柿右衛門の「本物」と「ニセモノ」 「本物」「ニセモノ」20

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15代・柿右衛門「杜鵑草文(ほととぎすもん)皿」
こちらは本物です

 

 

柿右衛門のニセモノ

日本の焼物の中で高い評価を受けている柿右衛門。
有名な作品の宿命であるとはいえ
柿右衛門にもやはり贋作が多くあるそうです。
「柿右衛門のサイト」にもこんな注意書きが。

 

「贋作のご注意

 大変残念なことですが、
 このところ、柿右衛門の濁手作品および製品等
 の模倣品」が市場に数多く出回っております。
 ご購入の際は、十分、お気を付けくださいませ。」

 

以前、このブログで、まるで冗談としか思えない
ような「柿右衛門の猫」というニセモノを
ご覧いただいたことがありましたね。

 

このような招き猫風のものや、

 

(写真、上下とも/「偽物古伊万里」)

 

 

やはり同じポーズをしているこちらとか。

 

 

 

まあ、これは如何にもニセモノニセモノ
していますので、逆にあまり問題がない
ともいえますが。

 

 

 

本物とニセモノを同時に展示

しかし、これほどニセモノ然としたものではなく
したり顔のニセモノがたくさんあるようです。

 

著名な作家や窯の作品に似せた類似品の横行に
頭を悩ませる焼物の里、佐賀県で消費者に注意を
うながすための展示会が行われたそうです。
*     (2008年2月18日「朝日新聞」)

 

 

右の徳利だけが本物(写真/「asahi.com」)

 

 

佐賀県天神にある公共施設アバンセで
行われた「偽ブラント品・海賊版撲滅展」。
14代・柿右衛門の徳利と猪口のセットの「本物」
と「ニセモノ」を並べて展示したそうです。

 

同じ絵柄の3つの徳利と猪口がありますが
一番右のものが本物で、左と真ん中の徳利は
手書きではなく印刷で絵付けがされたものだとか。

 

写真ではよくわかりませんが。
色が何となくくすんで見えることに加え
全体に肉厚なのが特徴ということです。

 

 

13代・柿右衛門「錦梅鳥文香爐」
こちらは「濁手」でかつ本物です

 

 

 

「濁手」であるか否かは真贋とは別

「柿右衛門」といえば「濁手」ということが
有名なため、濁手でないものはニセモノという
方がいらっしゃいますが、これは間違いです。

 

全体数から見ると濁手でないものの方が多いので
濁手でないからといってニセモノとはいえません。

 

また柿右衛門の初期は、中国景徳鎮のものを
参考にしたため、中国風の模様も多いようですが
だからといって「中国風の絵でないと柿右衛門
ではない」というのも、もちろん間違いです。

 

 

 

サイン

手がかりの一つとして裏に書かれたサインがあります。
柿右衛門のサインは12代が途中から使い始めたもので
それ以前は「福」と書かれていたものが多いということ。

 

 

12代・柿右衛門のサインはこちら。

12代のサイン(写真/サインは3つとも
「ともさんの焼き物・骨董紀行」)

 

 

13代の柿右衛門はといいますと、

13代・柿右衛門のサイン

 

 

そして14代・柿右衛門。

14代・柿右衛門のサイン

 

 

初めて見るとちょっと似ていて
わかりにくいですが、よ〜く見ると
違いがわかってくるような気も……。

 

 

 

角鉢の角の作りが甘い

また、八角鉢などの角の部分がピシッと
しておらず、にぶくぼわ〜っとしています。

 

上の写真がニセモノで
下が本物です。

 

 

上がニセモノ、下が本物(写真/「偽物物古伊万里」)

 

 

 

釉薬がシワ状になっている

写真のように釉薬がボコボコとして
いて、滑らかでないものもニセモノ。

 

 

(写真/「偽物古伊万里」)

 

 

 

柿右衛門人形

冒頭にニセモノの「柿右衛門の猫」
を挙げましたが、柿右衛門には「人形」
という人の姿の作品もあります。

 

こちらの4つの柿右衛門人形のうち
1つだけが本物ですがおわかかりでしょうか?

