〜女将の本音ブログ〜」)
「本家本元の中国で、あんにんとアーモンド
*の区別がされていないらしいのです。
*ではなぜそんなことになってしまったのか
*というと、杏の種の核と、アーモンドが
*見た目似ていることと、匂いが似ている
*からなのだそうです。」
そして、どちらかわからない「杏仁霜
(アーモンドパウダー)」を買ってきた後に
作ってみて、初めてそれが本物の「杏仁豆腐」
か、あるいは「アーモンド風味の牛乳寒天」
なのか、やっとわかるということでした。
「杏仁霜」は高価なので、ブドウ糖や
コーンスターチ、香りが似ているアーモンド
パウダー(エッセンス)で代用するニセモノ
が多い、
といいながら、
「杏仁霜」の英語表記が「アーモンドパウダー」
であるということは、ホンモノの英語表記が
ニセモノの名前というわけなの?
「アーモンド風味の牛乳寒天」!
今が調べた限りでは、ネットで売られている
「杏仁霜(アーモンドパウダー)」は「杏仁霜」
とともに「コーンスターチ」を初めとした粉類と
「エッセンス(香料)」を含んでいます。
そしてかなりお値段が安いのも
共通していて気になるところ。
現在はないようですが一昨年、ネットでおそらく
本物の「杏仁霜」が販売されていましたが
それなりのお値段だった記憶があります。
ということは安価な流通品は「杏仁霜」を
含んではいてもごく少量で、香料と記して
あるものは「アーモンドエッセンス」なの
ではなかろうかと思った次第。
購入して作ってから「杏仁豆腐」か「アーモンド風味
の牛乳寒天か」わかるとはいっても「杏仁霜」と
書いてあるから本物と思い込んでいる人には
比較することさえ考えつかない気もしますし。
まあ、美味しい杏仁豆腐だなぁ、
と思うならばそれでいいのかな。
今日は、ホンモノも食べてみたいと思うしのぶっち
の小さな親切、大きなお世話のお話でした。