「フィナンシェ」と「マドレーヌ」の5つ違い 

「あぷりのお茶会」へようこそ!

 

150421matyafinanshe

 

 

「ヴィジタンティーヌ」=「フリアン」

前回は、フランス人の女性の名前がついている
マドレーヌ(「プルーストさんもお気に入り
マドレーヌさんが作った
『マドレーヌ』」)の
御紹介でしたが今日は「フィナンシェ」です。

 

「フィナンシェ(financier)」は「フリアン
(friand)」とも呼ばれるフランスの焼き菓子。

 

「フリアン」とは「至上の味」の
意味を持つフランス語ですので
それほどおいしいということですね。

 

「フィナンシェ」は、古くは「ヴィジタンティーヌ」
という名前だった、とWikipediaには書いてある
のですが、両者は違うところもあるようです。

 

 

 

regionals_201208_02ヴィジタンティーヌ
(写真/「アルティザン・テラ」)

 

 

 

「フィナンシェ」→「ヴィジタンティーヌ」?

フィナンシェは100年ほど前のパリ生まれ。
一方、ヴィジタンティーヌはナンシー生まれですが
その起源は中世にまでさかぼのるそうです。

 

フィナンシェとヴィジタンティーヌの材料は同じです。
しかし、フィナンシェは卵白を生地に入れるのに対して
ヴィジタンティーヌは、泡立てた卵白を混ぜます。

 

 

1f69b486d0155e573f249fa52fe8b4d1泡立てた卵白を入れるヴィジタンティーヌ

 

 

焼き型も違うので、厳密にいえば
両者は別のお菓子といえます。

 

日本のオンラインショップでもヴィジタン
ティーヌを購入することもできますし。

 

現在フランスでは、フィナンシェの方が
圧倒的に多く、ヴィジタンティーヌを
見かけることは少なくなったとか。

 

まあ、フィナンシェの御先祖様がヴィジタンティーヌ
ではありますが、完全にフィナンシェに移行したという
わけではなく、ヴィジタンティーヌはヴィジタン
ティーヌとして今でも健在ということなのでしょう。

 

 

 

「マドレーヌ」

 

 

 

フィナンシェと、ヴィジタンティーヌも
かなりそっくりさんですが、実は私は
マドレーヌとフィナンシェがごちゃごちゃ
になってしまうことが多いのです。

 

前回のマドレーヌの下書きにも
フィナンシェと書いてしまったほど……。

 

そこで似ているけど、やっぱり違うマドレーヌ
とフィナンシェの違いをみてみましょう。

 

 

「フィナンシェ」

 

 

 

「フィナンシェ」と「マドレーヌ」の違い

1 かたち

2 材料(マドレーヌは小麦粉、
 フィナンシェは小麦粉とアーモンドプードル)

3 材料(マドレーヌは全卵、
    フィナンシェは卵白のみ)

4 材料(マドレーヌは溶かしたバター、
    フィナンシェは焦がしたバター)

5 味(マドレーヌはしっとり、
   フィナンフェはサクサク、でしょうか?)

 

 

典型的な貝殻型の「マドレーヌ」

 

 

 


1 かたち

形が違うのはすぐわかりますね。
フィナンシェは、長方形
(今日、御紹介のフィナンシェは正方形ですが)

 

マドレーヌは、貝殻(ホタテガイ)のかたち。
(丸く平たいものもあります)

 

「フィナンシェ」の意味はフランス語で
「金満家」や「お金持ち」を意味する言葉だそうです。
だからフィナンシェの形は金塊を模してあるのですね。
と思いきや、別の説もあるようです。

 

 

150421finanshemattya最初、この「フィナンシェ」は金塊に
似ていないと思っていましたが、似ていますね

 

 

120年ほど前の、パリ証券取引所の付近に
あったお菓子屋さんが、証券取引所で働く人たちが
着ているスーツを汚さずに、素早く食べられるもの
をと考えたのがフィナンシェだということです。

 

トランプゲームをしている時に食べやすいように
サンドイッチが考えられた、という話と似ていますね。
金塊説よりこちらの方が有力だということですが。

 

 

