「口中香」人間だけがもつ嗅覚の2つ目のルート 

「あぷりのお茶会 赤坂・麻布・六本木」へようこそ!

 

 

 

2つある「においの通り道」

私たち人間が、においをどのように
認識しているのかについて、ブログ
でお話をしてきました。

 

鼻から入ったにおいが嗅上皮へ行き
におい分子受容体が電気信号として
脳の嗅球に伝達することで認識する
という一連の仕組みです。

 

ところが私たち人間は、他の動物が
もつことのない、上記以外のにおい
を感じるルートがあります。

 

 

 

 

あなたがイチゴを食べようとすると
まず、なんともいえないイチゴの甘ずっぱ
いかおりが鼻から入ってきますね。

 

そしてイチゴを口に含み、イチゴが
舌からノドを通過する時に、実はもう
一度、においが鼻に戻ってくるのです。

 

(先程の図と、顔の向きが逆ですが)

右側の鼻からにおいが入り

イチゴがノドを通過する際に
左側の方で立ち上ってくる香り

のことです。

 

 

 

 

これを「レトロネーザル(口腔香気)
といい、口中香・呼気に伴う風味の感覚
で「戻り香」「あと香」とも呼ばれます。

 

一方、右側の方の一般的な嗅感覚・吸気
にともなう感覚の方は「オルソネーザル
(鼻腔香気)」、または「たち香」と
いいます。

 

 

口の中からのにおい   鼻からのにおい
____________________

レトロネーザル    オルソネーザル
  口腔香気       鼻腔香気
 あと香        たち香
* 戻り香
 口中香

 

 

 

 

 

人間にしかない理由

この2つ目のにおいルートがある理由
は、人間の体の構造からきたものです。

 

人間は、
「肺への気道」と「胃への食道」
がノドで交差しています。

 

そのため、食道に入っていく食物のにおい
が、ノドから鼻へ抜けていく空気の通りに
より、においを感じることができるのです。

 

 

(イラスト/「エルメッド」)

 

 

哺乳類は「肺から鼻」「胃から口」の管が
互いに拮抗しない構造になっていて、人間の
ように「肺から口」へのルートはありません。

 

ヒトの食道は、呼吸をしている時には閉じて
いますが、食事の際は咽頭が引き上げられて
気管と食道の間が開き、飲食物が食道を通過
しやすくします。

 

飲食物通過の際は、気道の入り口をフタ
(咽頭蓋)でふさぎ、飲食物が気管に入
るのをふせいでいるという、信じられ
ないほどの精巧なつくりになっています。

 

この複雑な構造は、人間が「うめき声」
から「言葉を話す声」を得るという独特
な進化をしたためと考えられています。

 

 

 

 

 

美味しさを感じるのは「レトロネーザル・口中香」

また、同じチョコレートであっても
鼻から嗅ぐ「オルソネーザル
(鼻腔香気)たち香」と、

 

のどごしから嗅ぐ「レトロネーザル
(口腔香気)あと香・口中香」では
脳の反応部位が異なります。

 

おいしいと感じているのは
「レトロネーザル(口腔香気)あと香
・口中香」の方だということです。

 

 

 

 

 

味と思っているもの=「味」+「口中香」

鼻をつまんで食物を食べると
「レトロネーザル(口腔香気)あと香」
がないためにおいしく感じません。
もちろん、舌での味はしていても。

 

鼻をつまんだ時に感じるもの
       - – – – – – 「味」

 

つまんだ鼻をはなした時に感じるもの
       - – – – -「口中香」

 

私たちが一般に「味」と思っているもの
は実は、舌での「味」と「口中香」
の両方を合わせたものなのです。

 

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嗅覚障害の原因 

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嗅覚障害が起こる原因

人間がにおいを感じるのは、
におい分子が鼻から入り、鼻腔最上部
の嗅上皮「嗅粘膜」へ到達し、

 

「嗅細胞」の先端にある繊毛、さらに
先のにおい分子受容体が捉えて電気信号
として脳の嗅球へ伝えることにより
においを認識します。

 

この仕組みのどこかの部分に支障が
起きた場合に嗅覚障害が起こります。

 

 

                 B, 嗅上皮から嗅球への嗅覚神経回路図
1 虹ニューロン
2 糸球体
3 篩板(しばん)
4 嗅神経細胞
5 嗅繊毛
6 基底細胞
7 支持細胞
8 粘膜
9 におい分子
(イラスト/「化学工学会」)

 

 

