10倍のにおいでも、2倍ほどにしか感じない嗅覚

「あぷりのお茶会 赤坂・麻布・六本木」へようこそ!

 

 

 

A点「検知閾値」 B点「認知閾値」

何のにおいも感じられない状態から
においを意識する点を「検知閾値」といい、
さらにそれが何のにおいかわかる地点を
「認知閾値」といいます。

 

次のグラフの、0〜Aまでの間は、におい
は存在していますが、感知することは
できずに「無臭」と感じる場所です。

 

 


「ウエバー・フェヒナーの法則」
(グラフ/「Sunatec」)

 

次の「A」地点が、においの
存在を感知できる最小濃度の
「検知閾値」の場所。

 

そして「B」点にくると
そのにおいが、何のにおいなのか
がわかる最小濃度「認知閾値」です。

 

これらの閾値が小さい化合物ほど
(閾値が小さいほど)、においが
強いということになります。

 

 

 

E点以降はにおいの強さが変わらなく感じる

そして「C」点、「D」点となるにつれ
強いにおいと感じるようになりますが
おもしろいのは、「E」点です。

 

 

横軸の刺激量が、ABCDと増えていくごと
に縦軸の感覚強度が増えていったものが
E点にくると、グラフが横に寝てきます。

 

グラフが横になるということは
感覚的に、においの強さは変わらない
と感じられることを意味します。

 

(「においの感覚強度は、刺激量の
対数に比例する」ということです)

 

 

 

 

 

においが10倍に増えても、感覚は2倍ほど

この放物線の解放程度は
におい物質によって異なります。

 

においの強い化合物の場合は、比較的
高濃度領域まで放物線を描き、におい物質
の量が増すほど、においが強くなります。

 

一方、においの弱い化合物の場合ですと
低濃度領域で解放が終了して、におい物質
の量が増えても、においが強くなりません。

 

「においの感覚強度は、刺激量の対数に
比例する」というのは少々難しいですが、
「刺激量が10倍に増えても、感覚としては
2倍にしか感じられない」ということです。

 

 

 

 

これは、刺激量が10倍に増えた時に
もし比例の関係であったなら、その感覚量
はとても大きな値となってしまいます。

 

そうなれば鼻が壊れたり、あるいは人間が
倒れかねませんので、これは強いにおい刺激
から身を守るための防衛機構といえます。

 

人間の感覚は、幅広い濃度幅を嗅げる
ように、濃度の変化を多少弱めて感じるよう
にして、感じる濃度幅を広げているのです。

 

この特徴のおかげで、人間の
嗅覚は極低濃度から高濃度まで、
バランスよく嗅ぐことができます。

 

 

 

 

 

消臭効果に関しては問題が

感じる濃度幅を広げ、バランスよく嗅げる
のはいいのですが、消臭効果となると
少々問題が生じます。

 

消臭の対象とするにおい物質が 100 ppm
だったとして、このにおい物質を97%
除去し、3 ppmまでに減少したとします。

 

100 ppm  が 3 ppm になったのですから
「100 → 3」という数字だけ見ますと
ほぼなくなったようにも思えます。

 

しかしにおいの感覚としては
「最初のにおいの半分ほど減少した」
ようにしか感じられません。

 

これが 97% ではなく、たとえ99%
の除去であったとしても、やっと
「3分の1減った」程度。

 

このような感覚をもっている
ことは、消臭対策を一層
難しくしているといえます。

 

 

 

 

 

音や振動に対しても同様

この刺激量と感覚量との関係という
特徴は、においに対してだけではなく
音や振動に関しても成り立ちます。

 

つまり、人間が感じる音の程度(dB)は
音の圧力(音圧)の対数に比例するのです。

 

私にはちょっと理解不能ですが
そのグラフをつけておきましょう。

 

 

「ウエバー・フェヒナーの法則」
(グラフ/「Sunatec」)

 

先ほどの「ウエバー・フェヒナーの法則」
を、方眼紙ではなく対数方眼紙に描いた
ものです。

 

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「閾値(いきち)」 においがわかる地点

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嗅覚と味覚は「化学感覚」

人間の五感のうち、視覚と聴覚、
および触覚は物理的な感覚です。

 

それに対して嗅覚と味覚は、化学物質が
舌の上、あるいは嗅鼻腔に達することに
より、はじめて感覚が発生します。

 

「におい」は、常温で発生している
気体(ガス)が、嗅覚を刺激すること
によって感じる感覚のことです。

 

