「あぷりのお茶会 赤坂・麻布・六本木」へようこそ!
![](https://i0.wp.com/ochakai-akasaka.com/wp-content/uploads/2022/11/honeybee.jpg?resize=500%2C333&ssl=1)
「女王」とはいうけれど
「女王バチ(queen bee)」と聞くと、たくさんの
働きバチを従えて君臨している凜とした
女王様というイメージを受けます。
確かにある面ではそうなのかもしれません。
ですが、実際に女王バチが4〜5年の寿命の間にして
いることといいますと、これがなかなか大変そうです。
「女王」という華麗な名称とは、少々異なる
女王蜂の日々のお仕事をちょっと見てみましょう。
![](https://i0.wp.com/ochakai-akasaka.com/wp-content/uploads/2023/02/bee-1.jpg?resize=400%2C266&ssl=1)
毎年、同じ場所、同じ時間に集合のナゾ
卵から孵った女王バチは羽化した1週間から
十日ほど後の、4月から6月の繁殖期に
オスバチ(drone bee)たちと交尾ために出かけます。
* (「ミツバチの不思議」)
女王バチとオスバチが出かけた場所は
他の巣のミツバチたちが集まっている場所。
毎年、同じ集合場所、同じ時間に集まるそうです。
なぜ、彼らにそれがわかるのでしょう?
この情報が次の世代のミツバチたちに
どのように伝えられているのかは、現在はまだ
解明されていませんが、本当に不思議ですね。
![](https://i0.wp.com/ochakai-akasaka.com/wp-content/uploads/2023/02/honey-1.jpg?resize=400%2C300&ssl=1)
交尾後、オスバチは地面に落ちて死ぬ
女王バチは、いつものロイヤルゼリーから、ハチミツ
に食事を変えて体を軽くし、またオスバチもハチミツ
をたくさんもらって集合場所に出かけて行きます。
多くのミツバチが集まったこの場所で、女王バチは
貯精嚢(ちょせいのう)がいっぱいになるまで
複数のオスバチと空中で交尾を繰り返します。
これは近親交配の可能性を低くするためと
遺伝的多様性を高めるためといわれています。
交尾時にオスバチは、交尾器の一部分を
女王バチの体内に残しますが、交尾後
オスバチは地面に落ちて死んでしまいます。
蜂蜜ふらい「松崎製菓」
突然、女王バチがいなくなってしまった時は
交尾はいつも成功するとは限らず、交尾飛行中
に女王バチが捕食されたりことも発生します。
また交尾時に限らず、女王バチが
病気で死ぬという事態も起こること。
そのように女王バチがいなくなった巣では、働きバチ
が卵を生むようになりますが、未交尾の働きバチから
生まれた卵は無性卵で生まれるのは、全てオスバチ
ばかりですので、その群れは消滅してしまいます。
そこで女王バチが急死、失踪した時などは、働きバチ用
の飼育部屋で孵化した幼虫を、急遽、女王バチに
育てるべく専用の飼育部屋・王台を作って移し
ロイヤルゼリーを与えて女王バチを誕生させるのです。
![](https://i0.wp.com/ochakai-akasaka.com/wp-content/uploads/2023/02/honey.jpg?resize=400%2C278&ssl=1)
次の世代のハチの卵を産む
捕食をされることもなく無事、交尾を終えた
女王バチは、巣に戻ると働きバチたちが用意を
した巣房に卵を産み続ける仕事に入ります。
交尾時に貯精嚢(ちょせいのう)に蓄えられた
精子の数は700万個にも達し、女王バチの
生存中は貯精嚢の中で生き続けます。
そして排卵時に、精子が輸卵管から出て来るのです。
排卵数は、毎日1000個から3000個。
その大量の卵を、東京近郊あたりですと2月中旬から
12月中旬までの期間、産み続けるといいます。
貯精嚢に蓄えられた精子を使い、働きバチが用意した
ロイヤルゼリーを食べて、女王バチの寿命である
