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1994年4月28日(木)に新聞に掲載された
大橋力さんが書かれた「聴こえない音」
という投稿を御紹介します。
「聴こえない音」
「音楽家・山城祥二として自分の作品を
*レコード化できるようになった私は、
*間もなく自覚した。
*自分の音楽は、響きやねいろにポイント
*があるらしい。
*どちらかといえば潜在意識に働きかける
*戦法だが、幸いレコードは軌道に乗った。
*旋律や和音にくらべると、響き・ねいろ
*には音響技術の影響が桁ちがいに大きい。
*私のレコード音楽は、マイク選び、ミキ
*シングからLP盤のプレスにおよぶ技術面
*が、大きな比重をしめるようになった。
*その中で、不思議な現象に遭遇した。
*人間の耳には、2万ヘルツまで音として
*聴こえる。
*ところが、録音マイクがひろった音楽には、
*それ以上周波数が高く音としては聴こえ
*ない成分が含まれている。
*それを電子的に増幅すると、何と音質が
*変わるのだ。
*LP盤を造るときなどにこの聴こえない音を
*増強してやると、とたんに響きがあやしい
*輝きを漂わせる。
*私は音創(づく)りの秘密兵器として、
*この超高周波の効能を活用した。
*技術者の中にも、この技を使う人がいた。
*やがてCDが聴こえない高周波をカットして
*登場し、この技には終止符がうたれること
*になった。
*その何年か後、私はメディア科学の研究者
*としてこの問題にとりくむことになった。
*新しい工夫をして詳しく調べると、驚く
*ことばかり。
*ブルガリアの合唱、バリ島のガムランなど
*神秘の世界へ人をいざなう音楽や、熱帯雨林
*の美しい環境音などには、5万ヘルツを
*こえるほど高周波がたっぷり含まれていた。
*こうした音を聴く脳の反応を調べると、
*聴こえない高周波が一緒の時には、
*快適な脳が出すα波が増える。
*しかも音をよりあでやかに感じる。
*こうしたことが統計的に裏付けられた。
*聴こえない高周波のこの効果は、縁の下
*の力持ちのように奥ゆかしく素晴らしい。
*こういう現象に出会えたことは、
*学者冥利(みょうり)につきる」
簡単なまとめ
人間の耳に聞こえるのは2万ヘルツまで
だが、マイクで拾う音には、それ以上の
高周波の音(聴えない)が含まれている
* ↓
それを電子的に増幅すると
音質が変わりあやしい輝きの響きに
* ↓
音作りの秘密兵器として活用
高周波をカットするCDが登場してから
この技に終止符
その後の研究で
ブルガリアの合唱、バリのガムランなど
神秘の世界へ人を誘う音楽や、熱帯雨林
の美しい環境音には5万ヘルツを超える
高周波が多く含まれていた
これらを聞く脳の反応を調べると、聴え
ない高周波が一緒の時には、快適な脳が
出すα波が増えていた
読んだ当時も、そして今も……
聴えない高周波が、音質の変化というかたち
で聴えている、という言い方が適切でないと
したら、「感じられている」とは、なんとい
う神秘と。
しかもブルガリアの合唱やガムラン等、いわ
ゆる西洋音楽のジャンルではない音や、熱帯
雨林の美しい環境音にそれが含まれていると
いうことは、教えてもらえば如何にもという
感じを覚えます。
聴えない高周波は、普通の音としてではなく
とも、別のかたちで聴えているという事実。
しかもそれが単に聞こえる、影響を与えてい
る、ではなく基本の音を何層倍もの魅力的な
音に仕上げている。
耳で聴いて魅力的なだけではなく、脳波にも
それが如実に表れていることもすでに証明済み。
「聴えないもの、見えないもの=存在しない」
という単純なものでないことを教えてくれる
なんとも刺激的なお話です。