 

 

この中で1つだけが本物の柿右衛門人形
(写真は4枚とも/「偽物古伊万里」)

 

 

①は、こういう方っていますよねと思わ
せる顔立ちで、巧拙とは別に何となく
リアリティを感じますが、答えは「③」番です。

 

お人形は意外にわかりやすいかもしれません。
難しい専門的な知識がなくても、美しいか否かで
本物とニセモノがすぐにわかりますからね。

 

私のような素人はつい顔を見てしまいますが
柿右衛門人形のすごさは「手の表情」なのだとか。

 

繊細な手の表情は、ニセモノでは絶対に真似が
できず、「偽物古伊万里」のサイトによりますと
「人間の手と孫の手ぐらい違う」ということです。

 

 

15代・酒井田柿右衛門 「濁手 松文 水指」
本物です

 

 

手はあまりよく見えないのですが
確かにお顔は全然違います。
本物の柿右衛門人形だけは、見れば見るほど
美しく上品さが漂っています。

 

柿右衛門人形だけではなく、他のあらゆるもの
の真贋もわかるようになりたいですね。

 

ただ最近はニセモノもかなり進化して
いるということですので、私たちも
目を鍛えなくてはいけないようです。

 

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15代・酒井田柿右衛門

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15代・酒井田柿右衛門

かなり前のことになりますが私は佐賀県の
柿右衛門窯を訪れたことがあります。
その時はまだ先代の14代の柿右衛門さんの時でした。

 

14代は、2013年6月にお亡くなりになり
1968年生まれの酒井田浩さんが45歳という
若さで2014年2月4日に、15代を襲名。

 

生まれた日には職人さんたちから「15代」と
呼ばれていたという浩さんは、代々そうであるように
襲名とともに本名も柿右衛門に変更しています。

 

 

 

酒井田柿右衛門窯(写真/「プレミスト」)

 

 

 

家族揃って食事をするのはお正月くらい

生まれた日から「15代」と呼ばれていた浩さん、
さぞや父・14代の厳しい教育の中で子ども時代を
過ごされたのかと思いきや、何と父親と
話をすることさえあまりなかったのだとか。

 

御両親は浩さんに、家を継ぐようにと言わない
ばかりか、父親はほとんど家にいなかったので
顔をあわせることもなく、家族が揃って
食事をするのはお正月くらいだったそうです。

 

好きな時に家に帰って食事をし、またどこかへ
行ってしまうという小説に出てくるような不思議な方。

 

ですがもっと不思議だと思うことは、それが
「普通」だと浩さんが思っていらしたことです。
考えてみればあたりまえではありますが。

 

 

「色絵花鳥文皿」柿右衛門様式

 

 

 

椎の実を拾い、魚を捕る陸上少年

浩さんは、放課後は山で椎の実を拾ったり、
川で魚を捕ったりというように都会育ちのものから
みると理想的な子ども時代を過ごされたようです。

 

また中学、高校時代は陸上で国体に出場
するなど、恵まれた環境のなかで自由な
日々を謳歌していらしたことが伺えます。

 

そんな陸上少年だった浩さんに、将来のことを考える
時がやってきたのは高校2年生の進路相談でした、
父・14代が初めてこんなことを言ったのです。

 

 

15代・柿右衛門のぐい呑
椎の実ではありませんが、どんぐりの模様です

 

 

 

父との初めてのちゃんとした会話

「多摩美術大学で日本画を学んだことが
仕事に役立ったから、お前もどうだ?」と。

 

父・14代のすすめにしたがって
浩さんは多摩美術大学に入学し、初めて
日本画の勉強に取り組むことになります。

 

ちなみにこれが14代・柿右衛門である父との
初めてのちゃんとした会話」だったといいます。
スケールが違うといいますか……絶句。

 

 

 

「濁手 松文 水指」15代・柿右衛門
径25.4cm×高18.7cm(写真/「柿右衛門」)

 

 

 

有田での修行

大学で初めて日本画を学んだ浩さんは
絵を描く面白さにのめり込んでいきますが
画家になろうとは思わなかったといいます。

 

その後、大学を中退して25歳も過ぎた頃、
「そろそろ」という空気の中で、浩さんは東京を
から有田へ戻り職人の仕事の修行に入りました。

 

ろくろを4年間回して、絵付けを1年間しつつ
スケッチの練習、窯の仕事と覚えていきます。
そして、いよいよデザインの勉強を始める時がきました。

 

 

 

 

 

14代の名で世に出る作品

描いたデザインを見せると父・14代から出る言葉は
「絵が小さい」「情けない」という文句ばかり。
しかし浩さんは決して言い争うことはありませんでした。

 

なぜなら、これは14代の名前で世の中に
出ていくやきもののデザインだったからです。
それについて浩さんはこのようにおっしゃっています。

 

「自己表現を志して画家や陶芸家作家
になる人とは違うでしょう。
彼らは『つくるのが好き』『人に見せたい』
という気持ちから始まっていますが、
私は家の仕事を継ぐために始めたのですから」
 (「PREMIST SALON  ブレミストサロン」)

 

 

 

 

 

大きな幹の一枝

初代の柿右衛門は天才的な陶工
だったと思うという14代と15代。
14代が柿右衛門を襲名した時に人から
「先代に負けないように」と言われてこう答えました。

 