ということから嗅覚と味覚は
「化学感覚( chemical senses)」
といわれています。

 

 

 

 

 

においをもつ化合物は40万種類

現在、地上に存在する約200万種類と
いわれる化合物のうち、約40万種類
の化合物がにおいをもっています。

 

そのうち、人間が香料として使用
しているものは、800種類ほど。

 

私たちは「タバコのにおい 」と一言で
言ってしまいますが、タバコのにおい
には数千種類の成分が含まれています。

 

バラやチョコレートなど私たちが日常生活
で嗅いでいるにおいは、これらの化合物が
数十種類、あるいは数百種類集まったもの。

 

単一の化学物質で構成されているにおいは
学校の理科室や工場の薬品ぐらいのもので
日常生活の中には、ほとんど存在しません。

 

 

 

 

 

感知できる限界の濃度「閾値(いきち)」

最新の分析機器(ガスクロマトグラフィー
など)で調べてみると、においはたくさん
のにおい分子(化合物)で構成されている
ことがわかります。

 

どのくらいのにおい分子(化合物)が含まれて
いれば、人間がにおいとして感じることができ
るかは、それぞれのにおいによって異なります。

 

においとして感知できる限界の濃度
を、「閾値(いきち)」といいます。

 

 

 

 

 

「検知閾値」と「認知閾値」

非常に薄い濃度ですと、人間はにおいを
感じませんが、少しずつに濃くなってきて
ある濃度でにおいの存在を感じる地点を
「検知閾値(けんちいきち)」といいます。

 

そこからさらに濃度を濃くしていくと
においの特定ができるところがきます。
それが「認知閾値(にんちいきち)」。

 

検知閾値は「絶対閾値」ともいい
臭気対策に関して閾値という場合は
検知閾値(絶対閾値)をさします。

 

閾値は通常、濃度で示すことが多く
「%」や「ppm」という単位が使わ
れるのが普通です。

 

 

 

 

ごく薄い濃度では何のにおいも感じない

     ↓

何かのにおいを感じる
(においを感じる最小濃度)「検知閾値

     ↓

何の物質のにおいかわかる
(何のにおいかわかる最小濃度)「認知閾値

 

 

 

 

 

濃度の単位「%」と「ppm」の関係

「%(パーセント)」は100分の1ですね。

 

時々、目にする「ppm(ピーピーエム)」は
「 part per million(パーツ・パー・ミリオン)」
百万のうちに占める割合を示したものですので
「1ppmは、百万分の1」の濃度のことです。

 

 

「%」と「ppm」の関係

100%  = 1.000.000  ppm
10%    =  100.000 ppm
1%    =       10.000 ppm
0.1%    =    1000 ppm
0.01%  =      100 ppm
0.001%   =       10  ppm
0.0001% =      1  ppm

 

 

 

 

 

「ppb」と「ppt」

また、普通の人ではあまり目に
することはないかもしれませんが、

 

「ppb」は「part per billion
(パーツ・パー・ビリオン)」
で「10億分の1」を、

 

「ppt」は「part per trillion
(パーツ・パー・トゥリリオン)」
で「1兆分の1」を表します。

 

 

 

 

 

数ccで東京ドームに充満する物質

100万分の1や、10億分の1の濃度と聞いて
もなかなかイメージしずらいものですが
それほどの単位が必要なほど、微量の
においを人間は感じとるということです。

 

1億分の1、ということは10mの立方体の
中に1ccあるだけでにおいを感じる物質。
この程度のものは、結構たくさんあり
1兆分の1で、感じるものもあります。

 

アミルメルカプタンという、とても強烈
なにおいをもつ成分は、東京ドーム
(容積約124万㎥)にわずか数 cc 垂らし
ただけで、においを感じる物質です。

 

アミルメルカプタンは閾値の
低い物質であり、その閾値は
0.00000078 ppmとされています。

 

 

 

 

 

ヒトは分析器機よりも高感度?

アミルメルカプタンほどではないに
しても、人間はごく薄い濃度でも
においを感じとることができます。

 

カビ臭であるジオスミン、糞便臭である
スカトール、魚の腐敗臭といわれる
トリメチルアミンに関しても同様。

 

ガスクロマトグラフィーなどの最新の分析
器機よりも人間の方が、高感度ににおいを
検出することができるということです。

 

においが強く、薄い濃度でも感じる
ことができるといわれているものは
一般的に分子内に、

 

硫黄(S)を含む化合物
窒素(N)を含んでいる化合物
アルデヒド基をもつ化合物

 

といわれています。

 

人間の感覚内で嗅覚は、飛び抜けて
敏感な感覚であることは間違いない
でしょう。

 

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「調香師」 

「あぷりのお茶会 赤坂・麻布・六本木」へようこそ!

