「あぷりのお茶会 赤坂・麻布・六本木」へようこそ!
「おはしょりは必要なの?」
昨夜、ツイッターで『日本会議の研究』の著者
である菅野完さんが、女の人の和装について
「おはしょりは必要なのか?」という、とても
共感できる質問をつぶやいていらっしゃいました。
実は私も同じことを思ったことが
ありましたし、また多くの方も同様に
思われているような気がします。
「おはしょり」とは、帯の下に
着物を帯と平行に畳んだように
着付ける部分のことです。
確かに着物を着る時に、このおはしょり
部分がいまいち綺麗に整わなくて
やり直すなどということもあります。
以前、「節子・クロソフスカ・ド・ローラ伯爵夫人
『お人形ではなく』」のところでも書きましたが、
着物に関して現在は、やたら「美しく着る」風潮
が蔓延り(?)、プレッシャーも感じますし。
おはしょりがない方が、着るのが簡単なのは
いうまでもありませんが、結論をいいますと
やはりあれは「必要です」。
ただし、体系によって「絶対に必要」から
「なくても平気」まで色々だとは思いますので
全ての女性が絶対に必要とも言い切れませんが。
立体的な洋服に必要な「ダーツ」
着物は、反物を複数縫い合わせてはあり
ますが全て平面的な作りで、したがって
綺麗に畳んで収納することもできます。
一方、洋服は立体的な作りですので
畳んで収納というよりは、ハンガーにかけて
できるだけ立体的な保存が望ましいですよね。
洋服を作ったことがある方はおわかりだと
思いますが、洋服の型紙には「ダーツ」と
いう部分があります。
洋服の型紙 グレーの部分が「ダーツ」
左が前身頃、右が後ろ身頃
「ダーツ(darts)」とは、平面的な布を立体化する
ための技法の一つで、体の凹凸に合わせて丸みを
作るために布の一部を縫い込んだつまみのことです。
上の型紙は左が前身頃で、右が後ろ身頃ですが、
それぞれグレーの部分の両端を縫って膨らみを作り
前身頃は胸、後ろ身頃は肩のラインに添わせるため。
上の型紙の場合は、前身頃にダーツは一箇所
でしたが、下のイラストに示されているよう
に、ダーツはさまざまな場所で作られます
下から2番目には「ウエスト・ダーツ」と
ありますように、ウエストからヒップに
かけての丸みを作るダーツもあります。
ですが、一番多いのはやはり
バスト周りの調整でしょう。
イラストでも、幾つものダーツがバストトップ
に向かって、布ができるだけ自然に美しく沿う
形に出来上がるように考えられています。
「前後の差」
本当は、後ではなく前の裾が上がってしまう例
のイラストを探していたのですが、見つから
ないので、こちらのイラストを拝借しました。
これは年齢とともに背中のカーブが変化
した場合に、洋服をどのように直したら
着やすくなるかを説明したものです。
後ろの部分が、脊柱のカーブにより膨らんで
引っ張られ、前が下がったように見えます。
横から見ると床と平行ではありませんね。
このイラストは、後ろが膨らんでいる場合
でしたが、前に胸が膨らんでいる場合も同じ。
その時は先ほどとは反対に、前裾が上がり
後ろが垂れ下がったようになってしまいます。
また胸の膨らみに限らず、妊娠中でお腹が
大きくなった場合も同様のことが起きます。
つまり体が上から下まで、ほぼ同じサイズで
凹凸がなくスト〜ンとしていたら(太くても
細くても)問題はないのです。
ところがそうでない場合は、前後に差が生じて
しまうため、この「前後の差」を、洋服の型紙
ではダーツ等で調整します。
そしてダーツ等の調整機能がない着物の場合
に必要なのが「おはしょり」というわけ。
もっともこの調整機能の中には、体型の変化に
対応するためや、どのように着付けたいかと
いうニュアンスを表現するため等も含まれます。
5センチ位までは「おはしょり」なくてもOK?
また「前後の差」に関してですが、5センチ位
まででしたら、おはしょりがなくてもほとんど
問題なく着付けができるように思います。
(正確な統計をとったものでは
なく、私の実感にすぎませんが)
ですが、前後の差が10〜15センチ以上
ということになりますと、おはしょり
がないと厳しいのではないでしょうか。
前後の差は、必ずにも胸の大きさだけで
決まるというものでもないようです。
肩の形や背中の肉付き(極端な例が先ほど
の脊柱カーブ例)などによっても変化する
ようですので、一概には言えませんね。
女性でもおはしょりは不要という方もいますが
おはしょりを必要とする女性も多いのが現状。
体系は千差万別です。
それともう一つおはしょりがあることに
よる利点といえば、行灯(あんどん 裾が
広がってしまうこと)にならずに、裾つぼ
まりに着付けられることでしょう。
ということで大雑把に言ってしまいますと
おはしょりの必要性はこうなるでしょうか。
1 前後の差をカバーする
2 着付けの好みに対応する
*(特に行灯にならず裾つぼまりにする)
ここからは、超個人的な話で「おはしょり」
とは直接関係のない話です……
私が「前後の差」等に注目するように
なったのは、高校生の頃に洋服を
作り始めたのがきっかけでした。
本を見ながら型紙通りに作っても体に合わない
ものしかできないので、自分の型紙を作ること
から始めましたが、それでも結果はいまいち。
自分で作るものだけではなく、市販の洋服
でもそれは同様で、必ず直してもらわなけ
れば着ることができませんでした。
お世辞にもスタイルがいいとはいえない体型
でしたが、かといって一見しただけでは他の人
とそんなに違っているようには見えないのに。
みんなが普通に来ている既製服が、40キロ台の
私にきついことが全く理解できないまま数十年
考え続け、なんとか難ありの自分の体型にあう
ものが作れるようになりつつある、今日この頃。
私はお太鼓結びが苦手なのですが、その理由も
単に趣味の問題のみならず、私の体型による
ものであることも数年前にわかりました。
本当に人間も、人間の体も様々ですね。
少々 かなり難ありの体と、数十年つき
あってきて今、しみじみ思います。