サンドウィッチ伯爵が考え出した(?)
「サンドイッチ」

 

 

 

2 材料(小麦)

前回、マドレーヌを御紹介した時に
材料はおおまかにいいますと

 

「小麦粉:卵:バター:砂糖」が
「 1 :1: 1 : 1 」

 

と同量ということでした。

 

フィナンシェも、材料はマドレーヌとほぼ同じ
なのですが、それぞれがちょっと異なります。

 

マドレーヌが小麦粉、卵、バター、砂糖
が同量ということですが、

 

フィナンシェは、小麦粉にアーモンドプードルが
入り、小麦粉とアーモンドプードルの割合は
大体同じ、半々位で、下のような配合になります。

 

 

アーモンドプードル

 

 

マドレーヌ
小麦粉:卵:バター:砂糖
1 ;1 :  1 :   1

 

フィナンシェ
(小麦粉、アーモンドプードル):卵:バター:砂糖
   1          :1:    1 : 1

 

 

 

3 材料(卵)

マドレーヌは卵黄、卵白と全卵を使うのに対して
フィナンシェ卵白のみを使用します。
そして先ほど書いたように、卵白は
泡立ててから生地に加えます。

 

 

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4 材料(バター)

マドレーヌは、溶かしたバターを使い
フィナンシェは、焦がしたバターを使います。

 

日本でのフィナンシェの作り方のサイトには
バターを焦がすことは記載されているのですが
調理法以前の問題として、フランスでは
「発酵バター」を使うのだそうです。

 

フィナンシェには発酵バターを使用する、
ということではなくヨーロッパでは
バターといえば発酵バターなのだとか。

 

 

 

 

 

自然が作り出した(?)発酵バター

遠心分離機がなかった時代にバターを作る
には、牛乳から生クリームを分離するのに
2、3日ほどかかりました。

 

その間に生クリームが自然に発酵して発酵バターに
なったのではないか、ともいわれているようです。

 

しかし現在では、生クリームの自然発酵
を待たずに、乳酸菌を加えて作ります。

 

 

麻布野菜菓子の「トマトのフィナンシェ」

 

 

ヨーグルトにも似た、わずかな酸味と
香りの高さが特徴ということですので
これは是非、一度は味わってみたいですね。

 

そうそう、フィナンシェとマドレーヌの違いの
5番目、味の違いですが、これは皆さんが
実際に味わって比べてみて下さいね。

 

 

 

愛国製茶の「フィナンシェ」

最後になりましたが、今日の冒頭の写真の
フィナンシェは、愛国製茶のものです。
左が「ほうじ茶フィナンシェ」で
右が「抹茶フィナンシェ」。

 

 

150422finansheフィナンシェ
左が「ほうじ茶」、右が「抹茶」

 

 

ほうじ茶フィナンシェ(Carreu Marron)の原材料名は、
「卵白、グラニュー糖、バター、アーモンドプードル、
薄力小麦粉、焙じ茶、ベーキングパウダー、香料、塩
特定原材料:乳・卵・小麦」で149キロカロリー。

 

抹茶フィナンシェの方は、
「卵白、グラニュー糖、バター、アーモンドプードル、
薄力小麦粉、抹茶、香料、塩
特定原材料:乳・卵・小麦 」で139キロカロリー。

 

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プルーストさんもお気に入り、マドレーヌさんが作った「マドレーヌ」

「あぷりのお茶会 赤坂・麻布・六本木」へようこそ!

 

140828finabshe

 

 

卵:バター:砂糖:小麦  1:1:1:1

東京ミッドタウンにあるディーン&デルーカ
で買った「マドレーヌ」です。

 

原材料名は、
卵、バター、砂糖、小麦粉、
アーモンドプードル、はちみつ、香料、膨張剤。

 

 

アーモンドプードル

 

 

「マドレーヌ」の材料は、おおざっぱに言えば、
原材料名の最初の4つ、

 

「卵」「バター」「砂糖」「小麦粉」が同量で、
 :     :    :  
それにベーキングパウダー等を加えたものです。

 

それにレモンの表皮をすりおろしたり、
バニラエッセンスやブランデーを加えたり
アレンジとしてチョコチップ等を
入れることもありますね。

 

