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ニオイ分析機器はまとめたニオイはわからない
調香師などの香りの専門家ではない
普通の人では、たくさんの化合物が
集まってできたニオイの成分を一つ
一つ嗅ぎわけることはできません。
成分の一つ一つはわかりませんが
全部をまとめて一つの香りと
して感じることはできます。
ここが人間と分析機器との違いです。
分析機器は、一つ一つの成分を
分析することはできますが、全部を
まとめたニオイはわからないのです。
ごくわずかな量でも強いにおいと感じる「相乗作用」
ニオイを合わせることは、単純な足し算
ではなく、相互作用が複雑に絡み合って
ニオイを生み出しています。
いくつものニオイが混ざり合うことにより
様々な相互作用が起こり、別々ではさほど
感じないニオイが、混ぜると強く感じられ
ることがあります。
量的に多く含まれる成分が、必ずしも
全体のニオイとはいえないことが
悪臭対策を難しいものにしています。
分析機器で測定してみると、ごくわずか
の分量しか含まれないニオイであっても
相乗作用の結果、強いニオイと感じられ
るということがあるからです。
ニオイが弱く感じられる「相殺作用」
相乗作用とは反対に、混ぜ合わせる
ことにより、ニオイが弱く感じら
れる相殺作用もあります。
これを「感覚中和」といいますが
この場合、ニオイはしなくても
消えたわけではありません。
測定器で濃度を測ると減っていない
のですが、感覚的には何のニオイも
しないということになりますので
悪臭対策に使われています。
嗅神経細胞で生じている調整作用
今年、2020年7月1日に、「匂いを
嗅ぐ時に嗅神経細胞で生じる多様
な調節作用」について、
九州大学大学院医学研究院の今井猛教授
らと、日本学術振興会、理化学研究所
との共同研究による興味深い結果が
発表されました。
哺乳類の鼻の中にある嗅神経細胞には
人間では約400種類、マウスでは
約1000種類の嗅覚受容体があります。
ニオイセンサーである嗅覚受容体の
組み合わせにより、多様なニオイ分子
を識別できると考えられています。
今までの研究では、ニオイ分子は複数
の嗅覚受容体の「活性化パターン」と
して認識されているのではないか、
また、ニオイの混合物は活性化パターン
の「足し算」として認識されている
のでは?、と考えられてきました。
(実験方法は、細胞内に流入した
カルシウムイオンから興奮度合いを
知るカルシウムイメージングの手法
を用い、嗅神経細胞でカルシウムセ
ンサーを発現するトランスジェニック
マウスの匂い応答を測定)
「活性化」と「抑制」両方のパターンがあった
しかし研究の結果、嗅神経細胞の中には、
1「匂い刺激に対して興奮するもの」の他に
2「刺激がなくてもある程度興奮しているもの」
があり、
その中には
3「匂いを嗅ぐことで興奮度合いが抑制される」
ものも多くあることが分かったのです。
つまり従来の説とは異なって、ニオイ分子
は嗅覚受容体の「活性化」と「抑制」の
両パターンによって認識されている
可能性があるということでした。
個々のニオイ分子への応答より「大」「小」
次に、ニオイ分子の混合物が
嗅神経細胞で、どのような反応
を示すかを調べた結果は、
個々のニオイ分子に対する
応答よりも小さくなる
「拮抗作用(阻害)」や、
個々のニオイ分子に対する応答の
足し算よりもはるかに大きくなる
「相乗効果(増強)」
が確認されました。
「相乗作用」を生かして作られる香水
相乗作用により、僅かでも強く感じられる
というにおいの足し算の特性を活かし
て作られているものに香水があります。
香料の調製時において経験的に知られて
いたことではありますが、今までそれは
脳の中枢で生じると考えられてきました。
しかし今回の研究により、
末梢の嗅神経細胞で既に起きている
ことが明らかになったのです。
かおりの不思議な世界
今回の研究結果では、ニオイ分子の
嗅細胞刺激によ理、興奮ではなく
抑制も起きるということ、
ニオイ分子の混合物が、個々の
ニオイ分子に対する応答より大きく
なったり、小さくなったりすること、
今までは脳の中枢で起きると考えられ
ていたこれらのことが、既に抹消神経
細胞で起きていたという事実には
興味を覚えずにいられません。