「各代の当主は、柿右衛門という
大きな幹から伸びている枝です。
枝が伸び、葉が茂ることで、幹が太る。
幹が残れば無駄にはならない。
当主が頑張った結果として、
幹が大きくなればそれでいいんです」

 

15代は、この話を聞いて少し気が楽になったといいます。
大きな幹の一枝になることが「継ぐ人」であること。

 

 

「どんぐり(オーク)」と「ティーポット
(ローゼンタール〈魔笛〉)

 

 

 

初めての個展は赤を使わない作品

2014年の襲名後に、15代は初めての個展を開きます。
個展で披露したのは、全て赤を使わない作品でした。

 

柿右衛門の「赤」をあえて使わなかったなどと
メディアに書かれたりもしたそうですが、実際の
ところは意図したものではなかったといいます。

 

御自身では、なるべく赤を使おうと思って
いらしたそうですが、結果的に今回の作品は
赤を使っていなかったということでした。

 

 

15代・柿右衛門(写真/「ななつ星」

 

 

 

団栗(どんぐり)文

実は私が今まで以上に柿右衛門に注目するようになった
のは、15代の襲名時に発表された「どんぐり文」から。
柿右衛門のどんぐり!

 

「団栗文は陶芸家として公募展に初めて出品した時の
モチーフで、自分の原点といえる文様なんです。
幼い頃から庭先で慣れ親しんだどんぐりを自分流に
表現したい、という思いがあり、柿右衛門の基調色で
ある赤の世界観は保ちつつ、デザイン化してみました」
                 (「ななつ星」)

 

と15代は語っています。
次の写真はJR九州を走る「ななつ星」という
クルーズトレインで使用されている、15代作の
「濁手団栗文   チョコレートカップ」(2015年)。

 

 

「団栗文  チョコレートカップ」15代・柿右衛門
(写真/「ななつ星」)

 

 

 

このどんぐりの色は赤みを帯びた茶色で
今までの柿右衛門の赤にはなかった新しい赤。

 

1982年に襲名、2001年には「重要無形文化財
『色絵磁器』の保持者」(人間国宝)に
認定された14代は、歴代の中で最も
鮮やかな赤を生み出したといわれています。

 

「赤」にもそれぞれ個性があるよう
ですが、どんぐりフリークの私としては
やはり15代の「赤」に魅かれます。

 

というよりは、その赤の色と
組み合わされている色調
と言った方が正確でしょうか。

 

 

 

「錦梅鳥文香爐」13代・柿右衛門

 

 

 

「柿右衛門様式以上にやりたいものは

見つからないと思います」

御自分の性格を、歴代の中では13代に
近いものを感じるとおっしゃる15代。

 

13代は、おおらかな性格で新しいものを取り入れる気質
にあふれ、大胆な絵付けでも知られた方だそうです。

 

確かに今までの私の柿右衛門のイメージの中
には、どんぐりはありませんでした。

 

 


「杜鵑草文(ほととぎすもん)皿」15代・柿右衛
径40.6cm×高8.7cm(写真/「柿右衛門」)
どんぐりの次に欲しいのがこのお皿!

 

 

「幅を広げるといっても、柿右衛門様式とは
全く違うことをやってみたいとは思いません。
私は柿右衛門様式が大好きなんです」 (「ななつ星」)

 

15代・柿右衛門は、試行錯誤を楽しんだ後に、自分の
作風として一つにまとめていきたいとおっしゃいます。

 

上の写真「杜鵑草文(ほととぎすもん)皿」に
描かれた「ホトトギス」の写真がこちら。

 

ホトトギス
(写真/「Maybe… someday somewhere」)

 

 

ホトトギスも何種類かあり花の色も様々なよう
ですので15代・柿右衛門さんが御覧になったのは
このホトトギスかはわかりませんが。

 

この一見、地味な小さな野草が繊細に上品に、そして
華麗に生まれ変わっていることに改めて驚かされます。

 

しかしそうでありながら、そこに描き出されて
いるのは、まごうことなきホトトギスそのもの。
色と形とバランスで奏でられる美しいハーモニィ。

 

素材としてどんぐりを取り上げる新しさに
色の美しさ、色合わせの巧みさは、まさに
現代に生きる15代・柿右衛門。
これからの作品も本当に楽しみですね。

 

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柿右衛門窯 東京店(赤坂)

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「酒井田柿右衛門窯  東京店」(赤坂)

前々回(「柿右衛門と柿右衛門様式」)と
前回(「柿右衛門の濁手」)と酒井田
柿右衛門のお話でしたが、その柿右衛門
の直営店が赤坂にあります。

 

柿右衛門窯はもちろん佐賀県にある
のですが、直営店は大阪と東京にあり
その東京店が赤坂の店舗です。

 