今日のディーン&デルーカの「マドレーヌ」
は基本的な「マドレーヌ」でした。

 

 

121022hosi2

 

 

 

マドレーヌさんが作ったお菓子

マドレーヌいうフランスの女性の名前が
ついている理由は、この焼き菓子を最初に
作ったのが、マドレーヌという名前の
女性だったからといわれています。

 

ただし「マドレーヌ」を考案した
といわれているマドレーヌさんは
一人ではなく、何人かいるようです。

 

ということは焼き菓子の「マドレーヌ」
の発祥については、はっきりとしたこと
はわからないということですね。

 

 

141209rosenthalmagicfluteteacup

 

 

 

マドレーヌ・ポルミエ説

1755年、フランスのロレーヌ公・スタニスラス
のために、マドレーヌ・ポルミエが
作ったといわれている説があります。

 

マドレーヌ・ボルミエはスタニスラス
の館で召使いとして働いていました。

 

ところが、その館のパティシエと料理長が
喧嘩をして(!)出て行ってしまったために
彼女が急遽、作ったお菓子が「マドレーヌ」
だったというわけ。

 

彼女は台所にあった材料を
ホタテガイの貝殻で焼きました。
このお菓子は、彼女がおばあちゃん
から教えてもらったもの。

 

マドレーヌ・ボルミエは、フランス
のコメルシー出身の女性ですが
コメルシーではお菓子の「メドレーヌ」
が、現在でも名物として売られて
いるそうです。

 

 

commercy  の位置がコメルシー(Commercy)

 

 

 

マドレーヌ・シナモン、他

次は、マドレーヌ・シナモン説です。
こちらは1661年といいますので
ロレーヌの「マドレーヌ」発祥説より
約100年ほど前のことになりますね。

 

枢機卿のポール・ドゥ・グロンディが
お抱え料理人、マドレーヌ・シナモンに
作らせたお菓子が「マドレーヌ」。

 

この他には、スペインのサンティアゴ・
デ・コンポステーラへの巡礼のために
マドレーヌという女性が作ったという説
もあるようです。

 

「マドレーヌ」は丸い形のものもあります
がなんといっても、やはりホタテガイの
かたちが特徴的でかわいいです。

 

今日の記事を書いて初めて知りましたが
本物のホタテガイを使って「マドレーヌ」
を焼いたのですね。
びっくり!

 

 

140828finabsheディーン&デルーカの「マドレーヌ」

 

 

 

「マドレーヌ」といえば『失われた時を求めて』

そしてもう一つ、「マドレーヌ」といって忘れて
ならないのは、マルセル・プルーストの『失われた
時を求めて(A la Recherche du Temps Perdu)』
という超々長編小説。

 

紅茶に浸したマドレーヌをスプーンで口元に
運んだ主人公の脳裏に、鮮やかに浮かんだ
幼い頃の思い出、そこから物語は始まります。

 

たしかにものと場所は異なっても
このような経験は、誰にでもあることでしょう。

 

 

130823rosenthalteapot

 

 

 

キンモクセイが連れて行ってくれる幼い日

例えば私は、キンモクセイの香りを嗅ぐと
小学生のある日、放課後に野原に
友だちと行ったことを思い出します。

 

その日が特別な日だったわけでも
特に嬉しいとか悲しいとかの思い出に残る
感情が伴っているわけでもありません。

 

一緒に行った友だちが、誰だったかすら覚えて
いないというのに、キンモクセイの香りは
いつも決まって「その時」に私を運ぶのです。

 

 

130430tokyomidtownkinmokuseiキンモクセイの花(東京ミッドタウン)

 

 

 

大脳新皮質にダイレクトに

それは、キンモクセイの花を見たから
「あの時」を思い出したというのではなく
キンモクセイがあるのを知らなかったと
しても同様の結果をもたらします。

嗅覚は他の視覚や聴覚等と違い、香りを
嗅いだ時に鼻の粘膜から、脳に直接に
働きかけるので、そのような現象が
起こるのだそうです。

 

嗅覚以外の感覚からの情報は
まず「大脳新皮質」にいき、
その後に「大脳辺縁系」に届きますが、

 