4〜5年の間、ひたすら卵を産み続けるのです。
女王というイメージとは程遠い
「産卵器械(egg laying machine)」
にすぎない(酒井哲夫)、という言葉には頷くばかり。
ここ(王台)に女王蜂の卵が産みつけられる
卵は、働きバチ→オスバチ→女王バチの順に
女王バチが最初に産むのは
働きバチの卵で、次がオスバチの卵。
オスバチの飼育部屋は、働きバチより
少し大きくできています。
女王バチは、オスバチの卵を産む時は精子を
かけずに産みますので、オスバチには
父親がいないことになります。
(「メスの受精卵・2n」と「オスの無精卵・n」)
そして最後は、次の女王バチ候補の産卵です。
女王バチは1つの巣に必要なのは1匹ですが
女王バチ用の飼育部屋である王台は
複数用意してあるのが普通です。
![](https://i0.wp.com/ochakai-akasaka.com/wp-content/uploads/2015/02/140915painomirptte.jpg?resize=600%2C486&ssl=1)
新女王蜂の誕生
王台の中で、一番最初に生まれた
女王バチが、次の女王バチになります。
新女王バチが、王台の中から外に出てくる時には
「チューーー、チュ、チュ、チュ」と鳴くそうです。
これは「クイーン パイピング」と呼ばれ
他の女王バチに自分の存在を知らせるためと
働きバチたちを制御するために鳴くといわれています。
最初の新女王バチが生まれると
その他の王台は、新女王バチや働きバチたち
によって処分されてしまいます。
また時には、今までの女王バチが老齢だったりすると
新女王バチが誕生する際に、働きバチたちが
今までの女王バチを殺してしまうこともあるとか。
![](https://i0.wp.com/ochakai-akasaka.com/wp-content/uploads/2023/02/yoho-1.jpg?resize=350%2C263&ssl=1)
大量の蜂が巣から出る「分峰」
こうして新女王バチが誕生する頃に、今までの
女王バチは、半数ほどの働きバチたちを連れて
巣を出て、新しい巣を作ることになります。
これを「分峰(ぶんぽう)」といいます。
分峰の合図である「ワーカーパイピング」を出すのは
女王バチではなく働きバチ。(「浦添養蜂園」)
晴れた日の午前中に起こることが多いという分峰ですが
巣から大量のハチが飛び出してきて、巣から半径
10メートルほどは、ハチだらけになるそうです。
「蜂球」(写真/「東京葛飾
堀木菖蒲園またはお花茶屋発」
新しい巣を作る準備
大量のミツバチたちが巣の上空を旋回した後に
近くの木の枝に、一時的に大きなボールのような
形で集まるのが「蜂球」(上の写真)。
このままの状態で数時間から数日、待機しています。
偵察隊のハチたちが、新たな巣に
ふさわしい場所を物色に行きます。
戻ってきた偵察隊が紹介する候補地を協議した後、
移転先を決めますが、この決定には何時間も
あるいは何日もかかることがあるそうです。
![](https://i0.wp.com/ochakai-akasaka.com/wp-content/uploads/2023/03/endou.jpg?resize=600%2C485&ssl=1)
(「協議」だの「決定」だのって、どういう意味?、
*と思うでしょう?
*実はこれ、ミツバチのダンスという
*彼らの「言葉」があるのです。
*ちょっと長くなりますので、次回にお話しましょうね)
そうして決めた場所にミツバチたちは移り
新たな巣作りに入ります。
ミツバチは群れごとに独自の臭いがあり
体臭で仲間を認識しているようで、体臭が異なると
敵とみなされ攻撃されてしまうようですよ。
![](https://i0.wp.com/ochakai-akasaka.com/wp-content/uploads/2013/11/150528thicupkikkou.jpg?resize=600%2C475&ssl=1)
本当に「女王」待遇なの?