(「柿右衛門窯 町営店
 107-0052  東京都港区赤坂6丁目 19-44
  03-3586-3841
 営業時間 平日 9:30~18:00
      土曜日9:30~17:00
      日、祭日はお休み)

 

 

左下の緑色の部分が「東京ミッドタウン」
入り口と反対側の「M」のあたりが「柿右衛門窯  東京店」

 

 

 

「檜坂」沿いにあるお店

場所は、東京ミッドタウンの正面
ではなく反対側の、お庭や港区立
檜町公園がある静かな方にあります。

 

上の地図で右上に見える緑色の塊が
赤坂サカスで、左下が「東京ミッドタウン」
ですが、その左に「M」と書いてあるあたり
が「柿右衛門窯  東京店」のある場所。

 

M」から東京ミッドタウン
を見るとこんな風です。

 

 

聳えている建物物は東京ミッドタウンのタワー

 

 

石垣の上は檜町公園で、その先が東京ミットタウン。
石垣があるこの道は「檜坂」と呼ばれる坂ですが
石垣と檜坂を一緒に撮った写真がこちら。

 

 

石垣のある道は「檜坂」です

 

 

 

1階か2階か?

写真の左側に「檜坂」の標識が見えますね。
この標識を入れて、石垣側から反対の方を撮ると
こんな感じで、こちらが柿右衛門窯東京店になります。

 

 

 

檜町公園と檜坂に面している「柿右衛門窯  東京店」

 

 

 

マンションの1階というか2階というべきなのか
ちょっと迷うところではありますが、おそらく
「柿右衛門窯  東京店」は1階なのだと思います。

 

何といっても坂の多い赤坂のことですので、写真の
手前と向こう側ではかなり高低差がありますからね。

 

 

7月10日:追記

 柿右衛門東京店は、1階ではなく2階だそうです。
 この記事を書いた7月1日のグーグルの表示では番地
 のみでマンション名と所在階数の表示はなかったの
 ですが、今日見たら「2階」となっていました!
 まさかこのブログを見て建物名と所在階数を加え
 てくれたとは思えないのですが、何とも不思議です。
 グーグルのみではなく「柿右衛門」のサイトでも同様
 にマンション名の記載がなかったので、オフィスビル
 ではなくほとんどが住居用の建物ですので、あえて
 記載しないのかと思い、私もマンション名を書かな
 かったのですが……。
 ちなみに「柿右衛門」のサイトの方は、現在でも
 建物名の記載はありません。)

 

 

 

 

まあそれは置いておいて、東京ミッドタウンの
正面玄関の方は、車や人通りの多い外苑東通りで
賑やかな六本木すが、反対側のこちらは
檜町公園の真ん前でもあり緑の多い静かな場所です。

 

檜町公園では春には桜、そのあとには藤の花が続きます。
柿右衛門の濁手に描かれた花々たちといずれも劣らぬ
美の競演がこの界隈では繰り広げられているようです。

 

窓の形もアーチ状でモダンな感じがして、最初は
日本のやきもののお店風でないようにも思いました。

 

ですが考えてみれば、柿右衛門はヨーロッパ
の王侯貴族に愛された焼物でしたものね。

 

 

「色絵花鳥文皿」柿右衛門様式

 

 

 

「柿右衛門窯」(佐賀県)

柿右衛門窯東京店はうちから数分で行くことができ、前は
よく通りますが、実はお邪魔をしたことはありません。
佐賀県にある柿右衛門窯には行ったことがあるのですが。

 

(「柿右衛門窯
 佐賀県西松浦郡有田町南山丁352
 Tel. 0955-43-2267)

 

以前、お話しした中里太郎衛門窯に行った時に一緒に
参りましたが、先ず最初に訪れたのが柿右衛門窯でした。

 

 

柿右衛門窯(写真/「PREMIST SALON  プレミストサロン」)

 

 

遠い佐賀県の柿右衛門窯には行ったことがあるのに
赤坂にある近くの柿右衛門窯  東京店に未入店
というのもおかしな話ですが、実は佐賀県の
柿右衛門窯にはお供で行ったのです。

 

連れて行ってくださった方は、14代・柿右衛門の
香炉をその時にお求めになり、旅行後、香炉は
その方の家の和室の床の間に飾られていました。

 

本当は赤坂の柿右衛門窯  東京店にもお邪魔したい
のですが、7桁の香炉はもとよりそれ以外であっても
私にはちょっと敷居が高く躊躇しているのが現状です。

 

 

 

 

白いアーチ状の窓から、飾られている壺か花入と
思われる作品がうっすらと見えることがあります。
是非、一度訪れてあのアーチの中に消えてみたいなぁ。

 

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