 

 

 

国家資格ではありませんが

1996年に始まった「臭気判定士」
に比べると、調香師という仕事は
多くの方に知られていると思います。

 

調香師は国家資格ではありませんが
民間の「日本調香技術師検定」という
検定が、2010年から始まりました。

 

調香師といえばすぐフランスを思い浮か
べますが、フランス南東部のグラースは
「香水の聖地」として知られた街です。

 

 

 

 

フランスの香水の3分の2以上が作られて
いるグラースは、「ル・ネ(le nez)」、
「ネ(nez)」いう「称号」をもつ人が
最も多い地域だといいます。

 

フランス語で「鼻」を意味する「ル・ネ」は
約6000種類の香りを嗅ぎ分けることができ
る嗅覚をもった調香師に与えられる称号。

 

こちらも制度としての資格ではありません
が、世界で400人ほどしかもたない「ル・ネ」
の称号は、調香師にとっての名誉ある称号
といえるでしょう。

 

 

 

 

 

「パフューマー」と「フレーバリスト」

8000種類以上に及ぶ香料の組み
合わせで香りをつくる調香師には
科学的な知識も必須です。

 

大学の理系学部か、調香師養成コースの
ある専門学校を卒業した後、香料会社等
の研究開発部門で働くのが一般的です。

 

といっても日本では、香水やフレグ
ランスを作る「パフューマー」の
仕事の求人はとても少ないのが現実。

 

 

 

 

それでも香水づくりに携わりたいと
思う人は、外国にいくという道を
選ぶこともあるそうです。

 

それに対して求人が多いのは、食品会社
や香料会社で口に入るものの香りを調合
する「フレーバリスト」と呼ばれる職種。

 

口に入るものといっても、食品という
だけではなく歯磨き粉や薬、タバコなど
の香りもその仕事に入っています。

 

 

 

 

 

嗅覚に影響しないようコンディションを整える

一人前の調香師になるには10年
ほどの期間が必要といわれます。

 

調香師にとって最も重要な嗅覚に
影響を与えないよう、風邪や寝不足等
に注意する体調管理は当然のこと。

 

その上、タバコも吸わず、辛いもの
や味の濃い食事にも注意するという
日々の弛まぬ努力が必要のようです。

 

 

 

 

 

狭き門の「ジボダン香水学校」

1946年に創立し、パリ郊外のArgenteuil
(アルジャントゥイユ)にある「Givaudan
Perfumery School(ジボダン香水学校)」
は調香師を育てる名門校です。

 

入学応募者は3000名、そのうち許可
されるのはたった3名、卒業時にはさら
に少なくなってしまうという狭き門。

 

1人も入学者がいない年もあるという
ことで本当の少数精鋭ですが、2015年
にはシンガポール校もできました。

 

ジボダンのパフューマリースクールの
学生は毎日、1つの成分を一嗅ぎし、
500余りの原材料の中から識別できる
ように自分の鼻を鍛えているといいます。

 

そして同時に、シチリア島の果樹園や
アンダルシアの農園で自然の中に身を置き
パリの美術品や近代建築の探求もします。

 

 

タッセル邸
ビクトール・オルタ設計

 

 

 

天然香料  →  合成香料

現在、売られている香水のほとんどは
科学的に合成した合成香料で作られた
ものです。

 

それ以前の香水は、自然界に存在する
植物や動物から抽出した天然香料で
作られていました。

 

天然のものですので生産量も品質も
毎年、一定というわけにはいきません。

 

ほとんどがオートクチュール社製で
フランスの貴族たちという特権階級のみが
楽しむことができたものだったようです。

 

原料が合成香料に変わってからは
品質が安定した香水を、誰もが手に
することができるようになりました。

 

 

 

 

 

フランソワ・コティ


香水を誰の手にも届くように

伝統にこだわる調香師たちが、それまで使お
うとしなかった合成香料を積極的に使ったの
が、「香水の帝王」といわれたフランソワ・
コティ(1874年〜1934年)です。

 