どこに支障があって嗅覚障害が起きたか
を以下の5つに分類して説明します。

 

 

 

1「呼吸性嗅覚障害」

(においがセンサー「嗅細胞」に
到達しないために起こる障害)
アレルギー性鼻炎などによる鼻づまりや
副鼻腔炎に伴うポリープがにおい分子の
通り道を塞ぐことが原因で起きたり、

 

鼻中隔と呼ばれる鼻の中を左右に仕切る
壁が曲がっている、鼻中隔湾曲が原因の
場合もあります。

 

これらがなおれば嗅覚はすぐ回復します。

 

 

 

 

 

2「末梢神経性嗅覚障害」

(嗅細胞が弱ったり壊れたりして
いることによる障害)
骨折や脳震盪等の頭部外傷に
よって嗅神経が切れたり、

 

嗅細胞が風邪のウイルスの
感染により破壊されたり、

 

薬の服用により血液中の亜鉛が
不足して嗅細胞に影響を与えたり、

 

抗ガン剤や、ガンの放射線療法
によっても起こります。

 

ダメージの程度により、におい感覚が
回復することもありますが、残念ながら
そのまま障害が残ることもあります。

 

 

 

 

 

3「混合性」

「呼吸性嗅覚障害」と
「末梢神経性嗅覚障害」が
同時に起こった場合です。

 

 

 

4「中枢性嗅覚障害」

(脳の障害による障害)

 

嗅細胞と嗅球の間が、何らかの原因で
断絶されるために、においを感じられ
なくなる嗅覚障害です。

 

頭部外傷や、脳腫瘍、脳出血、脳梗塞、
パーキンソン病やアルツハイマー型
認知症などの、脳神経に変化が起こる
病気が原因で起こります。

 

現時点では、有効な治療法は
見つかっていないようです。

 

アルツハイマー型認知症など、脳の機能
低下を起こす病気のごく初期に、嗅覚
障害が出現することが知られています。
認知症を早期発見する検査として応用
する研究が行われているそうです。

 

 

 

5 生来のもの

また、ごくわずかではありますが
生まれつき嗅覚がない人もいます。

 

 

 

 

 

嗅覚障害の5大原因疾患

_______________

慢性副鼻腔炎     約 34%
_______________

風邪のウイルス    約 20%
_______________

頭部外傷後      約  6%
_______________

アレルギー性鼻炎   約  6%
_______________

薬剤性        約  2%
___________________________________

(統計により数字がかなり異なります
一応の参考として御覧ください)

 

 

 

 

 

アレルギー性鼻炎が増加

アレルギー性鼻炎患者の
54〜67%が、嗅覚低下を自覚
しているということです。

 

現在、アレルギー性鼻炎は
嗅覚障害の原因疾患の4位ですが
今後上昇しそうな勢いだといいます。

 

「通年性アレルギー性鼻炎」と
「スギ花粉症」の1998年と2008年
の数を見てみますと、

 

通年性アレルギー性鼻炎
      18%    →  23.4%

スギ花粉症
      16.2% →  26.5%

 

と共に増加傾向がみてとれます。

 

 

 

 

 

受診の目安は?

コーヒーやお茶の味が変わったと思ったり、
お味噌汁がまずく感じられるという味覚の
変化が1か月以上続いたら、受診をした方
がいいということです。

 

たしかに嗅覚障害・においの問題は、
視覚や聴覚に比べる優先順位が低く
見過ごされがちかもしれません。

 

しかし食事が美味しくなくなるなど、生活
の質が著しく低下するのみならず、ガス漏れ
等、危険を感知するためにも嗅覚は重要です。

 

また、なかには嗅覚障害が仕事上で
大きな問題となる業種もあります。

 

調理師や、ワインテイスター、消防士、
看護師、化粧品販売などは、職業を続けて
いくにはなんらかの特別な措置が必要です。

 

それらの業種についていて嗅覚障害に
なった患者さんの5%の人が、仕事を
辞めざるを得なかったということです。

 

 

 

 

また、嗅覚障害の原因で示したような
特別な事故や病気ではなくても男性で
60代、女性は70代から、加齢とともに
嗅覚は鈍くなる傾向があります。

 

感冒後嗅覚障害の発症には性差が
あって、なぜか40歳代以降の女性が
多いのですがその原因は不明だそう。

 

欧米と異なり日本ではまだ、嗅覚障害の
大規模な疫学調査は行われていません。
嗅覚障害に関しては、原因、治療法等
まだまだ分からないことが多いようです

 

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