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人間はなぜ眠るのか?
生活の3分の1を占めている睡眠の
睡眠の本当の意味はわかっていない
などといわれたりもします。
睡眠は、認知機能や脳機能のメンテナンスに
不可欠なもので、不安感、不快感、イライラ感
など、脳細胞の過熱状態にあるニューロンを
休息させリフレッシュさせてくれるものです。
また最近、深い眠りの状態にある時に
脳脊髄液の流入が増えて、脳内の老廃物を
洗い流しているということもわかりました。
う〜っ、すごい、脳内のお掃除ですね。
これらを突き止めたのは、Nina E. Fultz、
Giorgio Bonmassar、Kawin Setsompop等
のアメリカ・ボストン大学の研究チーム。
研究結果は、学術雑誌「サイエンス」
で2019年10月31日に公開されました。
お掃除をしているのはノンレム睡眠時
脳内の老廃物が洗い流されているのは
前回、御紹介した「ノンレム睡眠
(Non- rapid eye movement sleep)」時。
(「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」)
ノンレム睡眠は、眼球が動かずぐっすり
寝ている状態を指し、浅い眠りから
深い眠りに至る4つの段階があります。
______________________
覚醒期
段階 W α波と低振幅速波
______________________
ノンレム睡眠
段階1 入眠期 4〜8Hz α波〜β波
* 低振幅、種々の周波数の波が混在
* 遅い眼球運動、筋緊張やや低下
* __________________
段階2 軽睡眠期 8〜15Hz
* θ波、瘤波、紡錘波、 k-complexes
* __________________
段階3 中等度睡眠期 2〜4Hz θ波〜δ波
* (徐波睡眠)
* __________________
段階4 深睡眠期 0.5〜2Hz θ波〜δ波
* (徐波睡眠)
______________________
レム睡眠
段階5 12Hz β波
* 高周波・低振幅の脳波
* 急速眼球運動と明らかな筋緊張低下
______________________
この段階3と4には、振幅の大きな緩やかな波
(周波数の低い2〜4 Hzの脳波・デルタ波)の
出現が増えることから「徐波睡眠」ともいいます。
睡眠の最初の3分の1に多く見られる
深い眠りの徐波睡眠によって、人は
熟睡感を得ることができます。
しかしその量は、加齢とともに
減少するといわれています。
初めてとらえられた脳脊髄液の動き
ボストン大学の研究チームは、高速撮影
技術を用いて、ノンレム睡眠時における
脳脊髄液の律動を初めてとらえました。
それにより、脳脊髄液の動きと脳波の活動、
血流が密接に結びついていることが判明。
2013年に行った、マウスを対象とした研究
では、脳脊髄液の流れと徐波睡眠が、脳内
の老廃物を除去することに重要な役割を
果たしていることが明らかにされました。
しかし、脳脊髄液の動きについて
はとらえられていなかったのです。
周波数の低い波→血流低下→脳脊髄液が流れ込む
今回の研究では、23歳から33歳までの13名
の成人を対象として、脳波(EEG)ヘッド
セットで脳波を測定するとともに、MRI
(儀軌共鳴断層撮影装置)を用いて、ノンレム
睡眠時の脳脊髄液の様子をモニタリングしました。
すると、脳波において周波数の低い波が
多くなると、脳の血流が低下し、脳脊髄液
が脳内に流れ込むことがわかりました。
ニューロン(神経細胞)が遮断されると
さほど酸素を必要としないため血液が減り
血液が流出すると、脳内の圧力が低下する
ので、脳圧を安全なレベルに保つべく脳脊髄液
が急速に流れ込むもの考えられています。
期待される今回の研究結果
今回の研究成果は、自閉症やアルツハイマー病
などの、睡眠パターンの乱れと関連する
神経障害や心理障害のさらなる解明に向けた
いとぐちの一つとして期待されています。
このような脳波と血流、脳脊髄液との関係が
正常な範囲内での加齢による障害にも影響を
もたらしている可能性もあります。
加齢により睡眠時に、脳波で周波数の
低い波が少なくなる結果
* ↓
脳内の血流が減らない
* ↓
脳脊髄液の流入を妨げ、老廃物が充分流されない
* ↓
有害なタンパク質の蓄積が進む
アルツハイマー病の発症は、特定のタンパク質
の排泄不全の問題であり、その他の脳の疾患も
タンパク質の蓄積に関連しているともいいます。
今後、研究チームは、脳波と血流脳脊髄液が
どのように同期をとっているのかについて
解明を進めていく方針だということです。