嗅覚だけはその情報が「大脳新皮質」
通さずに、直接「大脳辺縁系」に送られます。

 

 

kyukaku(イラスト/健康管理情報」)

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
嗅覚以外 → 「大脳新皮質」「大脳辺縁系」
嗅覚   → 「大脳辺縁系」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

このイラストでは「大脳辺縁系」を「古い脳」
と表記してありますが、大脳辺縁系は喜怒哀楽
の情動の表出や、食欲等の本能、睡眠や夢など
に関連し、原始的な部分を司っているものです。

 

「大脳新皮質」の「新しい脳」の意味は
進化的に新しい部分の意味。

 

大脳新皮質は、合理的、分析的な考えや創造性、
意欲、長期的な記憶、言語機能を司るものです
ので、下等生物より高等生物の方が大きいよう。

 

 

140828fenanshe「マドレーヌ」ディーン&デルーカ

 

 

 

「プルースト効果」

『失われた時を求めて』では「マドレーヌ」の
香りが過去の記憶を引き起こしますが、このよう
な心理現象を「プルースト効果」と呼びます。

 

ところで「マドレーヌ」で有名な
(って、逆ですが!)20世紀を代表する
フランスの作家、マルセル・プルーストの
『失われた時を求めて』を私は数十年前に
読んだ記憶があります。

 

 

 

 

ちなみにマルセル・プルーストの名前ですが
ヴァランタン=ルイ=ジョルジュ=
ウジェーヌ=マルセル・プルースト、

 

(フランス語では、
Valentin Louis Georges Eugène Marcel Proust)
という長いものだそうです。

 

私は長い名前のプルーストさんが書いた長い小説
『失われた時を求めて』を読んだことは読んだの
ですが、残念ながらあまり覚えていなくて……。

 

覚えていることは、ただ、ただ長い!、
という情けない感想のみです。

 

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「つばき」と「さざんか」 「椿」赤坂「青野」

「あぷりのお茶会 赤坂・麻布・六本木」へようこそ!

 

121230tuba

 

 

赤坂「青野」の「椿」、2月バージョン

今日のお菓子は赤坂「青野」の「椿」。
赤坂「青野」は、1月と2月に「つばき」のお菓子が
でますが、今日の写真は2月バージョンの「つばき」です。

 

1月と2月の「つばき」を作り分けるとは
なんとも繊細な美意識ですね。

 

そういえば桜も「つぼみ」「満開」「八重桜」と
作り分けていましたし、紅葉もそうでした。

 

こんなふうに美しいものに優しい眼差しを注ぎ
心を込めて細やかに作り出される和菓子は素敵ですね。

 

 

130101tubakiuka白い「椿(つばき)」

 

 

 

椿の季語は冬

赤坂「青野」の「椿」が1月、2月のお菓子として
紹介されていることからもおわかりのように
「つばき」は春の季語。

 

本来は日本では季節は次のようになっています。

 

1月2月3月 4月5月6月 7月8月9月 10月11月12月
 春               

 

「椿」という字からして、木偏に旁(つくり)が春。
「椿」は日本で作られた国字です。

 

このような字の作り方は遊び心さえ
感じられて、なぞなぞみたい。
この方法で国字ならぬ「私字」も創作できるかも。

 

 

140228tubaki赤坂サカスの隣りのビルに咲いていた赤い「椿(つばき)」

 

 

 

中国で「椿」というと「山茶」のこと

「椿」という字は国字とされていますが
中国でも「椿」という文字はあるそう。

 

ですが中国で「椿」という字が示す植物は
今日御紹介の「つばき」ではなく
「山茶」を指すのだとか。

 

「山茶」といったら日本では「山茶花(さざんか)」
のことですので、なにやらこんがらがってしまいますね。

 

 

sazanka「山茶花(さざんか)」
(写真/「私の花図鑑」)

 

 

 

「つばき」と「さざんか」

ここで「山茶花(さざんか)」が出てきましたが
「つばき」と「さざんか」の花は
よく似ているといわれます。

 

両方とも、ツバキ科ツバキ属ですので
似ていて当然なのですが。

 

