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電磁波過敏症
(electromagnetic hypersensitivity[EHS])
現在の私たちの暮らしは、さまざまな
電気製品とともに営まれています。
人間の体は、微弱ではありますが
電気信号を介していますので、それらの
から発する電気の影響を受けます。
多くの人はさほど影響を感じませんが、ある日
突然、電磁波に敏感に反応し、身体中に様々な
不調が現れる人を「電磁波過敏症」と呼びます。
「電磁波過敏症」の人の約8割に「化学物
質過敏症」が合併し、「化学物質過敏症」の
約2割に「電磁波過敏症」が併発するそうです。
電磁波過敏症の主な症状
目(痛み、まぶたの腫れ、視力低下など)
鼻(鼻づまり、鼻水など)
顔(火照り、歯や顎の痛み、湿疹など)
頭(頭痛、うつなど)
皮膚(湿疹、赤みなど)
症状が進むと
呼吸困難、動悸、めまい、吐き気、耳鳴り、
疲労感、手足のしびれ、不眠、肩の痛み、
筋肉痛、強い不安など
症状が似ているために「自律神経失調症」
や「ノイローゼ」「神経症」「気分障害」
などと間違われることもあるようです。
「心療内科」で相談
「電磁波過敏症」は、自らも病院の医療
機器が放つ電磁波により体調不調となった
アメリカの医師、ウィリアム・レイ博士
によって1990年に命名されました。
「電磁波過敏症」は約650万人の患者が
いると推定されていますが、現在はまだ
正式な病気とは認定されていません。
病気に準じた状態と捉えられ、具体的な
診療科はなく、総務省・電磁界情報センター
では「心療内科」の受診を勧めています。
電磁波の危険性を完全に証明した研究はまだない
とはいえ、弱い電磁波照射なのに、線虫の
体内が「まるで焼けたようになっていた」との
ポメライ論文(イギリス2000年)もあります。
2001年、スウェーデンの調査では、約1.5%が
「電磁波過敏症」だということですが、これを
日本にあてはめると180万人に相当します。
2002年3月に、元ノルウェー首相でWHO前
事務局長のブルトランド女史はインタビュー
で、「電磁波過敏症だ」と告白。
電磁波の人体影響の研究は、影響がある
という研究が増加しつつあるものの
影響はないとする論文も多いそうです。
しかし、元京都大学講師の荻野晃也博士は
「100%の危険証明がされていないことを
『安全証明』と考えるべきではない」
と記しています。
電界・磁界・電磁波
プラスとマイナスの電極が引き合ったり
反発しあったりという電気の力が働いて
いる空間=「電界」
磁石のN極とS極が、引き合ったり反発
という磁気の力が働く空間=「磁界」
電界と磁界が影響しあいながら流れる
場所に発生するエネルギーの波=「電磁波」
電磁波とは
電場と磁場とが相関している電気
の波のことで、波と粒子の性質を
持つ太陽光線の仲間の総称です。
以下の2つに分類されます。
「電離放射線」・「非電離放射線」
「電離放射線」
紫外線よりもエネルギーの高い電磁波
であり、原子力基本法、放射線障害
防止法で「放射線」と定義されます。
「非電離放射線」
電波法により3000GHz以下を「電波」
と定義され、日本ではこの「電波」を
「電磁波」と呼ぶことが一般的です。
電波には「高周波」と「低周波」がある
低周波
家電製品(電磁調理器、テレビ受像機、
多くの家電製品、電力線など)
高周波
高周波に低周波が混ぜられた変調電磁波が多く、
FM(周波数・変調方式)、AM(振幅・変調方式)
や、携帯電話では高周波と低周波の両方の悪影響
が予想されます。
デジタル(パルス)波はピーク電磁波が強いが
平均値では弱く、また400MHz以上のマイクロ波
では「ホット・スポット効果」(レンズ効果で
電磁波が集中して組織に熱を与えるような効果)
が問題になります。
電磁波をめぐる論争
1959年〜1976年
モスクワ米国大使館が1959年から電磁波照射
を受けていた事件は、1976年になり発覚。
大使や職員に健康被害の疑い
1970年代 ニューヨーク
カナダから電力を輸入する計画に対して
危険性を指摘する訴訟が起こり、
「ニューヨーク州送電線プロジェクト研究」
が行われる
1987年 アメリカ
アメリカの「ザビッツ報告」では
小児白血病の増加を指摘
1992年、スウェーデン
「カロリンスカ報告」で世界的な問題に
レーダー殺人事件
第二次世界大戦中は「レーダ操作は連続
4時間以内」と勧告されていました。
レーダの前を横切った軍人が死亡
しましたが、死因は体内が煮えきって
いたからということでした。
このレーダ殺人事件が、電子レンジ
の開発と普及の契機になったという
恐ろしい話もあります。
次第に危険性が問題になる
1996年頃、テレビや電話へのノイズ、電車の
ドアが走行中に全開する、ペースメーカーへの
影響、病院機器の誤作動等が問題になり、よう
やく日本でも話題に上るようになりました。
1993年、アメリカ最大の電力公社テネシー渓谷
電力(TVA)は、高圧送電線は学校・病院から
1200フィート(約400m)以上離すことを決定。
カリフォルニア州アーバイン市やスウェーデン
でも、電力線に関して配慮をしています。
欧米では、1980年代からVDT(ビデオ・
ディスプレイ端末)の危険性が問題となり
スウェーデンでは1990年にVDT規制が開始。
被曝量が多いと指摘された電気毛布
には、磁場を10分の1まで低減化した
ものも登場しています。
携帯電話の普及とともに
電話塔の建設が急増し、欧米、日本
ともに、住民の建設反対運動が続発
するようになりました。
1997年、ニューヨーク州サン・ジョア群島
では「塔は私有地から500フィート(150m)
以上離せ」という条例ができ、モトローラ社
の社内指針は「携帯塔は50m以上民家から
離せ」です。
2000年、イギリスでは独立専門家グループが
「子どもの使用に警告」「安全証明が不十分
なので研究推進を」等の勧告をしています。
日本では
八王子・金沢で携帯電話等建設中止、
静岡では完成した携帯電話タワーを撤去、
神奈川・京都の小学校周辺などのPHS
アンテナ撤去(1998年1999年)
などの市民運動が起こってきました。
大分県由布院町、東京都羽村市、盛岡市は
条例で定めて自治体が歯止めとなっています
が、欧米からは大幅に遅れているのが現状。
欧米では電磁波対策なしでは電気製品は
売れなくなりつつありますが、日本では逆に
「オール電化」推進キャンペーンが盛んです。
WHOもガンの可能性があるとして各国に
予防策を要請し、日本で実施中の小児ガンの
疫学研究もWHOを支持していますが、文科省
はその研究に「最低評価」を下しています。
「暮らしの手帖」がガスレンジを支持し、
電磁調理器を批判して話題になったこと
もありました。
ここでもう一度、荻野晃也さんの
言葉を思い出してみましょう。
「100%の危険証明がされていないことを
『安全証明』と考えるべきではない」
(参照/「京都大学学術情報リポジトリ「紅」)