「シブレー調」という新しい香調を作り
だした彼は、合成香料を使うことで価格を
抑え、誰にでも手が届くものにしました。

 

また、装飾芸術家であるルネ・ラリックに
ボトルのデザインを依頼し、香水瓶を芸術
の域まで高めたことも特筆すべきでしょう。

 

 

ルネ・ラリックの香水瓶「シダ」
こちらはコティの香水ではないよう

 

 

1909年に、ラリックがデザインしたボトル
で世に出た香水「ロリガン」は、ハーブの
オレガノをにおいを効かせた東洋調の香り
で人気になりました。

 

「ロリガン」は、幕末の日本の上流階級
の女性たちにも愛されたということです。

 

 

 

エドモン・ルドニツカ


(センスは)誰にも教えることが

できないし、学ぶことはできない

 

「香水は、人に衝撃を与え、感情を
揺さぶるものでなくてはならない」

 

と言ったのは、20世紀最高の天才調香師
といわれた「偉大な調香師」エドモン・
ルドニツカ(1905年〜1996年)です。

 

1966年に発表された、ディオールの
「オーソバージュ(EAU SAUVAGE)」
は、男性用フレグランスの最高峰と
賞賛されています。

 

日本における昭和のメンズコスメの
ほとんどが、オーソバージュの影響
を受けているということです。

 

庭のスズランからインスピレーションを
得たといわれている「ディオリッシモ」
は1956年の作品。

 

 

 

 

エドモン・ルドニツカのあげる
調香師としての要件

 

1 技術的な知識
2 イマジネーション
3 芸術的な審美眼
4 才能

 

彼の息子、ミシェル・ルドニツカも現在
調香師として活躍していますが、彼は父
がよく言っていた言葉を覚えています。

 

「調香師にとって最も大切なのはそれぞれ
のもつセンスであり、それは誰にも教える
ことができないし、学ぶことはできない」
(「BRUTUS」)

 

という厳しい言葉ですが
まさにそれが真実なのでしょう。

 

 

 

調香師   ジャック・キャヴァリエ・ベルトリュード
(写真/「Pinterest」)

 

〜現代に生きる調香師たち〜

 ジャック・キャヴァリエ・ベルトリュード

「香料を調合する以上の技を
習得しないと調香師にはなれない」

 

「ルイ・ヴィトン」のマスターパフューマー
を務める彼は、「匂いが見える男」といわれ
調香界のモーツァルトと称される名匠です。

 

父親、祖父、曽祖父までもがパフューマー
という彼は、すでに8歳の時に「調香師に
なりたい」と言っていたといいます。

 

父から、一つの匂いに一つのイメージを
記憶するよう教えられた彼のラヴェンダー
のイメージは「おばあちゃん」だそう。

 

 

 

 

毎晩、父から香料を浸した試験紙を渡され
その香りの描写をノートに書き留めるのが
日課だった彼には、一つの匂いが、ある
特定の像や観念と結びついているのです。

 

「香りにルールはなく、その人の持つ
雰囲気、体温によっても変化していく。
香りはジェンダーレスであり、全てが
ユニセックスと考えることもできる」
          (「WWD」)

 

「香料を調合する以上の技を
習得しないと調香師にはなれない」

 

という父の言葉を心に刻み、技を磨いた
キャヴァリエは世界3大調香師の一人
「香りのマエストロ」と称されています。

 

 

 

調香師   クエンティン・ビスク
(写真/「VICTORINOX」)

 

クエンティン・ビスク


自分と香りしか存在しない

洞窟のような暮らしを経て……

 

劇団の運営者を経て、全てを捨てて
ジボダン調香学校へ入学し、2011年に
ジボダン社に入ったクエンティン・ビスク。

 

クロエ、イヴ・サンローラン、ミュグレー、
ミッソーニの香水を手がけて一躍有名に
なりました。

 

新作「クロエ  アブソリュ  ドゥ  パルファム」
が今年2月に発売されています。

 

彼はたくさんの香りを覚えるために
6か月間、孤独に過ごしたといいます。

 

 

 

 

「それぞれの香りを心に浮かぶイメージや
ストーリー、感覚と結びつけました。
例えば、雲の滴る緑を思い起こさせる香り、
祖母の家の庭とつながる香り、といった
具合です」(「VICTORINOX」)

 

自分と香りしか存在しない、そんな洞窟
に住んでいるかのような日々を送りなが
ら学んだクエンティン・ビスクは、今
その才能を思う存分花開かせています。

 

 

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