先ほど、木偏に春と書く「つばき」が春の季語
と申しましたが、一方「さざんか」の季語は冬。

 

種類によって時期が異なるものもあるそうですが
大まかにいって「さざんか」は10月〜12月が花の時期
で、「つばき」は、12月〜4月に咲くということです。

 

 

140316higasinaha450「椿(つばき)」と水仙の干菓子

 

 

 

落ちる「つばき」に散る「さざんか」

「つばき」と「さざんか」の違いはいくつもある
ようですが、なんといってもわかりやすいのは
「つばき」が落ちる時は、花びらが別々に散る
のではなく、一つの花ごとポトッと落ちること。

 

江戸時代には「つばき」の花が落ちる様を、首が落ちる
斬首を連想して縁起が悪いなどともいいました。

 

そういえば前に松月」の餡に使う
あずきの話
もそうでしたね。

 

大粒のあずきの大納言は、煮た時に皮が破れる
という「腹切れ」がないので、切腹のない
公卿の官位である「大納言」と名づけられたと。

 

 

150717siratamazenzaishougetu大納言が使われている「松月」の白玉ぜんざい

 

 

また、うなぎの蒲焼きも同様で、お腹を切らずに
背開きにするのも(関西では腹開きだそうですが)
腹開きが切腹を連想されるからに他なりません。

 

武士にとっては斬首、切腹ということは常に背中合わせ。
覚悟を秘めながら日々を生きていたのかもしれません。

 

花全体がぽとっと落ちる「つばき」とは違い
「さざんか」は、一ひらずつ花びらが散って行きます。

 

このように「つばき」は落ちて、「さざんか」や
桜は散って行き、牡丹はくずれて梅はこぼれる、
との言い換えも美しいですね。

 

 

blog_import_51536863b4556白い椿「(つばき)」の花と虫食いの葉っぱ

 

 

 

花のかたちや開く様

その他の違いとしては花が咲いた時の横からのかたちは
「つばき」は次の写真のように「V」に近いですが
「さざんか」は「—」と、横に手を
広げたように花が開きます。

 

 

 130312tubaki花のかたちが「V」字型の椿(つばき)」
(赤坂の本氷川坂に咲いていた薄紅色の「つばき」)

 

 

おしべの形状も異なり、「つばき」の
おしべは筒状ですが、「さざんか」のそれは
筒状ではなく、放射状(?)です。

 

次の写真はちょっと小さいのですが、「つばき」の
おしべが筒状になっているのが御覧になれるでしょうか?

 

赤坂「青野」の上生菓子の「つばき」も
おしべの形を正確に表現していますね。

 

 

121230tuba「椿(つばき)」 赤坂「青野」

 

 

これら以外には、葉のふちがギザギザ(鋸葉)
しているのが「さざんか」で、ギザギザがなく
つるっと直線になっているのは「つばき」と
よくいわれますが、そうでもないようです。

 

また、葉脈を太陽に透かしてみて白いと
「つばき」、黒ければ「さざんか」とも
いわれますが、これも違うよう。

 

例えば、寒椿という名前からもわかるように
春ではなく冬に咲く「つばき」は、先ほど挙げた
「つばき」の特徴である、筒状のおしべもなく、
花はV字に開かずに平に開きます。

 

こちらは今日の夕方、麻布で撮った「つばき」ですが
「V」ではなく、平たい「—」の形に咲いています。

 

 

160219akaitubaki平たい形に咲いている「椿(つばき)」
(麻布)

 

 

というようにいくつもの例外があるようですが
「つばき」と「さざんか」の違いは
このようにいわれています。

 

1 花の落ち方(「花ごと」と「花びら」)
2 花の形(「V」と「—」)
3 葉のふち(「ギザギザ」と「直線」)
4 葉を太陽に透かした時の葉脈の色の違い
          (「白」と「黒」)

 

私自身は「さざんか」の葉よりも「つばぎ」のほうが
大きくてツヤツヤしっかりとしている気もします。

 

 

 

「椿餅」

そんなツヤツヤのしっかりした「つばき」の葉っぱ
だからこそできるのが、和菓子の「椿餅」。

 

 