最後に、女王バチの「女王」について思うことをを少々。
あくまでも私の勝手な考えに過ぎませんけれど。
1 ロイヤルゼリーを与えられている
確かに女王バチは、王台という広い飼育部屋で
育てられますし、ロイヤルゼリーも与えられるという
特別待遇を受けています。
ですが女王バチは卵を産み、貯精嚢に一生分の
産卵用の精子を保存するため大きな体が必要なので
その為に与えられているともいえます。
先ほど出てきたように、交尾に出かける時は、ロイヤル
ゼリーではなく、ハチミツを食べて体を軽くする、
ということからもわかるように、ロイヤルゼリーが
栄養、質量ともにヘビーだということが伺えます。
![](https://i0.wp.com/ochakai-akasaka.com/wp-content/uploads/2015/06/150528teapothuji.jpg?resize=600%2C475&ssl=1)
ということは、ロイヤルゼリーを与えられるのは特権
ではありますが、贅沢が許されるというよりは、
体を大きするためや、卵を産み続けるために必要な
栄養ということに過ぎないのではないかという気も。
また、ロイヤルゼリーを与えられて体が大きく
なるということは、1回の交尾旅行で一生分の
産卵用の精子を保存することに役立ちます。
4〜5年の寿命の間、必要量を蓄えられる体の
大きさがあれば、何度も交尾に行かなくてすみ、
したがって危険の可能性も低くなるわけです。
![](https://i0.wp.com/ochakai-akasaka.com/wp-content/uploads/2014/12/160921katabami.jpg?resize=600%2C475&ssl=1)
2 働きバチに世話をしてもらう
女王バチの世話は働きバチがしますが、これも
先ほどと同様で、国王や王妃の世話をする従者
というよりは、産卵を続ける女王バチには
必要な措置に過ぎないのではという気もします。
人間の妊娠時とは異なるものの、女王バチが一生分の
精子を蓄え、大量に産卵を続けている状態というのは
やはりそれなりの介助が必要なのかもしれません。
女王バチは毎日、大量の卵を産む「産卵器械にすぎない」
ともいわれることを、先ほどお話ししました。
![](https://i0.wp.com/ochakai-akasaka.com/wp-content/uploads/2011/10/130518hurututaruto.jpg?resize=600%2C496&ssl=1)
一見、女王待遇に見える、ロイヤルゼリー与えられ、
働きバチに世話をしてもらうことも、もしかしたら
「産卵器械」であり続けるために必要な単なる合理的な
措置に過ぎないのではないかという気もするのです。
とはいえ、女王バチ自身が「自分は女王だ」と
言ったのではなく、あくまでも人間が
勝手に名付けただけではありますが、
![](https://i0.wp.com/ochakai-akasaka.com/wp-content/uploads/2015/06/150528thicpukikkou.jpg?resize=600%2C475&ssl=1)
母と子どもたち
考えてみますと、ミツバチの1つのコロニーと
いうのは、血統的には家族でもあるわけで
大抵の場合は女王バチが母親で、働きバチは娘たち、
オスバチが息子ということですからね。
唯一、新女王バチが生まれて、母バチが分峰を
して巣を出た直後は、新女王と働きバチたちの
関係は姉妹ですが、時間の経過に従って、
母と娘たちに移行すると思われます。
ただ彼らはやはり、家族というよりはコロニーであって
群れのため、強いてはミツバチという種の保存のために
行動するよう、遺伝子にプログラムされているのでしょう。
![](https://i0.wp.com/ochakai-akasaka.com/wp-content/uploads/2016/02/130101tubakiuka-1.jpg?resize=600%2C475&ssl=1)
最後はみんな一緒
前回、冬が近くなって食べ物が乏しくなる季節になると
オスバチたちは、働きバチたちに羽根をかじられたり
巣の外に追い出されたりすると書きました。
食料採取、幼虫の世話、掃除、家づくりと補修、門番等、
あらゆることを一手に引き受けている働きバチは、
オスバチのような扱いはされないものの、体が弱って
きたものに関しては、外に出されてしまいます。
そしてこれは、女王バチとて同様。
先ほど、新女王バチが生まれる際に、今までの
女王バチが老齢の時など、働きバチに殺されて
しまうこともあると書いた通りです。
![](https://i0.wp.com/ochakai-akasaka.com/wp-content/uploads/2014/09/140920momiji.jpg?resize=600%2C475&ssl=1)
女王バチだからといって、老齢や病気の時に
大切にされるわけではなく、他のハチと
同じく外に出されて地面に落ちて死ぬのです。
そこには 不満も悲しみもありません。
淡々と死を受け入れる生き物の姿があるのみです。