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「役不足」
先日、もうなくなってしまったホテルオークラの
オーキッドルームでの、アフタヌーンティーを
御紹介しました。
アフタヌーンティーを一緒に楽しむ約束を
していたお友達を、オーキッドルームの
そばのソファーで待っている時のこと。
隣りに座っている女の人が電話で、少々興奮気味に
話しているのが耳に入ってきてしまいました。
彼女は、頼まれた仕事を受けるつもりで
依頼者に会ったものの結局、その仕事は
彼女にはまかされなかったよう。
彼女はそれを別の人にこう訴えていました。
「私では役不足ということなのでしょうか?!」
と、怒りのこもった不満げな口調で。
「役 > 人」or「役 < 人」?
彼女は本来の「役不足」という意味とは
反対の使い方をしていたのです。
「役不足」という言葉の意味は、「力量に比べて、
役目が不相応に軽いこと」をいいます。
役と人の力の関係は「役 < 人」となります。
つまり「役をふられた人の力の方が大きい」、
ということは、「役の方がその人の力に比べて
小さ過ぎる」ということでもあります。
あれほど能力のある人に、たったあれだけの役では
もったいない、役に不足があるという感じですね。
ところが、冒頭に紹介した人は「役不足」を
「役 > 人」と捉えて、「私では役不足ということ
なのでしょうか?!」と抗議をしているわけです。
「力不足」と混乱?
最近、意識してみていたのですが、話し言葉、文章
ともに、「役不足」という言葉を、本来とは反対の
意味で使っている彼女のような人がほとんどでした。
「goo辞書」によりますと「役不足」を、本来の意味
である「役 < 人」と使っている人は41.6パーセント
に過ぎず、間違った解釈の「役 > 人」として
使う人が51.0パーセントもいるとか。
なぜこのように、反対の意味に思ってしまう人が多い
のかということについては、「役不足」と似ている
「力不足」という言葉と混乱している
のではないかという説もあるようです。
冒頭の女性の言った
「私では『役不足』なのですか?!」という言葉を
「私では『力不足』なのですか?!」
と置き換えると、確かに頷けますね。
言葉は生き物ですので、時とともに進化か退化かは
わかりませんが、変化していくことは事実です。
本来の「役不足」は「力量に比べて、役目が
不相応に軽いこと」が正しい意味ですが
現時点でさえ誤用が半分を過ぎているようです。
もしかしたら、将来は逆の意味に
なってしまうかもしれませんね。