「椿餅」

 

 

今考えてみましたら何年も、いえ十年以上も
頂いていませんが「椿餅」はおいしいですね。

 

白あずきの餡を、道明寺粉のお餅で包み
それを二つの「つばき」の葉っぱで挟んで
白椿の花に見立てたお菓子です。

 

道明寺粉がつぶつぶしていておいしくて。
私は道明寺粉が大好きなのですが
それはまた別の機会にでも。

 

 

140316higasihana「つばき」と水仙の干菓子

 

 

 

ベルディの『椿姫』

このように「椿」という字からして国字で
ある「つばき」は、本当に日本的な花、
という印象を私はかつて持っていました。

 

ですが、ふっと海の向こうの国々を見回しますと
それがそうでもないのですよね。

 

ヴェルディのオベラに『椿姫』というものが
ありますし、ファッションで有名なココ・シャネル
のブランド『シャネル』は、

 

「つばき」の花・カメリカをモチーフにした
ブローチなどがたくさんありますものね。

 

 

赤坂プリンスクラシックハウス

 

 

 

ベルディ『椿姫』

ジョゼッペ・ヴェルディの有名なオペラ
『椿姫』は、1848年にアレクサンドル・デュマ・フィス
(小デュマ)が書いた小説の『椿姫』を
1853年にオペラ化したものです。

 

ディマの小説の題名は『椿姫(La Dame aux camelias)』、
「椿の花の貴婦人」というもの。

 

一方、日本ではオペラの方もディマの小説と同じように
『椿姫』と呼びますが、ヴェルディが作った
オペラとしての題名は『ラ・トラヴィアータ』です。

 

「ラ・トラヴィアータ(La traviata)」とは
「道を踏み外した女」という意味。

 

 

赤坂プリンスクラシックハウス

 

 

数十年間前、私が海外で初めて見たオペラが
この「ラ・トラヴィアータ」でした。

 

オペラに招待していただいた夜は、旅に連れて行って
下さった先生と私達3人は旅の疲れが出ていた日。
これは寝てしまうね、と残念に思っていたものです。

 

そこで寝てしまうのはしょうがないけど
「いびきをかいたら起きている人が起こそう」

 

 

 

 

 

そんな約束をしながら見始めた『椿姫
(ラ・トラヴィアータ)』でしたが、幕が開いた瞬間、
みんな舞台に目が釘付けになりました。

 

さほどオペラが好きというわけでもなく、また詳しく
もない私が、眠たいどころか息をするのも忘れるほど。
初めて見たウイーンのオペラに
心を奪われてしまったのです。

 

 

 

「つばき」をつけているけどビオレッタ(すみれ)

その時に『ラ・トラヴィアータ』が
「道を踏み外した女」という意味を持つ
ということを知り、深く心に残りました。

 

 

160219sirotubaki白い「椿(つばき)」(麻布)

 

 

今、これを書くためにネットで検索して
みましたら、「ラ・トラヴィアータ」は
「堕落した女」と訳されていました。

 

「道を踏み外した女」は直訳だと説明されていて、
それはその通りなのでしょうが、私には「堕落した女」
より「道を踏み外した女」の方が、美しい題名
のようにも思えますが、いかがでしょう?

 

一月のうち25日を白い「つばき」の花を、
後の5日を赤い「つばき」をつけていた
ということから「椿姫」と呼ばれていた主人公。

 

とはいえ主人公の名は、オペラでは
「ビオレッタ(すみれ)」です。

 

 

130504bach

 

 

 

『道を踏み外した女』

オペラの「道を踏み外した女」あるいは「堕落した女」
といわれる主人公は、19世紀中頃にパリで暮らしていた
実在の高級娼婦がモデルといわれています。

 

ウィーンで初めて『椿姫』を見た時に
『ラ・トラヴィアータ(道を踏み外した女)』と
いうタイトルに、なぜか他人事とは思えない
不思議な思いを私は抱きました。

 

私はその時は(!)、何一つ道を
踏み外してはいなかったのに……。

 

そしてその日以来、『ラ・トラヴィアータ』
という言葉は、私の心の中にひっそりと
住みつくことになったのです。

 

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